記録8 先を急ぐ
8話目です。最近投稿頻度遅くてすみません。私も学生なので、勉強に励まなければならないので、ご理解よろしくお願いします
(まぁ、学校そのものさえなければこんなことにはならないのですが…)
…(咳払い)…とにかく、次回どの辺りでまた出せるか分からないですが、気長に待っていただけると幸いです
それでは本編へどうぞ
ユスティティアとノースは、先ほど言っていた『青桜三日月』という鍛治職人のところへ行くことになった。ユスティティアの武器は所々ひび割れており、何かの拍子にすぐに爆散しそうな状態だった。
ユスティティア自身は、こまめに手入れや掃除をしているため自然と武器の知識が身についたが、さすがのユスティティアもこれは直せないらしい。しかし、彼は『直せない武器や防具は存在しない』と皆から言われるほどの尋常じゃない技術力を持っているらしい。
基地から徒歩5分ほどで目的地に到着した。外見は日本の老舗の雰囲気を放っており、店に大きく貼り出された看板には木彫りで『青桜武器屋』とあった。店の外からでも、たくさんの武器や防具が並べられているのがわかる。誰がなんと言おうと武器屋だ。店に入ると、客が来たことを知らせる木の音が響いたと同時に、少し強面の男性従業員がやって来た。
「いらっしゃいませ、ユスティティア様。本日はどういったご用件で?」
見た目とは裏腹に少し陽気な話し方だった。ユスティティアはその男性と話をした。雑談に紛れてユスティティアとこの店の関係について話しているのを聞く限り、ユスティティアは年に一回のペースでここに来ていて、主に改良や今後のことなどについて話しているらしい。
そうして雑談をし、気が済んだのかユスティティアはようやく本題に入った。壊れた武器のことについて話すと、男性従業員は状況を理解し店の奥の方へと案内した。
地下へと続く階段を降りていくと、大きな部屋で体つきの良い人たちが武器の製造や修繕に取り掛かっていた。熱気が凄まじく、物理的にも精神的にも暑苦しかった。当然、金属が鳴り響いているのでかなり騒がしいが、中にはひっそりとアクセサリーといった小物を作っている人もいた。
多くの人たちがいるが、用があるのは最も奥にいた男性である。その男性は上半身裸で、毛皮のズボンを履いていた。そして手元にある剣をじっくりと研いでいた。
「青桜師匠、ユスティティア様がご来店されました」
男性従業員が呼びかけるが、何事もないかのように手元にある剣を丁寧に研いでいた。その後も男性従業員は何度も呼びかけたり、肩を叩いたりしたが、やはり無反応だった。それも当然だろう。これだけ騒がしくては男性従業員の声も簡単にかき消されてしまうだろう。
ノースはそれを見て手のひらからメガホンを作り出し、それを男性従業員に渡した。
「青桜師匠、ユスティティア様がご来店されました」
メガホンによって大きくされた声はさすがにこの男性にも聞こえたようだ。青桜は後ろを振り向きこちらを見た。だいたい50代半ばあたりだろうか。顔には少しシワが入っており、男前な顔立ちをしていた。
「ああ、ユスティティアか。定期メンテナンスはまだ半年先だぞ」
「いや、実は武器が壊れちゃって…、それで直してもらいたくて来たんです」
そうしてユスティティアは持っていた武器を見せた。青桜はそれを手に取り、じっくり観察した。
「…銃口と弾倉のダメージが大きいな。さてはお前、武器に無茶させたな?」
ユスティティアは的確に原因をつかれ、少し気まずそうな顔をした。
「…はい、そういうことです…」
「前にも言ったはずだ。無茶はお前自身だけでなく、武器にもさせるな…と。お前は相変わらずいろいろと荒いな」
小言を言われてたじたじになっているユスティティア。青菜な塩とまでではないが、そのような姿になっていた。
青桜は少しため息をつき、研いでいた剣を仕上げると、剣を置き倉庫の中を漁った。様々な鉱石があったが、探しているものがないのかしばらくの間ずっと漁っていた。
