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記録4 予想外の即戦力

 4話目です。今回も刺激的なシーンはないかと思われます。

 どうでもいい知識かもしれないですが、中国では人の名前をフルネームで呼び捨てにするのが普通らしいですよ。

 それでは本編へどうぞ。

 先日、光組に加入したノース。今日は王 破浪から戦闘について教わるのだった。一応ノースも護身術ならできるが、命をかけた戦いで護身術程度では意味がない。そのため、ちゃんとした武器を持った戦いの基本を身につけなければならない。


 ノースと王 破浪はたくさんの団員が訓練している非常に広い部屋の出入り口付近に置いていた、たくさんの武器の中から好きな武器を選んでいるところだった。

「さて、まずは好きな武器を選んでくれ」

 剣や斧といったごく普通の武器から、本や杖などいかにも魔法に関わるような物、鎖に繋がれた鎌やなぜかフライパンまであった。

「…あの、これらは全て武器で実際に戦闘に使われているのですよね?」

「ああ、そうだが、それがどうかしたのか?」

「…なぜフライパンがあるのですか?調理器具ですよ」

「確かに俺も初め見た時はこいつらふざけてるのか?って思ったが、実際使ってみると案外使い勝手が良くてな。たまに俺も使ったりする」

 そのことを聞いたノースだったが、それでも完全に信じることができなかった。

 確かにフライパンで叩かれたらひとたまりもないし、使い方次第では盾の代わりとして活用できるだろう。それでも、命の奪い合いをする戦場でフライパンを持っている敵がいたとすれば、よっぽど強い者でない限りふざけているとしか見えないだろう。


 ノースはたくさんの武器を一通り見たが、特に興味のある物ややりたい物がなかった。そこでノースは王 破浪に質問した。

「この団で最も不足している兵種はなんですか?」


 兵種とは、戦闘において使用する武器やポジションなどを細かく分けたもので、代表的なもので剣士や兵士、魔導士などがある。これらは『初級兵種』と呼ばれており、他にも『中級兵種』、『上級兵種』、『最上級兵種』、『固有兵種』がある。基本的に上位の兵種ほど強いが、あくまで汎用性が高いだけで必ずしも強いとは限らない。


 話を戻し、ノースがなぜこのような質問をするのかというと、どうせ適当に選ぶよりかは今不足している部分を穴埋めできるようにしたかったからである。

 王 破浪は周囲にいた団員たちと話すと答えを言った。

「今は後方アタッカーのやつらが足りないな。特に『マジカルスナイパー』と言う兵種に関してはユスティティア副総長だけらしい」

「そのマジカルスナイパーというのはどんな兵種なのですか?」

「使う武器は銃や弓矢がメインなんだが、魔法も使える最上級兵種だ。…まさかとは思うが、それになりたいとか言わないだろうな?」

「…何か問題があるのですか?」

 ノースはそんな表情で聞き返すが、王 破浪はそれを聞いて呆れた顔をしていた。少しため息をつくと、その表情のまま説明した。

「…中級兵種以上からは特殊な試験を受けないといけない。これは兵種の偽装防止のためで、試験に合格すれば正式にライセンスを貰えるが、上位の兵種ほど試験内容は過酷になっていく。特に最上級兵種の合格者は100万分の1程度しかいないらしい」


 ノースはこのことを聞いても自信がありそうな顔をしていた。確かに機械なら成長速度も早いと思うが、この時ノースはある問題を忘れていた。そのことに薄々気がついていたのか、王 破浪はこう言った。

「…そもそも、機械のお前魔法使えんのかよ」

 ノースはその一言で一気に自信をなくした。周囲の人でも見て分かるほどシナシナになっていた。

 それでもノースはなんとかして魔法を発動させようと手を前に出してオーラのようなものを手に集中させた。王 破浪はその姿が面白かったのか笑いながら見ていた。

「はっはっはっは、その意気込みは良いが、機械のお前じゃあ魔法は使えな——」


 その時、ノースの突き出した手のひらから電気の玉が凄まじい勢いで飛び出し、地響きがするほどの轟音を放ち壁に衝突した。衝突した部分の壁はへこみ、黒く焦げていた。周囲の団員たちは唖然として見ていたが、魔法を放ったノース自身が一番驚いていた。しばらくの間沈黙が続き、その後ユスティティアが駆けつけた。

「どうしたの!?なんかすっごい音したけど!」

「!ユスティティア様。実を言うと——」

 ノースは先ほど起こったことを全て伝えた。

「…君にそんな力があったのか」

「それよりもユスティティア様、本日は任務で忙しいはずでは?」

「防具が壊れたから修理するために戻っていたんだ」


「…いきなりこんなに強いってことは、もしかしたら『存在力』が強くなったからかもしれない」

「存在力…とはなんですか?」

「存在力はそのものが世界に存在する力のことで、周囲の人がそのものを認知したり、名前をつけることによって強くなる。特に名前をつけられると、つけた人と同じくらいの実力を持つようになるんだ」

