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記録14 冷え切った鋼

 14話目です。最近まだ若いのに腰痛がやばいです。どうやら僕ももうおじさんのようですね...。皆さんも体に気を付けてくださいね。この季節はとにかく暑いので

 それでは本編へどうぞ

 ここ最近、七望星の英傑団の間で少し嫌な噂を聞くようになった。

「あの女、まじで容赦ねえよな...」

「仕方ないよ。所詮あいつは機械。人の心なんてなくて当たり前だよ」

「さすが『勝利へ導く厄災(ディザスター)』...。敵でも味方でもあいつとは戦いたくないな...」

 そう、ノースのことだ。エレンの誕生日以来、破浪ポーランからノースに対して過保護だと指摘されたため、試しに他の団員たちと共同作戦をさせてみたのだが、どうやら効率だけを求めて犠牲や被害を一切考えない戦い方をしているようだ。具体的にどんな犠牲や被害が出ているのかと言うと、一番よく聞くのは団員たちの体のことだ。どうやらノースは『接続』という能力が発現したようで、その能力の性能が――

『相手と一体化することができ、一体化した者同士で能力を使えたり、弱点を補い合ったりすることができる』

 ――という能力らしい。

 これだけ聞くとなかなかいい能力だが、問題はこの能力がデメリット付きなこと。この能力、どうやら接続箇所に激痛を感じ、さらに接続痕ができるというものらしい。実際僕も見たが、結構痛々しいものだった。体に金属片が突き刺さっており、刺激すると突き刺さるような痛みを感じるようだ。しかも、人によっては腕だったり、首だったり、複数個所だったりと様々だった。幸い、千華の適切な治療で後遺症や痕もなく完全に治すことができるが、千華もこのことを心配しているようだ。なので、少しノースと話してみようと思っている。


「ノース、ちょっといいかな?」

 どこかへ向かおうとするノースを後ろから呼ぶと、ゆらりと体を回転させてこちらに体を向けた。

「どうかなさいましたか?ユスティティア様」

「いや、最近君とは別行動をしてるけど、なるべく『接続』って言う能力を使うのは止めてもらえるかな?」

 するとノースはきょとんとした顔で不思議そうな口調で言った。

「なぜですか?これが最高率なはずですが、何か誤算でもありましたか?」

 ユスティティアはこの一言でまさかと思った。が、決めつけるのは早計だと思い話を続ける。

「...ノース、最近みんなは君のことをなんて言っていると思う?」

「『勝利へ導く厄災』と言われています。二つ名、と言われるものですよね?光栄です」

 その一言でユスティティアは思わず頭を抱えてしまった。

 やはりそうだ。そうなんだ。いや、そんなことはもう目に見えていた。ノースを初めて見た時からもう既にろくな生き方や育ち方をされていなかったと思う。そう考えてみれば、ある意味これが『普通』なのだろう。それでも希望を持っていたかったが、そんな甘いものではなかった。

 ...さて、どう説明すればいいのか。今のノースに倫理観について話しても首をかしげるだけだろう。しかし、ただ否定し抑制するのもあまり良くはないだろう。


 そうした葛藤の末、何とか言葉を絞り出してノースに説明した。

「...ノース、確かに二つ名は並大抵の人ではない特別な存在に言われるもの。そういう意味ではいいことだけど、それが必ずしも褒めてたり尊敬してたりしているとは限らないんだ」

 今、僕ができることは

「君のその二つ名は非情で残酷だけど、必ず勝ちに導いてくれる存在。その二つの意味を込めた皮肉ななんだよ」

 真実を伝える。

「でも僕はノースがそんなふうに言われるのは嫌なんだ。僕だけじゃなくて、姉さんも破浪も同じはずだよ」

 ただそれだけだ。

「…だからお願いだ。これ以上はそんなことはしないと約束してほしい」

 ノースはユスティティアの話を聞いていた。ただただ聞いていた。が、やはりきょとんとした顔でこちらを見ていた。


 いや、もともと無理なのかもしれない。当然のことだろう。機械に人の感情や倫理を理解するのは普通に考えてみても目に見えていることだ。仮にそれに似たプログラムを組み込んでも、所詮仮初のもの。『心』とは機械のプログラムより複雑なシステムだ。

「…理解不能です。なぜわざわざ非効率な選択を自らしなくてはならないのですか?」

「それが、僕たちの『心』なんだ。…それが、今の君に足りないものなんだ…」

 ユスティティアはそっとノースの肩に手を乗せた。そして、日緋色の目でノースを真っ直ぐ見つめた。

「…お願い、ノース。すぐにとは言わない。『心』と言うものを、分かってほしい」


 ノースは何か言おうと口を開いたが、一度口を強く締め、目まで閉じてしばらく困惑した顔を見せたが、目を開いて青と金色の瞳を光らせて言った。

「…承知しました。本日を持って、『心』に関するデータを収集します。恐れ入りますが、ユスティティア様も教えてくれませんか?」

 ユスティティアは安堵し、ため息をつくと

「ああ、僕でよければ教えるよ」

 と爽やかな口調で答えるのだった。


 こうしてノースの『心』の学習計画が始まった。ノースは手始めに雷の間にいる白牙へ向かった。

「機械に『心』を与えるプログラム?そりゃまたどうして?」

 窓すらない殺風景な部屋の中、白牙は衣装の寸法をとって持っている最中だったが、ノースの相談に乗ってくれた。しかし、実際白牙は機械知識は基礎的なものでしか知らないので良い案が出てこなかった。

