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記録20 禁断のコンビ

 20話目です。

 かれこれ20話も言っていた自分に正直驚きです。飽き性な自分がここまで続けられるのも我ながら不思議です。...まあ、課題は毎回終わらないのだけども...。(ボソッ)

 それでは、本編、スタートです

 ルナはアンティークな茶色のかばんを片手で持ち上げると、指を鳴らした。次に映っていた光景は、あの時来た大地の間の研究所と武器屋で挟まれた通りだった。

 インターホンがあったにも関わらず、ルナは無遠慮に研究所の鋼の扉を開けて入っていった。扉を開けた先には待っていたと言わんばかりに鳳凰が現れた。

「これはルナ。何か用かな?」

 わざとらしく言ったその言葉に僅かに苛立ちを見せるルナ。

「そんなもの、お主がわかっておろう。妾がここへ来るのは――」

「おやおや、ユスティ君にノース君まで。私の研究に興味があるのかね?ならば、君たちには今研究ty――」

「妾の話を聞かぬか」

 うんざりしながらも説明しているルナを素通りし、後ろについてきていた二人にわざわざ外に出てまで近づいた。手刀で鳳凰の後頭部を軽く叩くルナ。それでも、どこか不気味な笑みを崩さない彼だった。叩かれた後頭部をさすりながら、瞳だけようやく真剣になった。

「で?君がここに来るということは――」

「そうじゃ、力を貸してくれぬか?」

「...ふむ、まあ、立ち話も難だ。入ってくれ」

 深紅の瞳が怪しくノースを見つめると、口角をさらに上げ、右腕で中へと案内した。


 窓が少ない屋内を照らす蛍光灯は、フラスコやピペットなどのガラス製の道具を反射させ、半透明の液体が研究員たちの手さばきによって揺れていた。あたりには鼻の奥を突き刺す臭いが充満していた。一つは消毒液の臭いだと予想できたが、それ以外の臭いは予想できなかった。音はとても静かだった。意外にも、水が滴る音も足音すらしなかった。とにかく静寂だった。

 部屋のさらに奥の奥、そこにあったのはその一面の壁だけ明らか違っていた。これまでの部屋は全て殺風景な白い壁と灰色のコンクリートの床だけが広がっていた。だが、この一枚の壁とその周辺の床だけは違った。いや、()()なんて単語で表すにはあまりにも違いすぎる。この一面の壁とその周辺の材質の色は独特な光沢を放っていた。だがその光沢は、蛍光灯の光が強いせいか、どこか違う輝きをしていたような気がした。

 その壁に不自然に取手が設置されていた。その取手を鳳凰が全体重をかけて引っ張ると、徐々に隙間が現れ、響き渡った重厚感のある空洞音と鋼の戸がゆっくりと開く軋むような音は鼓膜が張り裂けそうだった。研究者二人は慣れたような姿でその先の真っ暗闇に吸い込まれていった。

「...どうした?早く入らんか」

 暗闇に手招きするような悪魔と錯覚するほど気味が悪く、背筋が凍り、肌はただならぬ悪寒に身震いした。そして反射的に腰にかけていた武器に手を当てた。

「そう身構えるな。何も死ぬわけじゃあるまいし...」

「そうじゃ、少々そやつの体を足先に至るまで調べさせるだけじゃ。だから――」


() () () () ()


 重苦しい声、不敵な笑み、歪んだ瞳、亡者とも言える手つきで引きずり込もうとする手招きで暗黒の前で待っていた。

「...。よし!帰ろう!ノーs――」

 若いが幾度もの激戦を繰り広げてきたユスティティアは危機感を感じたのか、振り返り、ノースの腕を引っ張ろうとしたが、そこにはノースはいなかった。さすがのノースでも察知して逃げたのかとあたりを見渡したが、どこにもその姿は見当たらなかった。

「よしよし、よい子じゃな。では早速、作業を始めるのじゃ」

 その声に顔を真っ青にしながら振り返ると、そこには二人に挟まれ、片方ずつ肩を掴まれたノースの姿があった。そしてそのまま暗闇へと歩を進めていた。

「ちょ、ノース!?何してんの!?」

 二人がノースの型を鷲掴みにする手を無理やり引きはがし、ノースの腕を強引に引っ張り、自身の背後に回し、とうとう腰にかけていた武器を取り出し銃口を研究者二人に向けた。突然引きこまれたノースは、終始理解できないような顔をしていた。当然、狂研究者二人も。

「どうかしたのかね?ユスティ君」

「どうしたもこうしたもあるかっ!!僕のノースに何してくれてんだよ!?前々から思ってたけど、君たちに任せたら大体ろくでもないことになってるじゃないか!!鳳凰はついこの間研究所を焼いて、その二日前には青桜さんの武器屋ごと吹き飛ばして、ルナも魔力が暴走して風が炎の間に吹いてきて、三日三晩、嵐みたいな風起こしたせいで炎組の基地の屋根吹き飛ばされた挙句、風組の隣に生命組があったせいでそこにあった花粉巻き上げて花粉症の僕、大変だったんだよ!?」

