表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

13

4時間目の生物は、顕微鏡を使うため、生物室で行われた。



昼休みにわざわざ教室へ戻らなくていいように、綾斗は、教材や筆記用具の他にお弁当も持参していた。


今日は早朝から厄介なものを見てしまったが、学校に入ってしまえば、割と良い日だ。


教室内で板書を取るだけの授業より、生徒間の発言機会が増える移動教室は、その分いじめっ子たちの発言も増え、綾斗が揶揄われることが多くなる。


しかし、幸運なことに今日はまだ絡まれていなかった。


漏れ聞こえた話から察するに、西脇に彼女ができた話題で盛り上がっているようだ。


人知れず失恋した人物を知っているせいで、少し微妙な気分になったが。


とはいえ、男子校において貴重な『彼女持ち』になった西脇により、綾斗への興味が薄れたのなら何よりだ。



平和な午前中はあっという間に終わり、お昼を知らせるチャイムが鳴る。


クラスメイトががやがやと廊下へ出ていく中、綾斗は全員が退室するのを待って、最後に生物室を出た。

そのまま教室に向かうクラスメイトからは外れて、教室のある棟とは逆方向へ歩みを進める。



ヨの字型に建てられた校舎は、北側から教室棟、研究棟、芸術棟と名付けられ、各棟の東端を縦断する渡り廊下でつながっている。


生物室などの実験室や、各教科の担当教員が使っている準備室は研究棟。

美術室、音楽室、茶室、文化部の部室があるのが芸術棟である。


ほとんどの生徒が昼休みは教室か、第一体育館の下にある食堂で食事をとるため、研究棟に足を踏み入れる者はいない。


さらに、渡り廊下から一番離れた場所にある階段。

1階と2階を繋ぐ踊り場になんて誰も来ないし、来たとしても無害な陰キャくらいだろう。


まさに無害な陰キャである綾斗は、いじめっ子に絡まれて教室を出られないとき以外、昼休みはここで過ごすことにしていた。


利用者が極端に少ない校舎の隅っこの階段は、少し埃っぽいものの、南向きに窓があって日当たりがいい。



綾斗はいつも通り階段に腰を下ろして、お弁当を広げた。


誰も来ないここなら安心してマスクを取ることができるのもいい。


男子高校生としては少し物足りない量のお弁当をすぐに食べ終え、マスクを外したまま日向ぼっこに興じる。



ここで過ごす昼休みが、暗黒の学生生活の中で、唯一癒される時間と言えるだろう。


暇つぶしにスマホを触ってのんびりしていると、階下からこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。


今までこの場所で人に会ったことはなく、完全に油断していた綾斗は、無防備に顔を晒したまま、弁当や教科書等を階段に置いていた。


そのせいで、すぐに立ち去ることができず、なんとかマスクだけ装着したところで、相手が踊り場から顔を出した。





「探したよ。木佐くん」



にっこりと笑みを向けてきたのは、猪瀬春太だった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