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「で、お前ネコなんだろ?」
加藤は一頻り笑い終わると、同じ質問を繰り返した。
正直、綾斗は自分と猫に何の関係があるのかわかっていない。
とはいえ、どうせ否定しても肯定しても、都合よく捻じ曲げられてゲイいじりのネタにされるだけなので、今回は笑って誤魔化すことにした。
「え、へへへ……」
綾斗が曖昧な笑みを返すと、主体的いじめっ子4人組だけでなく、聞き耳を立ててたクラスメイトも含めて、クラス全体がドッと笑い声に包まれた。
「やばー!こいつネコだって!抱かれたい方なんだ!」
「キモすぎだろっ!」
「うわ、見て!俺鳥肌たってきた」
4人を筆頭に、悪意を持って綾斗を貶める言葉や、便乗して笑う声が方々から飛んでくる。
は?抱かれたい方ってなに?
性的な役割のこと?
ようやく質問の意図を理解して、不快感に鳥肌が立った綾斗は、ぶるっと小さく震えた。
まじで信じられない。キモいのそっちじゃん。
なんでこいつらに、抱くとか抱かれるとか性的なことを、好き勝手想像されないといけないの?
悪意を持つ多くの視線にさらされて、緊張や屈辱、怒りに心拍数が上がってくる。
激しい動悸に押し出された血液の濁流が、どんどん体を上ってきて、顔に熱がたまってきた。
マスクで顔は隠れるとはいえ、耳や首の赤さは隠しようがない。
「耳赤っ!ガチのやつじゃん!」
加藤のからかう言葉に、またクラス全体に笑いが起こった。
綾斗は赤い顔を必死に俯けて、自身の視界からクラスメイト全員を排除した。
戦うすべのない綾斗にとっては、外部をシャットアウトすることが、唯一、この辛い時間を耐え抜く手段だ。
「わー1組めっちゃ盛り上がってんね。なんでみんな笑ってんの?俺にも教えて?」
悪意に満ちた教室に、澄んだ声が響いたのは、休み時間も残すところ3分を切った頃だった。




