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「人と話すだけで緊張して心臓バクバクして、自分の意志とは無関係に顔が赤くなるの、どんな気持ちかわかる?
どれだけ恥ずかしくても止められないし、赤くなりたくない、笑われたくないと思えば思うほど、緊張しやすくなって悪化していくんだよ。
こんな学校の隅っこでしか安心してお昼を過ごせない惨めな学生生活送ってるのを、わざわざ追いかけてきてまで笑いに来たの?
言っておくけど、俺はあんたと違ってゲイじゃないし、あんたの顔がどうであろうと死ぬほど興味ないから。残念だったね」
現代文の音読以外でこんな長文を口にしたのはいつぶりだろう。
いつもなら、どれだけ怒りを感じても、人に話すということ自体に緊張して、口を閉ざしてしまうのに。
こうして怒りをぶつけることができたのは、猪瀬春太の美しさによるところが大きいのだろう。
近くで見れば見るほど、作り物のように美しい顔貌のおかげで、人間ではなく彫刻に話しかけるような錯覚に陥って、かえって緊張しない。
綾斗の発言を受けた猪瀬春太は、その彫刻のような顔を少し歪ませる。
わずかに眉を寄せ、唇を引き結んだ彼を見て、綾斗は自分の失言に気づいた。