「…『太陽石』がないな…、悪いが、今は素材がない。だから完全修復は無理だ」
「ええ!?そんな!それだと完全に実力を発揮できないじゃないですか!」
「文句を言うな。お前も知っているだろう。最近の俺たち『7芒星の英傑団』はただでさえ苦しい状況だ。団員は死んでいき、市民の経済を安定させるので手一杯。税金は集めてはいるが、その程度では足りない。だが、文句など言っている暇などない。俺たちが耐えず誰が耐える?お前もこの世界を本気で守りたいと思うなら、もっとしっかりしろ。だいたい、お前が武器を壊さなければこんなことにはならなか——」
その時、爆発音と共に地響きがした。地下にいたが、それでも音が大きく、揺れも凄まじかった。
「…爆発ですね。半径20m圏内で爆発したと思われます」
「…またあいつか…」
青桜は呆れた表情で店の外へ出た。ユスティティアもついて行くと、向かい側にある建物から火が出ていた。周囲にいた白い服を着た天使たちは水をかけて消火をしていた。
「いやー、まさかあの二つを混ぜ合わせたら爆発するとは…、これもどこかで使えそうだね」
そんなことを言いつつも周囲の人たちと水の入ったバケツで消化をする1人の男性。青桜はその人を呼んだ。
「おい、『憂王』。これで何回目だ。いい加減そういう実験をする時はシェルターの中でやってくれ」
少し怒った顔をして近づくと、その男はこちらに気づき、何事もなかったかのようにこちらに小走りで来た。
「これは三日月君、この私に何か用かな?」
「用も何も、貴様、いい加減そういうのはやめてくれ。そのせいで俺の店が吹き飛んだことが何度もあっただろうが」
「まだ3回しかないじゃないか」
「3回も吹き飛ばしているんだよ、ボンクラ鳳凰」
「そう怒るなよ。実際、君の店は吹き飛ばなかったのだから、結果オーライというやつだ」
「全く…、貴様という奴は…」
ユスティティアとノースはその話を隣で静かに聞いていた。
「…ユスティティア様、あの方は何者なのですか?」
「ああ、あの人は『縛憂王って言う『マッド・フェニックス』の団長で、新たな7芒星の英傑団の誕生が期待されている1人なんだ。見た目は人間なんだけど、鳳凰の力を使えるんだよ」
説明している間に話がエスカレートして喧嘩になりかけたため、さすがのユスティティアとノースも仲介に入った。
「…まぁ、今回は私が対価を支払うということで水に流そうじゃないか」
青桜は腕を組み少し不服そうな顔で頷いた。
「…わかった、そういうことにしよう」
「それで、君が求めるものはなんだい?」
青桜は少し悩んだ後、少し悪い笑みを浮かべ、要求の内容を言った。
「…ならば貴様には、『太陽石』を50kg持ってきてくれ」
「ほう、『太陽石』を50kgか…。承知した。3日以内に持ってこよう」
「では、頼むぞ。ちなみに言っておくが、持ってこなかった場合、問答無用でお前の店を潰す」
そうして青桜はゆっくりとその場を立ち去った。憂王は苦笑いしながらその姿を見送ると、すでに消火を終えた施設の中へと入って行った。そしてユスティティアとノースもあとをついていくように同じく施設へと入って行った。
「おや、ユスティティア君。君も何か要件がありそうな顔をしているね」
「はい、実を言うと——」
ユスティティアは武器の修理のことを全て話した。憂王は薬棚を大きめのショルダーバッグに入入れながら聞いていた。
「なるほど、それで同行させてほしいと。確かに君はその武器のおかげで戦力が上がっているからな」
「はい、一刻も早く直したいので。どうかお願いできないでしょうか?」
「もちろんさ!断る訳がないだろう!そうと決まれば今すぐに出発するぞ!」
「え!?今すぐ!?」
「そうだ!善は急げと言うではないか!」
そう言って薬瓶がたくさん入ったショルダーバッグを肩にかけ、颯爽と外へ出た。その姿を見たノースはクスッと笑った。
