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幼少期から人見知りが激しいタイプだった。
誰かと対面するときは、いつも母のズボンを握って後ろに隠れていたらしい。
多くの人間は、幼稚園や小学校で集団生活を強制されるうちに、人見知りも小康状態になるのだろう。
しかし、綾斗に限って言えば、学年が上がるにつれ、他人に対する苦手意識が強まっていくばかりであった。
人前で発表をするときに、急激に心拍数が上がり、背中にじんわりと脂汗がにじんできて、顔が真っ赤になってしまうようになったのは、小学二年生のころだ。
一度嫌な思いをしてしまうと、人前に立つことへの苦手意識が、さらに拡張されていく。
そのうち、グループ活動で発言することもだめになって、今では気を許した人以外と一対一で話すことすら緊張するようになった。
緊張しないように意識すれば意識するほど、逆に緊張が強まり、顔がどんどん赤くなっていくのだ。
中学まではまだよかった。
ほとんどが小学校からの知り合いで、木佐綾斗という人間はすぐに赤くなるという共通認識があったから。
集団の一部として一応は受け入れられていたし、そういった環境が綾斗の緊張を少しは緩和してくれていた。
しかし、高校受験を経て、新たな環境に飛び込めば、そうはいかないこともわかっていた。
ずっとぬるま湯のような環境に浸かっているという自覚があったからこそ、他人に干渉せず、多少変わった特性を持つ人間がいても気にしない雑さがある男社会でなければ、やっていけないと思った。
高校に入学してからの半年間で綾斗が気づいたのは、確かに男は絆を重んじるけれど、その絆は他者を排斥することによって生まれるということだった。
序列やコミュニティへの帰属意識が強く、序列下位の者や異分子は容赦なく虐げられる。
加えて、ホモソーシャル特有の『男らしさ』の共有は、赤面症とすこぶる相性が悪かった。




