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記録7 正体不明

 皆さんこんにちは。

 ようやく7話目が完成しました。勉学の都合上、こうして間がかなり空いてしまいました。大変申し訳ございません。今後もかなり間が空いてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。

 それでは、本編へどうぞ。

 先日の件からノースは魔法を使えるようになったが、強力すぎるが故に、自身が思うように制御できておらず任務中や基地滞在中で団員にも被害が出てしまうため、魔力を制御する『魔力抑制リング』という腕輪をつけることになった。

 この魔道具は、身につけている者の魔力を一定以上の威力が出ないように抑制することができ、最大で99%抑制することができるものである。

 現在ノースは70%抑制しており、これで『光組』の中で平均より上あたりの威力を出しているらしい。

 しかし、いつまでも魔道具に頼っていてはいけない。できる限り早く自分の力で制御する必要がある。そのため、徐々に魔道具の効力を下げていくことにした。


 今朝もいつも通り自分の武器の手入れをするノースとユスティティア。ノースがふとユスティティアの武器を見ると、市販のハンドガンとは造形が全く異なっていた。機能としてはおそらくオートマチックの銃と同じなのかもしれないが、ハンドガンという割には銃身が長い。だが、ライフルというには短い。

 また、所々何かをはめることができそうな穴や部品がいくつかあり、ユスティティアの前にもたくさんパーツが散らばっていた。ショットガンの弾を入れておくシェルキャリア、銃声を静かにするスナイパーライフル専用サプレッサーなどがある。明らかにハンドガンにつける外装パーツではないはずだ。


 ユスティティアはノースがこちらの武器に興味を持っていることに気がつき、一声かけてみる。

「気になる?」

 ノースは縦に小さく首を振った。それを見てユスティティアは持っていた布巾を置いた。次の瞬間、周囲に散らばっていたパーツがハンドガンに集まり、次々に合体していった。たちまちハンドガンはスナイパーライフルになった。

「これは僕の専用武器『サテライト・ウェポン』。見ての通り、この武器は様々な武器に変形することができるんだ」

 ノースは少し驚いた表情をしていた。その後、何か閃いたかのような表情に変わった。ノースは突然部位ごとにバラバラになった。ユスティティアは驚きのあまり止めようと思ったが、ノースのことだ。さすがに自爆するようなことにはならないだろう。


 ノースはユスティティアと同じ部位にそれぞれ覆い始めた。しばらくすると、全身機械のアーマーが完成した。ユスティティアはしばらく自身の手足を動かしてみた。パワードスーツを着ているような感覚だが、しっかり耐久力もありそうだった。ヘルメットまでさまざまな機能がついていて、使い勝手が良さそうだった。

「どうでしょうか?ユスティティア様の武器を参考にしたものなのですが…」

 どこからかノースの声が聞こえる。おそらく、ヘルメットに搭載されているヘッドフォンのようなものから声を出しているのだろう。

「うん、これなら接近戦でも活躍しそうだね。これって手ブレとか修正できるの?」

「可能です。腕や手の負荷を上げればこの通り」

 試しに窓の外から見えるおよそ10m先に見えるエレンディルに向かって小さな火球をスナイパーライフルから飛ばした。照準はしっかりと決まり、エレンディルの後頭部に直撃した。エレンディルは怒った表情で周囲を見渡し、こちらの存在に気がつき走って来た。

「何すんだテメェ!」

「ごめんって。ちょうど良い的があったからさ」

「いつかぶっ殺してやろうか?」


 とはいえ、これはかなり使えそうだ。元々ユスティティアは体力がないため、基本後方から攻撃をする。だがこれなら万が一、白兵戦になってしまっても問題ないうえ、ノースの補助もあるので命中率も安定するだろう。

 また、ノース曰く、このアーマーは自在にカスタムできるようで、近接戦闘に長けたアーマーや魔力を強化するアーマーにもなれるため、汎用性が非常に高いようだ。


 そんなことを話しながら、武器の手入れを再開しようとしたその時、王 破浪がやって来た。

「ようやく見つけた!休憩中、大変申し訳ありませんが、今すぐ任務に出てください」

「それはどうしてだい?」

「実は、魔界へ偵察任務に向かった奴らが帰ってこなくて…。もしかすれば、何か強力な個体に遭遇したかもしれないんです」

「…場所は?」

「『亡霊の荒野』です。ただ、具体的にどこで何があったのかわかっていなくて…」

「『亡霊の廃墟』?そこは幽霊系の魔物しかでない。仮に強い個体だったとしても、『貪欲の亡者』か『化け猫』程度の魔物しか出ないはず」

「そうなのです。ですので、予期せぬ襲撃を受けた可能性が高いと思われます」

「…わかった。3分以内ですぐに出動する」

「ありがとうございます。俺は出入り口付近で待機していますので、準備ができ次第すぐに向かいましょう」

 王 破浪は少し早足でどこかへ行ってしまった。ユスティティアは散らばったパーツを全て両腰のポケットに突っ込み、着ていた服の上からさらに防弾チョッキのような物を着た。