「何もしておらんぞ、まだ――」

()()!?」

「反応早いな...」

 錯乱しすぎるあまり、銃を振り回してはその度にあり得ないほど良い活舌で長々と口論を始めた。その場に居合わせた白い衣服に身を纏った研究員たちは苦笑いしながらその光景を眺めながら作業を進めていた。

「そう警戒するでない。何もわしたちはノースを殺すわけでも、惨いことをするわけでもないのじゃからな」

 そう言いながらユスティティアに一歩、また一歩と近づき、銃を構える彼の手を下げさせた。それでもエンジニアの抵抗は収まらず、ルナの手を払いのけた。

「信用できないから言っているんだ!ルナだけならまだましだと思っていたけど、今の君たちの顔は絶対何かやらかす前の顔なんだよ!!青桜さんがこの光景見てたら間違いなく止めに入ってるよ!!何なら今すぐにでも青桜さんに言いつけようか!?」

 一度は不適な笑みが消えた二人だったが、今になってはもう戻ってしまっていた。どちらかと言えば、微笑交じりの笑みだったが。


「とにかく、このことはやっぱりなしで!!帰ろ、ノース!」

 そして今度こそノースの腕を引っ張り、玄関へ向かった。

「...それでお主は何かわかるのか?」

 腕組しながら彼の後ろ姿を見て言い放った一言に玄関のドアを開けようとしていたユスティティアは硬直した。そして避けられない事実を突きつけられたような困惑した表情を見せていた。

「そもそもの話、お主がいくら調べようとも解き明かせぬものを知るために、妾のもとへ訪れたのであろう?それだというのに、いまさら基地へ戻ったところで、一体何がわかるというのじゃ?」

 ドアノブに手をかけようとしていたが、その手は徐々に下がっていき、とうとう力なく垂れ下がってしまった。

「お主がどうするかは、お主自身の自由じゃ。じゃが、その選択に伴う責任というものも、きちんと認識しておくべきなのじゃ。まあ、それが責任の重さを真に理解しておるお主だからこそ、ということなのじゃろうがな」

 何か思い当たる節があったのだろうか、肩がピクリと動いた。

 歯を強く噛みしめ、垂れ下がった手を全力で握りしめた。


「...ユスティティア様...。私からもお願いしたいことがあります」

 その声に振り替えると、案の定心配そうな青と黄色の瞳でこちらを見つめてくるノースがいた。そのノースの両肩を鷲掴みにすると、その場で俯いて懇願した。

「...ノース、今、君が言いたいことはなんとなくわかっている」

「...そうでしたか。さすがユスティティア様です」

「まあ、ただのしょうもない勘だよ。...でも、今回だけは本当に嫌な予感がするんだ...!...それでも、君はあいつらの実験に付き合うつもり?」

「...私は知りたいのです。私は一体何者で、何のために生まれたのかを。...この行為が危険だというのは、あなた様の表情を伺えば理解でききます。...わがままを言うようで大変恐れ多いのですが、あの方たちの研究を受けさせてください」

 その一言がある意味トドメだった。ノースの申し訳ないという気持ちを忘れず、真剣に嘆願する姿で彼の戸惑いと迷いが消滅した。同時に覚悟した。彼の直感が当たらないよう願いつつ、万が一に備えた。ユスティティアは珍しく実弾を装填した。

「...わかった。それなら放っておけないし、ついて行くよ...」

 睨めつけつつ、威嚇しつつではあったが覚悟のある目つきで狂研究者二人に歩み寄った。その姿を見た二人はどこか称賛するような笑みを浮かべたが、即座に狂気的に変化した。

「...いい目だ。まあ、安心しろ。安全は保障するさ」

「その通りじゃ。...さて...、実験を始めるとしよう」

 二人の狂研究者、エンジニア、機械の被験者は真っ黒な闇に飲まれていった。


 再び鳴り響く軋む音。閉じると鋼同士がぶつかる轟音が反響し、狭い隙間から空気が逃げる音とともに扉は固く閉ざされていた。

『パチン』

 暗闇の中で緑のモニターが突如光りだし、機械特有の自動音声を発した。

『SYSTEM|CLAIRVOYANCEクレアヴォイアンス、起動』

 一斉に蛍光灯がついたせいで目がくらむ。徐々に視界が正常になっていくと、そこに映る光景は、光沢のある灰色の殺風景な壁を背景に、施術台、その上にある大量の刃物、いくつもの管が連なって一つになった独特な形状のフラスコ、内部の棘がないアイアンメイデンもどき、大型のアクリル製のカバーのタンク状の何かなどがあった。

 パソコンのキーを連打する音が静寂な空間を徐々に騒がしくさせた。無数の刃物とレンズ、センサーが奇妙に曲がりくねり始めた。

「さあ、始めようか...!」

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