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22/22

記録22 暴走

 22話目です。

 先ほど、プレビューにて最終チェックをしたのですが、なぜか文章がおかしなことになっていました。それで調べたのですが、なぜか単純に同じ文章がコピペされてただけでした...。お恥ずかしい......

 それでは、本編スタートです


「――――システムエラーを検知――――」


 そんな不吉な予感がするキーワードを突如発した。服が乱れたまま立ち上がり、こちらを振り向いた。そこには青と黄色の瞳が不穏に明滅していた。

 彼女の足元の金属がノースと一体化する。それと同時に水色のモニターは黄色に変色していった。

『防壁の成分が変質しています。直ちに対処してください』

 それを見たユスティティアは先ほどの乱心が嘘のように正気に戻りノースに駆け寄る。

「ノース、落ち着け!今すぐシャットダウンを――」

 そうしてノースの背後へと手を回し、後頭部に触れた瞬間、彼の手から突き刺すような激しい痛みを感じた。咄嗟に手を引っ込めたユスティティアが自身の手を見つめると、そこには無数の細かい金属片が突き刺さっていた。

「――障害を検知。排除、実行」

 手をゆっくりと伸ばし、ユスティティアの顔を鷲掴みしようとした。だが、すぐさま距離をとった。しかし、武器は構えずただ状況を冷静に分析し始めた。

「システムエラー...?おかしい、こういうことが起こっても大丈夫のように、強制シャットダウンプログラムを入れたはずなのに...、まさか、自己防衛システムが悪さした?いや、だとしても――」

 顎に金属片が刺さった状態の手を当ててぶつぶつと呟きながら様々な考察や推測をした。鳳凰もその光景を見てこの風景を言葉で表せ尽くせる限りの情報を

「今は詮索より、こやつの対処からじゃ!」

 次に前へ出てのはルナだった。緑のドレスを控えめにひらつかせながら対の黄金の扇を構えた。

『つむじ旋風:(ばく)

 両腕を交差させると、室内であるにも関わらず突風が吹き荒れ、たちまちノースの体は渦巻く風に閉じ込められた。

暴風の咆哮(テンペスト・ハウル)

 強く縦にあおがれた右の扇から放たれた荒れ狂う嵐は無慈悲にノースめがけて吹き荒れた。隅に置かれた機器や薬品棚に入れられたガラス製の道具たちに風が直撃することはなくても、かなりの重量のある物体と内部にある物を恐怖するかのように振動させるには十分な威力だった。

 ノースはその突風を直に受け、白銀の髪が強くなびくが、彼女の足は既に地面の金属と強固に融合しており微動だにしなかった。

「ルナ――」

「分かっておる」

 鳳凰の手は相変わらず止まるどころかさらに早い速度で無数のキーを連打していた。

「やはり妾の魔法では分が悪い」

「では、私にまかs――」

「却下」

「――...私に良い策が――」

「却下と言うておろう!」

 暴風が吹き荒れる中だというのに、彼女の声ははっきりと聞こえた。心なしか、荒々しさも増した。

「まあ、最後まで聞け」

「お主のことじゃ。どうせ、不死身であることを利用して力ずくで動きを止める」

「――...まあ...、そんなとk――」

「ついでに、ユスティに叱責されぬ範囲ぎりぎりまで攻めて、研究資料を集める算段なのじゃろう?」

 その言葉を一言一句欠かさず聞いていたユスティティアだったが、それについて怒りの表情も言葉も出さなかった。

 思わず眉間にしわを入れながら苦笑いする鳳凰。ようやくキーの連打を止め、襟を正しながら彼女のすぐ隣までゆらりと近寄った。一歩、また一歩と近づくたびに彼の研究者を象徴する真っ白な衣服は強く煽られていく。

「――半分正解。とでも言っておこう」

「さては、妾が申した後半のくだりが図星なのじゃな?」

 彼女は心を読む能力も魔道具もない。なのに彼女は彼の思考をかなりの精度で言い当てている。これには彼の苦笑いの顔が直ることを知らない。だが、これは決して悪い意味ではなかった。むしろ、一部の人は思わず嫉妬してしまう光景と事象だった。