「ノース、どのくらいの高熱なら耐えられる?」

 ノースはなぜそのようなことを聞くかわからなかったが、とりあえず質問に答えた。

「700℃まで問題ないです」

 ユスティティアは表情一つ変えず「そうか」とだけ呟き手に分厚い手袋をつける。瞳の奥はいつもより違う雰囲気を感じる。


 その後、王 破浪と共に目的地へ向かうため、特殊なゲートを魔法で作った。ゲートが開いた瞬間、その向こうからは凄まじい熱気が吹いてきた。

「凄まじい温度ですね。気温520℃、それに加えて猛毒のガスが大気中に混ざっていますね」

「とりあえず入って。このままだといろいろ被害が出るから」

 そうして3人は魔界へと足を踏み入れた。あたり一面赤茶色の地面、吹き荒れる風、建物どころか動植物が全くない。とにかく殺風景な場所だった。

「ここが、魔界…」

「そう。魔界は『煉獄』と呼ばれる灼熱の時期と『凍獄』と呼ばれる極寒の時期が存在する世界。どっちの時期でも、普通の生物は生きることはできない、まさに地獄の世界だ」

 ノースはなぜか虚しい感情に囚われたが、それは気にしないことにした。

「…とにかく、目的の場所へ向かいましょう。方向はこちらでしたよね?」


 ノースたちは目的地『亡霊の荒野』へと歩を進めていく。道中、奇妙な造形をした魔物に複数体遭遇したが、幸いそこまで強い魔物ではなかった。

 そして着いたところは、その一帯だけ濃い霧がかかった墓場があった。規模はそこそこ大きく、家10軒分は入りそうな広さだった。見た目だけでも不穏な空気を放っていた。

「この気温で霧があるなんて…」

「この霧は、魔力を含んだ特殊な霧だ。魔力を含んでいるから、自然には消えないし、魔法を妨害する効果もあるから、色々と厄介なんだよな…」

「確かに、『魔力レーダー』でも正確な情報が得られませんね…。ひとまずここは、なるべく離れず、背を見せずに行動しましょう。ユスティティア様もそれでいいですよn——」

 ユスティティアは険しい顔をし、滝のように大量の汗を流し、体を小さく震えさせていた。ノースは、どこか体調が悪いのかと思い、ユスティティアをスキャンした。結果は、『恐怖状態』と検出された。

「…ユスティティア様、失礼を承知で質問させていただきますが…、幽霊が怖いのですか?」

 ユスティティアは少し躊躇ったが、なんとか頷いた。

「あー…、そうだった。副総長、お化け苦手なんだったな…」

「幽霊は空想の存在ではないのですか?」

「いや、幽霊は実在する。生物の魂は高密度の魔力と遺伝子の塊だ。本来なら生物が死ねば、その魂は大気中に分散するんだが、たまに分散するどころか周囲の魔力をまとい、彷徨い続ける奴がいる

  …とにかく、長話はこの辺にして、どうするんですか?副総長。他のやつも呼べないこともないですが…」

 ユスティティアは言い訳や逃げる方法を考えたが、すぐにそれらの思考を排除し、なんとか理性で制御した。汗で濡れた額を手で拭うと、青くなった顔で覚悟をするのだった。

「…いや、大丈夫…!やるって言ったのは僕だ…!言ったからには最後までやる…!」

「…はぁ、相変わらずだな、副総長は…」


「ノース、基地でやってくれたアーマーをやってほしい」

 ノースはユスティティアの体の一部を包み込んだ。

「…ノース、基地でやってくれたアーマーと姿形が違う気がするんだけど…」

「はい、今回の戦闘は視界が悪いので接近戦が多いと判断したので、素早い動きができるよう、必要最低限の装備にしました。希望があるようでしたら、そちらに変形しますが…」

「…いや、大丈夫…」

 いつもならば、冷静かつ穏やかで、常に余裕があるような態度と性格だ。しかし今のユスティティアは全く余裕がなく、冷静さを失いかけていた。だがそれを、必死に理性で制御していた。ノース自身もどう対処すれば良いか全く分からず、内心戸惑っていた。

「…はぁ、まぁ、ここに連れてきてしまった俺の責任でもあるので、万が一は任せてください」

「…ごめんな…」

 そうしてようやく墓場へと歩を進めるのだった。


 霧がかかっているので視認性は最悪なのはもちろんのこと、魔力を帯びているせいか、魔力も感じにくいため何が潜んでいるか全くわからない。時折、誰かのうめき声と魔界の風がより一層恐怖を掻き立てている。一歩進む度にユスティティアの心拍数と筋肉の強張りが徐々に増していく。

 すると、正面に大きな影が見えた。警戒しつつ近づくと、それは体長2mほどのゴーレムだった。ゴーレムはその場で膝をついて固まっており、所々傷があり、かなり年季が入っていた。王 破浪は持っていた長い棒で強めにつついてみたが無反応だった。

