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つまり、なんだ。
この完璧超人は、西脇へ恋をしており、彼女ができたとの報告に返信ができずにいる、と?
連休明け初日の、それもまだ登校すらできていない朝っぱらから、情報量多くないか?
猪瀬春太のスマホから目を逸らせずに固まる綾斗と、告白のメッセージを打ち込んだまま送信ボタンを押せない猪瀬春太。
短い膠着状態を経て、先にアクションを起こしたのは猪瀬春太の方だった。
右手の親指をキーボードの右上へ移動させた猪瀬春太は、少し躊躇いを見せた後、勢いよくバックスペースボタンに触れる。
まるで逆再生のように、短い愛のメッセージはあっけなく消えてしまった。
改めてメッセージを入力することはせず、『おめでとう』のスタンプだけを送る。
その勢いのままスマホの電源を落とした猪瀬春太は、ひどく脱力したように背もたれにもたれかかった。
スラリと細く長い指の、大きくて綺麗な手が、愁いを帯びた目元を覆い隠す。
そのまま撫で下ろして顔を拭った猪瀬春太は、目を閉じたまま天を仰いだ。
彼の後頭部がこつんと車窓にあたる様さえ、映画のワンシーンのようだ。
その時、ガタンと電車が揺れて、綾斗の体は少しふらついた。
バランスを取るために足を踏みかえると、座席に腰掛ける猪瀬春太の膝に足がぶつかってしまう。
反射的に目を開けた猪瀬春太が見たのは、自身を凝視する綾斗の不審な姿だっただろう。
驚きに目を見開くお互いの視線が交わり、再び綾斗の時は止まる。
混乱極まる綾斗には、向けられた視線がトリガーとなった。