「――...とにかく、私に任せればノースを無傷で止めることができる。そして誰も死ぬことはない。安心したまえ。私ははなから死ぬ予定などない」

「誰もお主が死ぬ心配などせぬ」

 二人はほぼ同時に鼻で笑った。

「辛辣な魔女」

「心の無い詐欺師」

「私が死んだら一番困るのは君のはずだろう?」

「...それはどうかのう?あるいは、そうかもしれぬな」

 一瞬だけ目線が合う。その刹那、荒れ狂っていた風は凪の如く静まった。輝く緋色の羽が舞い、一瞬にしてノースに急接近した。しかし機械の彼女はそれよりさらに早かった。すぐさま動きを検知したノースは接近してきた鳳凰の首を鷲掴みした。すぐさま彼の首は金属に変質し、浸食を始める。


「10秒経過。反応なし。変わらず浸食を継続中――」

 それを見たユスティティアは今にも飛び出しそうになったが、ルナはそれを拒んだ。

 浸食が進み、顎まで金属に変質した時だった。突如、浸食が停止した。

「不明、およびしシ深刻ななななウイルスを検――――」

 徐々に動きが挙動不審になり、狂ったかのように痙攣を始めた。

「――ようやく効いてきたか。私の体には致死量以上の毒や呪いが爪や毛先に至るまでしみこまれている。予想通り、毒は君に効かないようだが、呪いなら効果はあるみたいだな」

 痙攣はより酷くなり、耳を割くような不快感を煽る言葉にならない声と警報音が鳴り響く。青と黄色の瞳が激しく明滅していた。

「...17秒経過。痙攣反応を示す。『精神錯乱の誘印』と『雷帝の呪縛』の影響と思われる」

 痙攣の動きに合わせて首と一つとなった手が動き、彼の皮膚が今にも剥がれそうになる。しかし彼は苦痛の表情を微塵も浮かべず、何度も腕時計を見つめては淡々と観察をしていた。

 四肢も周辺にあった台になどもぶつかり、激しい衝突音が何度も響き、皮膚を形成していた皮がはがれていく。


 起動している証拠でもあった瞳は閉じられず、明かりは消えて虚ろだった。力なくして倒れた彼女を受け止めようと右手を背中側に回すが、あまりの重量に片手では支えきれず、彼は被さるようにして一緒に倒れてしまう。

「――開始から29秒。沈黙。...ふむ、アンドロイド相手に効く呪いはこの程度か」

 体を起こして内ポケットから小さなメモ帳を取り出し、起こった事象を簡潔に書きなぐった。


 変質してしまった首をどうにかして剥がそうとしていた鳳凰だったが、ノースの体の一部と化してしまった。

「何をしておる」

「...どうやら部分的に変質した影響で剥がれなくなってしまったようでな。悪いが、手を貸してくれないか」

「肌だけか?」

「おそらくは」

「ならば、そのまま引き剥がせばよいではないか」

 腕を組みながら答えた冷徹とも言える一言に、彼はにこやかに反論をしてみせた。

「いや、治るとはいえ痛いものは痛い――」

「いいから剥がせ」

 見かねたルナは髪を強引に掴み、そのまま全力で引っ張った。皮膚が剥がれてそこそこの惨事になるかと思われたが、なぜか血の一滴もなく、だるま落としのように首の部分だけ取り残され、頭部と胴体だけが引っ張られた。

「やれやれ、少しは配慮をしてほしいのだが――」

 何事もなかったかのように首を再生させ、おもちゃの如く頭部を接続する。

「『無意識の鎌鼬(かまいたち)』で痛みを感じさせずに引き剥がしてやったのじゃ。それだけでも感謝するが良い」

 瞬きよりも一瞬の出来事だったが、ルナは二つの扇からそれぞれ風の斬撃を飛ばし、首の根本と顎下を切り裂いていた。圧倒的切れ味と速さを持った風刃は、斬られたことに気がつかない。