そうしてやってきたのは、天界の『太陽の間』にある最も標高の高い山岳地帯として知られる『夕陽山』へ向かった。この山は最も標高が高いにも関わらず、山頂に雪が全く積もらない。さらに、この山の頂上には貴重な鉱石が埋まっているが、危険な日龍が居座っているため簡単には採取することはできない。
山を登って数分、山頂はまだまだ先だと言うのに憂王は完全に疲れきっていた。
「相変わらず体力がないですね」
「仕方ないじゃないか…、私は普段は研究室に引き篭もっているから運動なんてしないんだよ…」
さすがにこれでは時間の無駄なので、ノースは体から出した複数本のアームで憂王を持ち上げた。憂王の体は軽々と持ち上げられた。
「…軽いですね。ちゃんと食べてますか?」
「この人、三日三晩飲まず食わずで、さらに寝ないんだよ」
「絶対に体に悪いですよ。死なずとも、いつかは倒れてしまいますよ」
「身長176cm、体重52kg、体脂肪率9%、骨密度64%、慢性的な睡眠不足、極度な栄養不足、特にカルシムとビタミン——」
「言わなくていいから…」
すると、目の前に比較的小柄の赤いドラゴンが数体が立ち塞がった。
「『ファイア・ミニドラゴン』ですね」
「この程度、全員まとめて吹き飛ばす」
『紅炎』
炎の渦がドラゴンを包むと、火柱を上げて燃え上がった。ドラゴンは跡形もなく燃え尽きたが、爆破で吹き飛んだ岩が憂王の頭に直撃した。憂王の頭はなく、首から千切れていた。
「!そんな、私としたことが…!」
「大丈夫だよ、ノース」
「ですが、頭が…!」
ノースが心配する中、骨が折れるような異音が聞こえた。再び憂王の方を見ると、すでに頭の骨格が治っていた。その後、筋肉や皮膚、髪まで再生し完全に元に戻った。
「これが憂王の能力『不死鳥の奇跡』だよ。再生可能な傷は勝手に治って、仮に再生不可能な傷でも、灰になってその灰から蘇る能力だよ」
「はは、丁寧な説明ありがとな。まぁ、実質不死身だ」
「先ほどはすみませんでした」
「いやいや、どうせ再生するし、別にいいよ」
そうしてたくさんのドラゴンを倒しつつ登ること約30分…、ようやく山頂が見えたと同時に大きな赤いドラゴンが見えてきた。気持ちよさそうに大きな翼を広げていた。
「あれが噂の日龍か…。かなり大きいな」
ユスティティアは予備として持っていた剣を構えた。
「あの距離ならこっちに気づかれる前に攻撃を与えられる。武器の性能上、多分一撃じゃ倒せないと思うけど、不意打ちにはなると思う」
そうして日龍に目にも止まらぬスピードで突っ込んだ。そうして、日龍の逆鱗を切りつけようとしたその瞬間、空に黒い光が光った。轟音とともに日龍は押し潰され、山頂は派手に砕かれ、オレンジ色の岩が四方八方に飛び散った。
「ユスティ!」
「ご安心を。私がアームで引き戻しました」
ノースの腕はユスティティアの腹をしっかりと掴んでいた。ユスティティアの顔は少し青くなっていた。
「ああ、ありがとう…。おえっ…」
土煙が晴れると、そこには真っ黒の鎧に全身を隠した者がいた。時折赤い瞳らしきものを光らせながら日龍の頭を黒い大剣で突き刺したまま、周囲に散らばったオレンジ色の石を拾ってはワープホールに入れていた。
3人はなんとも言えない不吉な予感がしていた。無駄に鳥肌が立ち、妙な寒気もする。そんな中、ユスティティアはやっとの思いで不吉な者に声をかけた。
「…なぁ、あんた何をしてるんだ?」
その者はこちらの存在に気づき、赤い光を放ちながらこちらの方を向いた。
不吉な感覚はより一層強くなり、少しでも気を抜けば失神しそうなほどの凍てつく恐怖が襲いかかってきた。地面に一滴の汗が落ちると、不吉な者は機械混じりの声で話し始めた。
「…そう怖がる必要はない。俺はこの石を取りに来ただけだ」
3人は一瞬で変声機だとわかった。
「…まず、あんたが何者か聞いていいか?」
「…それは言えない。その理由もまた言えない。だがどうしても知りたいなら、俺の仲間にならば話してやろう」
「断る」
「まぁ、そうだろうな。だが、俺もここに長居はできない。この辺りでずらからせてもらうぞ」
不吉な者は黒いオーラを纏い、姿を消した。
「…なんだったんだ?」