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プロローグ
「ティアーッッ!!」
ああ、大勢の人間の中から、君の声が聞こえる。
こんな喧噪、すごくうるさいのにね。普通なら掻き消されて聞こえないだろう。
そんな中で君の声が聞こえるのは、
(……連れて、逃げろって言ったのになあ)
説得の理由、何も言わなかったんだなあ。この国から立ち去って欲しいと言ったのに、失敗したのか。――カラスさん。
これと決めたら、頑としてそんな事を聞くはずもない頑固な君だと知ってるけれど。
――けれどね、ユキシロ。
どうか止めないで。
これは僕が僕の身ごとこうすると決めた事なんだ。そのためにすべてを置いていく、全ては夢のように消え去っていく。
踏み続けられてきた僕の一族を、踏み続けてきたこの国ごと巻き込んで消していく。
それが何のために生きているのか分からなかった、僕の使い方なのだから。