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無駄に高いコミュニケーション能力と発信力を持つこの陽キャによって、その日の放課後までには、綾斗はゲイだとクラス中が知ることとなった。
男子校に進学を決めた時点で、青い春を期待してはいなかったが、入学初日から学生生活が灰色の冬を超えて漆黒のツンドラになるとは思っていなかった。
それなりに身長があるからか、暴力はまだ受けていないが、時間の問題なのだろうか。
入学式で話しかけてきた陽キャ、加藤を筆頭に、毎日のように冗談の皮をかぶった嫌がらせを受けている。
初めはゲイではないと否定していたけれど、だれも信じてはくれない。
というか、綾斗がゲイかどうかは実際のところどうでもよくて、単に都合よく虐げられる対象が欲しかったのだろう。
それに、加藤と目を合わせた瞬間赤面したという事実がある以上、当事者である綾斗がいくら否定したところで、言い訳と思われて終了だ。
綾斗は、状況の改善を早々に諦めて、これ以上悪化することだけは防ごうと、いじめっ子たちを刺激しないように努めることにした。
まあ、仕方ないと思っている。
人類の多様性を理解できない野蛮な猿には、言葉が通じないものなのだ。
ならば、こちらが譲歩してあげるしかない。
自分を守るためならいくらでも迎合するけれど、その内側では常に牙を研いでいる。
どれだけ格好悪くなったとしても、心の中まで屈したくはない。
真正面から噛みつく勇気のないダサい綾斗であっても、己を奮い立たせるプライドだけは強く握りしめていた。




