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突然の訪問者に、クラス全員の視線が集まるが、当の本人はまったく臆することなく、ゆったりと教室の中心まで歩いてくる。


まるで澱んだ水たまりに、勢いよく清水を流し込んだようだ。


彼を中心として空気が明るいものに変わっていく。



「よー、春太。どうした?」



訪問者は、ハルタというらしい。


いじめっ子4人組の一人、西脇勇樹は彼と知り合いらしく、真っ先に声をかけていた。



「ん? ああ、次古典なんだけど、教科書忘れたから勇樹に借りに来た」



自分へ向けられていた視線が、すべて彼へ吸い取られてから、綾斗はそっと顔を上げた。



「うちも4時間目古典なんだけど」


「おっけー終わったらすぐに返しに来る」



言外に断る西脇を華麗にスルーし、早く出せと言わんばかりに掌を向けている。


その静かな押しの強さに、西脇は早々に諦めたようだ。

しぶしぶといった空気は出しつつも、文句を垂れることなく、自席に戻って教科書を取り出している。


その傍らに立ったハルタは、長身の西脇をさらに上回る、スラリとした体躯を誇っていた。



綾斗の私怨を除いて、客観的な感想だけ述べるとするなら、西脇はかなり恵まれた容姿を持っている。


彫が深い硬派なタイプのイケメンで、背が高くガッチリした体型はバランスがいい。



また、綾斗に対するゲイいじりの先頭を切る加藤が、いじめというコンテンツを提供する演者だとするなら、西脇はそれの脚本を渡す監督のような立ち位置だった。


加藤のパフォーマンスを楽しみ、時にはもっと自分にとって面白くなるように指示を出す。


要するに、綾斗を執拗に攻撃してくるこの一軍においても、西脇は他を従える最上位の存在と言えよう。



しかし、今。


誰もが強者と認める輝きを放つ西脇に、陰がさしている。


いや、陰がさすというのは語弊があるな。


太陽の光の下で高輝度のLEDを灯したところで、明るさなんてわからないのと同じだ。


西脇が学年一のイケメンなら、ハルタと呼ばれた訪問者は、もはや美術作品の領域だった。



西脇を超える長身は、服の上から見てもわかる、ほどよい筋肉がついている。


細く長い首は、一般人と並べば公開処刑が起きそうな小さい頭を支えている。


高く筋は通っているものの、存在感のない鼻。


短い人中にぽってりしていて柔らかそうな唇。


綺麗な頤のライン。



少し離れた場所にいる綾斗から見ても、その造形は彫刻のような美しさであった。




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