記録9 黒い影
9話目です。最近できるだけ投稿頻度を増やしていますが、これが限界です。本当に申し訳ございません。中の人は現在、英語の勉強に大苦戦しております。単語が覚えられないんです…。
それはともかく、これからも頑張って投稿頻度を上げるつもりではありますが、それでもやはり遅いことが多いかもです。気長に待っていただけると幸いです。
では本編、スタートです。
鉱石を採取して戻ってきた3人は今回あったことについて青桜に全て話した。狭い個室には重い空気が漂っていた。
「…黒い鎧の戦士…か。山を吹き飛ばすほどの破壊力を持っているなら、並大抵の者ではないのは間違いないだろう」
いつも以上に真剣な顔をして眉を顰める。ユスティティアはまだあの感覚が完全に消えてないからか、声がわずかに震えていた。
「…僕もそう思います。何より、あの威圧感…、『七つの大罪』の可能性があります」
ノースはそっと背中に手を当てた。
「『七つの大罪』…、ということは、神話でも登場するルシファーのような悪魔や堕天使たちがいるのですか?」
「その通りだ。奴らは俺たちのような団長ですら太刀打ちできない可能性がある強者だ。元々、7芒星の英傑団もその対抗手段として結成されたものだが、あの大戦の日から誰一人として奴らを倒した者はいないらしい」
「とにかく、このことは『セラフィム』の彼女にも伝えるべきだろう。天界に侵入者が現れた時点でかなり深刻だ」
「ああ、そのこと何だが…、もうここにいるんだ」
そうして個室の扉を開け、濃い青色の長髪の女性が入ってきた。右手に黄金の槍を持ち、肌の露出の多い金の装飾の入った戦闘服を身につけ、四肢はもちろん、腹部も丸見えで寒い時が心配になるほどのものだった。
女性は海のように青い目でノースのことを見ていたが、すぐに本題に入った。
「話は聞かせてもらった。私たち『水組』も周辺の調査及び侵入者の追跡を試みている。だが、追跡には情報が足りない。だからお前たちから話せる限りの情報を私に伝えてほしい」
表情一つ変えず淡々と要件を話し、どこからともなくメモ帳とペンを取り出した。ユスティティアたちは話そうにもどう伝えるべきかいまいち分からなかった。
「侵入者の種族は『吸血鬼』。身長は」
「え?ノース、スキャンでもしたの?」
「私は『情報収集』という能力があるので、対象のステータスの数値化、能力の透視が可能です」
「なるほど、それは助かる。全て聞かせてくれるか?」
「了解しました」
するとノースは目から光を放ち、目の前にスクリーンのようなものを写した。
「種族『吸血鬼』、身長は175cm前後、目と思わしき場所から赤い光を放っていました。音声は変声機を使用していたため特定はできませんでした。能力は『破壊者』と呼ばれる力を検出しました。鎧は非常に重く、それだけで40kg以上はあると思われます。また、耐久力だけでなく、耐熱、酸化防止、絶縁性があり、表面にはトリコテセンが塗られていました。所持していた大剣も同じ物質が塗られていました」
女性は一言たりとも聞き漏らすことなく全てメモ帳に書き写した。
「…了解した。このことはなるべく私たちで解決しよう。もし何かあった時は、私が直接連絡する。それまでは、いつも通り任務をこなしてくれ。では、失礼する」
そうして静かに部屋を出て行った。
「…あの方はどのような方なのですか?」
「あの人は『ワルキューレ・サーシェス』。『水組』の総長と最高神直属の近衛隊長を務め、さらに13代目トリトン様でもある最強の戦士だ」
確かに入った瞬間、彼女は強い圧力を感じるオーラを放っていた。殺意こそなかったため恐怖や不吉感はなかったのですが、あの鋭い目で見られただけで少し驚いてしまった。例えるなら、夜の海でしょうか。暗く、どこまでも深い謎。恐ろしくも、どこか美しさを感じてしまう独特な魅力もあった。
…なんとも幻想的な方です。
そうこうしていると、あたりはオレンジ色に染まり、黒い影が長く伸びていた。