「――...さて、一通り落ち着いたが......、ユスティ君、今回の件をどう推測する?」

 軽く首をひねり、微かに笑みを浮かべながらまじまじと見つめた。

 ユスティティアは再び金属片が刺さっている手を顎に当て、しばらく熟考した。依然として沈黙を保つノースに近寄り、背中のハッチを開けた。少し乱雑に付け直された翡翠(ひすい)色と花浅葱はなあさぎの基盤をもう一度取り出し、細かく分析をする。時折、基盤を撫でるような仕草も見せた。

 小さく唸るように鼻でため息をついて基盤を床に置いた。

「......考えられる原因としては、僕でも知らない未知の基盤。やっぱりあれが怪しいね。ネット通販や密輸、改造、新型...。どうあがいてもかすりもしない完全に新規のタイプのこの基盤。

それに、さっき波動を当てた時には基盤が強く反応をして、ルナが設計図を作ろうとした時もその部分が酷くぼかされていた。そして、鳳凰の言っていた機械の性能を含めて推測すると――」

「『魂がある』という結論になるか......」

 その言葉に小さく頷く。それを聞いていたルナもまたすかさず議論に参加する。

「少し待つのじゃ。生き物でも何でもない機械が、魂などというものを持つなど……あり得ると思うておるのか?」

「わからない。でも、魂は超高密度の魔力の結晶、もしこの基盤そのものに膨大な魔力が込められているなら話は変わってくる」

「だが、一つ疑問がある。現時点で、天界の全財産をもってしても、人為的な形成は不可能だった。仮にできたとしても、どうやってこんな小さな基盤二つでその膨大な密度の結晶を維持させていられるのだ?」

「ふむ、確かにその通りじゃな。魔力の結晶とは、極めて不安定なる物質じゃ。その状態を維持するには、適切なる管理と高度な加工技術が不可欠となる。しかも密度に応じて、管理も加工も難易は比例して跳ね上がるのじゃ。魂に匹敵するほどの密度となれば……あまりにも非現実的に過ぎる話じゃな」

 眉間に力が入り、頭を掻きむしりながら下を俯く。その視線の先には先ほどの二つの基盤だった。基盤は複数の線がノースの内部に向けて不規則に伸びていた。


 しばらく見つめていたが、基盤を今度こそは丁寧に取り付けられ、整備用ハッチを固く閉ざした。

 そして、頭の中で一つの可能性と心当たりを感じた。すぐさまそれを告げようと口を開いたが、その言葉は簡単には出ず、喉に引っ掛かっては飲み込んでしまった。

 ノースの後頭部に手を回し、小さなボタンを押した。静かな室内に排熱機器の音が微かに聞こえてくる。瞳が明るく点灯し、何度か瞬きをしてあたりを見渡した。

「――全システム、完全起動を確認。データ、およびプログラムに異常なし。ノース・ガラドリエル、完全復旧いたしました」

 初めて会った時のような控えめだが明るい声でにこやかに発した言葉。鳳凰だけが冷静を保ち、ただ依然として見つめていた。

「う、うん。全然平気そうだね」

 困惑のあまり言葉が出なかったユスティティアだったが、何とか言葉を絞り出して会話を継続させる。

「はい、システムエラーが生じた影響で緊急防衛システムが作動してしまいましたが、特に異常はありません」

 瀟洒な笑顔を崩さぬまま、彼女らしい現状報告の数々を伝達した。ルナも何か言いたげにしていたが、言葉が詰まってうまく話せずにいた。

 そんな中、再び水色のモニターの前でキーを連打する音がノースの報告の数々に紛れて微かに聞こえていた。

「――今日はこのあたりにしておこう。もう遅いし、解散だ」

 いつの間にか連打音が消えており、軽く手を叩く音が鳴り響く。それを聞いて地面に座っていた二人は即座に立ち上がった。

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