「…目も光ってないし、壊れているのか?」

「分かりません。ですが、ゴーレムは、エネルギー生産のため一時的に動かなくなる物があります。念の為、頭部とコアを破壊しておきましょう」

「そうだな、変に襲いかかってきたら面倒だしな」


 そうして王 破浪はゴーレムに向かって棒を思いきり振り下ろした。その瞬間、ゴーレムはその棒を掴んできた。そのまま立ち上がり、赤いランプを光らせていた。先ほど、体長は2mほどと言ったが、いざ立ち上がると、3mはありそうな大きさだった。

「チッ!起動しやがったか…!」

 王 破浪は棒を取り返そうと引っ張ったがびくともしなかった。

「破浪、避けろ!」

 ゴーレムは王 破浪を蹴飛ばした。蹴りは王 破浪の腹に直撃した。硬い何かが折れる音を放ちながら吹き飛ばされ、口から血を吐きながら地面を転がった。

「なんだこいつ…!ゴーレムとは思えない速さだぞ!?」

「ユスティティア様!次、来ます!」

 今度はユスティティアめがけてパンチを繰り出すゴーレム。しかしユスティティアは軽々と避け、四肢の関節部分全てを銃で攻撃した。

『千光流星群』

 無数の光輝く銃弾は、全弾狙い通りに命中した。が、特にダメージになってなさそうだった。

(硬い…。表面を溶かすことすらできないとは…)

 すかさず連続で地面をえぐるほどの威力のパンチを繰り出していくゴーレムだが、ユスティティアには一発も当たらなかった。ユスティティアも攻撃をするが、連続攻撃を得意とするユスティティアは単発の火力が低い。そのため、全くゴーレムにダメージを与えれてない。


 しばらく攻防戦をしていると、そこに王 破浪が両端が尖ったヌンチャクを持って突っ込んで来た。

「てんめぇ…!よくもやりあがったな…?これでもくらいやがれ!」

『黄蜂之怒』

 素早い連撃でゴーレムを攻撃していく。ゴーレムは反撃しようにもできず少しずつ後ろに下がっていった。

「助かった、破浪!この一撃で、仕留める!」

 ユスティティアは巨大な大砲をゴーレムに向けて構えていた。

『遠雷槍』

 放たれた電気を帯びた鉄の棒は凄まじい轟音と共にゴーレムの巨体を貫通した。赤いランプは消え、そのまま前に倒れた。


「…やったか?」

「…エネルギー反応消失を確認。破壊完了です」

「そうか…。しっかしよ、なんだこいつは?まさか、こいつのせいで俺たちの団員が帰って来なかったのか?」

「かもしれないね。とにかく、辺りを確認してみよう。近くにいるかもしれないし」

「バイタルサーチを起動。…生体反応を確認。3時の方向です」


 その後、行方不明になった団員25名を無事救出し、千華の団の基地であり、病院でもある所へ向かった。25名のうち、5名が意識不明の命の危険がある重体、19名が全身の骨を折るなどの重症、1名が両肩の骨が脱臼した。

 無事任務が終わった3人は今回のことについて千華とエレンディルに伝えた。

「…謎のゴーレム…か」

「形状は27式プロトタイプのゴーレムに似ていた。けど、万が一そのゴーレムだとしたら、不可解な点が多い」

「そうね。ゴーレムは元々、何かを守るために作られた機械人形。宝、人、生態系…、何かを守るように作り込まれている。でも、そのゴーレムはこれと辻褄が合わない」

「もしかすると、あの墓の守護者だったのか?」

「今はそうとしか言いようがないな…。どのみち、あそこはもう少し調べる必要がありそうだな。…そういえば、ユスティから聞いたぞ。破浪、お前肋骨は大丈夫なのか?」

「あー…、多分、大丈夫っす」

「5本折れてそのうち1本は内臓突き刺さっているのに?」

「…すんません、強がっていました…」

「…毎回そうだけど、なんであんたたちってそうやって無茶するのよ」

『黄昏の花』

 美しい花が王 破浪に巻きつき、緑の光を放った。王 破浪の表情が少しずつ良くなっていった。

「…すんません、助かりました」

「次また無茶したら、その度に10ジュエリー(日本円で約1000円)請求するからね」

 それを聞いた王 破浪は面倒くさそうな顔をし、他の人は笑った。


 とりあえず、基地に戻ったユスティティアたちだったが、まだ一つ問題があった。それは、ユスティティアの武器である。あの時、ロケットランチャーのような形に変形させ、さらにそこに無理矢理ノースが電磁砲に近い形に変形させた。そこまではまだ良かった。だが、盲点だったのは耐久力だった。ロケットランチャーと電磁砲とでは反動が全く違う。その反動に耐え切れなかった銃は、所々ひび割れ、いつ壊れてもおかしくない状態だった。

「…おい、これどーすんだよ?お前治せんのか?」

「いや、残念だけど、僕に直すことはできないね。何より材料と修理道具が足りない」

「…申し訳ございません、ユスティティア様」

「別にいいんだ。いつかはこうなると思ってはいたし。…こういう時は、やっぱり、あの人の出番だね」

「あの人、とは誰のことですか?」

「天界一の鍛治職人『蒼桜 三日月(あおざくらのみかづき)』さんのことだよ」

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