「さて、私はこいつの武器を修理する。明日の日の出まで終わらせよう」
「ホントありがとうございます」
「じゃ、私もこんな時間だ。研究所に戻って新薬の開発でもするとしよう」
「また爆破させるなよ?」
「私たちも基地へ帰りましょうか」
そうしてユスティティアたちは解散した。
「遅い!夕飯までに帰って来いと、団員にも言っているにも関わらず、副総長でもあるお前が遅れてどうする!?」
「エレンディル様、本日はいろいろとあったのです」
「あ?」
その後、夕飯を食べながら二人は今日あったことを全てエレンディルと団員たちに伝えた。話を聞くたびに、団員たちはざわついていった。
「…、真っ黒の鎧の戦士…ねぇ…。お前でさえ恐怖を感じるってことは、そいつは相当な手練れだな。戦わなくて正解だ」
「総長、その戦士の正体は一体なんでしょうか?」
「…分からねぇ…。だが、少なくともユスティティアと同等、もしくはそれ以上の実力者ということだけは分かる」
「もし、『七つの大罪』なら俺たちに勝ち目なんてないですよ」
「俺たち、そんな奴に会うかもしれないのか?」
いつも温かい空気で満ちているこの基地も、この瞬間だけは凍てついた空気で満ちていた。
「…俺たち、どうすれば…」
「なに、安心しろ。お前たちにはうちがいるし、なんなら最強のワルキューレさんがいるじゃないか。うちとあの人が生きてさえいれば、そいつもなんとかなるだろ
ほら、もう夜も遅い。明日も早いんだ。さっさと寝た寝た」
エレンディルは手を2回叩き、自室へと向かった。その後、他の団員も不安混じりの表情で各自自室へ向かった。
ノースとユスティティアは特別に二人で一つの部屋を使っているため、寝る時も同じ空間で寝ている。ユスティティアは部屋着の服を着るとノースに充電コードを挿し、ベッドに寝転んだ。
「本日も大変お疲れ様でした」
「ああ、ありがとう。ノースこそ、あの時は助かったよ」
「私は当たり前の事をしたまでです。
…やはりあのことが忘れられないのですか?」
「…うん、そうだよ。ただ怖かった…」
「そいつは悪いことをしたな」
二人は驚き、声がする方を見ると、そこにはあの時現れた黒い鎧の戦士がいた。彼が話すまで二人は彼の存在に全く気づかなかった。
(こいつ…、いつの間に…!)
ノースは真っ先にユスティティアの前に立ち、手を剣に変形させた。
「まぁまぁ落ち着け。俺はお前たちを殺すつもりも殺されるつもりもない。俺はお前たちと話しに来ただけだ」
どうやら戦う意志はないらしい。二度目だからか、あの時の恐怖は感じなかった。
「…なんのことだ?そもそも、あの時といい今回といい、どうやって天界に侵入した?天界には、別世界から異物が入らないよう防護結界が張られている。それをどうやって突破した?」
「それについては話せない。そして、俺が何者かも話せない。もし話してほしければ、俺の仲間になれ。簡単な話だろ?」
「断る」
「お断りします」
「二人揃って同じ意見か…。まぁいい。だが一つだけ言っておこう。お前たちは誤解をしている。その誤解に気づかなければ、この天界どころか、魔界も人間たちのいる宇宙世界も全て無に帰ることになる。そのことを理解してほしい。じゃ、俺は帰るとしよう」
そう言って彼は黒い煙に包まれ姿を消した。
ユスティティアは再びベッドに寝転んだ。
「結局、なんだったのでしょか?」
「分からない。でも、ろくでもないのは確かなはずだよ。…そもそも、どうやってここに入ってきた?それも、全く気配を感じさせないで…」
「私の推測では——」
「いや、これ以上考えるのはやめよう。とにかく疲れた…」
「そうでしたか。では、昨日と同じように朝の5時にアラームを鳴らしますね」
「うん、お願い」
「では、おやすみなさい、ユスティティア様」
ノースは部屋の電気を消すと、もう一つのベッドに横になり、目の照明が消えた。
(…間違いって…何を言っているんだ…?僕たちは、何も間違ってなんかいない…!)
ユスティティアは強く目を閉じた。