「つまり、今の私はユスティティア様と同じくらいの実力を持っているということですね」

 そのことを聞いた団員は非常に驚いたが、同時に嬉しくもあった。これには王 破浪は内心驚いていたが、思わず笑っていた。

「くっはっはっはっは!これはすごいな!まさかユスティティア副総長がこんな大物を連れてくるとは思ってもいなかった!今日はとてもいい日だな!そうと決まれば俺も張り切ってお前を育てねぇとな!ノース!適当に銃を持ちな!」

 ノースは言われた通り適当に銃を手に取った。


 次の瞬間、王 破浪は高く飛び上がりノースの頭めがけて飛び蹴りをしてきた。ノースは反射的に王 破浪の足を掴むと、そのまま地面に叩きつけるようにして投げた。しかし王 破浪はありえない柔軟力で受け身をし、一度距離を取った。

「まずはザックリでも良いから戦いに慣れないといけないな!全力でかかってきな!こっちは上級兵種『カンフーマスター』を持ってるからな!そう簡単にはやられはしないぞ!」

『拳頭衝擊』

 王 破浪は拳から衝撃波を飛ばした。ノースは銃の扱い方がわからなかったため、とりあえず銃身を大きく振り、衝撃波を打ち消し、銃は先端が折れ曲がっていた。

 その隙に王 破浪はノースの目の前へ行き、腹に一撃を入れようとした。しかしノースはそれを逆手にとった。持っていた銃を投げ捨て、突き出してきた腕を掴むとそのまま後ろへ叩きつけるようにして投げた。

 だが王 破浪は受け身を取ると並外れた柔軟力でノースの頭を蹴った。それでもノースは怯まず王 破浪を投げ飛ばした。王 破浪は華麗に着地をした。


「初めての戦闘にしては悪くないじゃないか。だが、肝心な魔法と能力が全然使えてないな。まぁ、最初なんてそんなものか」

「魔法ならわかりますが、能力とはなんですか?」

「能力はその人が持っている個性みたいなものだ。魔法は精神力でダメージ量が変動するし、魔力がなければそもそも発動できない。だが能力は、精神力で変動することもなければ、魔力が尽きても使えるのがほとんどだ。主に自身を強化するものが多いが、妨害やら攻撃やら基本なんでもある」

 ノースは一応理解はしたが、自信は待てなかった。上手くできるかどうかという問題もあるが、先ほどのようにいきなり変なものが飛び出して危険なことにならないか不安だったのである。

「…ですが、魔法ならともかく、能力は使い方が全くわからないですし…」

 王 破浪は慰めるようにしてノースにアドバイスした。

「大丈夫だ。ここにいるやつは全員タフだからな。そう簡単にはやられない。

 だが、あらかじめ言っておこう。お前のその優しさは時に皆を守る盾にもなり、他人を傷つける武器にもなる」

 すると、王 破浪は袖の中から毒が塗られたナイフを取り出し、ユスティティアに向けて飛ばした。


 この瞬間、ノースは主人であるユスティティアを守る一心で体を動かした。ただそれだけのために走った。しかし、ノースがどれだけ速く走ったとしても、間に合う訳がない距離だった。

 それでも、『守りたい』という一心で身体中を奮い立たせた。

 次の瞬間、雷鳴の音とともにノースはユスティティアの前に立ち、いつの間にか出てきた大きな盾でナイフを防いでいた。ノース自身も何が起こったのか全く理解できていなかった。


「…雷魔法が一番得意なのか。そしてそれがお前の能力、『創造者』。今はそれしかわからないが、能力は他にもたくさんあることがあ——」

 ノースは片方の手にナイフ、もう片方の手には王 破浪に突き出した。

「…あなたのおかげで能力と魔法の使い方がわかったのでそれについては感謝申し上げます。ですが、私のご主人様に手を出したことは許しません。次、同じようなことをしてみてください。あなたのことを本気で殺します」

 目は殺意に満ち溢れており、声はいつもより低く重たくなり、体からはバチバチと音をたてて放電していた。

「…それについては悪かったよ」

 ノースはナイフを王 破浪に返すと、変形させた片腕を戻し、盾を適当に武器がたくさんある中に雑に放り投げてどこか行ってしまった。ユスティティアはその後を追った。周囲の人は皆静まり返っていた。


「…ノース、大丈夫か?」

 早足でどこかへ行こうとするノースを止めた。ノースはユスティティアに背を向けたまま話し始めた。

「…私は大丈夫です。ただ、少し不快に思っただけです」

 そうしてノースは立ち去ろうとした。その時、ユスティティアはノースの手を慌てて握った。

「ノース、僕はそう簡単に死ぬほど弱くはないし、もし僕が危ないことになっても、君は必ず僕を助けてくれるでしょ?だから——」

「やめてください!」

 ユスティティアは思わず体がビクッとしてしまった。ユスティティアとしては慰めているつもりだったが、逆に怒らせてしまったのかもしれない。

 その時、『ピー』という音がノースから聞こえた。この警報音はオーバーヒートを警告する音である。しばらく警告音だけが鳴り響く…。

「…ユスティティア様はまだ任務があるのではないのですか?」

 ユスティティアはそのことをすっかり忘れていた。光の速度でどこかへ姿を消してしまった。その時ノースはその場にうずくまり、ため息をついた。そのため息はどこか幸せそうだった。


「…やはりあなた様はお優しい方ですね…」

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