「というか、機械はユスティの方が詳しいのでは?」

「僕は機械本体の方。プログラムとかはほとんどわからないんだ…」

「煩悩」

「はっ倒そうか?」

「あはは、冗談だよ。君の場合、少し挑発すれば基本なんでもできるからさ。

 ...うーん、あいにくうちのプログラム専門のやつが今任務行ってるからなぁ...。鳳凰さんとかならなんかできそうじゃない?こう、黒魔術じゃないけど」


「黒魔術?さて、何のことだろうな?」

 鳳凰の研究室に向かうと、薄暗い倉庫のような場所で巨大な大釜に魔物の足や臓器、謎の液体を入れてグラグラと混ぜる鳳凰だった。

「そのことですよ。すっとぼけないでください」

「悪いが、私は呪いや毒が専門だ。それに、私の作る『心』は偽物だぞ?」

 鳳凰の不適な笑みを見た2人は、冗談などではなく本気で言っているのだと悟った。いや、ノースに関しては悪寒のようなものを感じたに近いのかもしれない。そもそも隣にいたユスティティアでさえ危機感を感じた。

 とはいえ、この二人が無理なら残すは一人しかいないだろう。


「『心』?」

 白衣姿に身を包まれ、窓から射す白昼の太陽に照らされている千華は、キーボードを片手で添えながらこちらをキョトンとした目で見つめた。

「そう、君なら簡単かなって思って」

 生命、性、そして愛の女神、アフロディーテの千華。彼女なら容易いことだろう。

「...難しいわね」

 彼女から飛び出した発言は非常に以外なものだった。ユスティティアは思わず困惑の声を漏らしてしまった。その表情を見た千華はクスリと笑みを見せる。

「そうね、確かに私はアフロディーテ。生命や精神的なものを教えられるけど、『心』って言う曖昧なものだと説明は難しいの」

 確かにそうなのかもしれない。これをあなたはどうするみたいな恋愛相談や体の傷の治療は容易いだろう。だが、『愛』や『心』という抽象的な存在は説明が難しい。特にノースのような論理的な思考の持ち主だとなおさら理解に苦しむだろう。

 ユスティティアは少し悩ましい顔をして俯いてしまった。

「…けど、一つだけ方法があるよ」

 すると千華は2人を近くまで呼び寄せた。2人は何かと思いながらも千華に椅子を引きずらせて近づくと、千華は2人を腕と突然出てきた翼で優しく包んだ。ユスティティアは突然の事に顔を赤くしたが、ノースは相変わらず無表情だった。


 あっつい…。そして冷たい…。ユスティ君は抱きしめると、いつも新品のカイロみたいに熱い。でも、ユスティ君のこの熱さは体質や得意魔法に関係はしない。これはユスティ君の『心』の熱さ。でも、ノースちゃんは、冷たい…。やっぱりこの子は…。

 千華はユスティに目でノースの方視線をやった。ユスティは一瞬躊躇ったが、千華の企んだ目つきで睨むと、ユスティは苦笑いしノースの背中からそっと手をやった。ノースは熱も寒さも何も感じたことはなかった。しかし今ノースが感じたのは、鋼ごしに感じた確かな暖かさだった。それが、果たして物理的なのか、それとも精神的なのか、はたまたプログラムがそうさせているのか、ノースには理解できなかった。


「今、あなたが感じているのが『心』よ。温かいでしょ?」


 その一言を否定するほどノースには自信がなかった。ただ、信じるしかなかった。その行為は、ノースにとって恐れを感じたが、同時に心地よさも感じた。ノースはぶら下がった手を、カチャカチャと振るわせながら、2人をそっと抱いた。まるで2人の暖かさに応えるように。


「…やはりわかりません。ですが、『心』について一つだけ理解できた気がします。…確証はありませんが…」

「それでいいの。曖昧でいいの」

 そうして離れようとしたが、ノースは腕と指をがっちりと掴んで2人を離さなかった。

「…あの、ノースちゃん?そのー、そろそろ離してくれないかな?ねぇ、ノースちゃん?なんでもっと強く抱きしめるのかな?」

 相変わらずノースは無表情と無言を保ちつつ離れようとする2人をより一層力を入れて抱きしめた。


 そんな空気でもお構いなしかのように遠くから騒がしい音が聞こえてきた。

「団長!!団長、大変ッス!!今すぐk——」

 ゼインはドタドタと足音を立て、声を荒げながら部屋の扉を壊れるくらい強く開けた。が、今の状況を理解できず固まってしまった。

「あ、ゼイン君。ちょっと手伝ってくれない?この子全然離してくれなくて…。まぁ、とりあえず、要件だけ先に聞こか」

「は、はい!たった今、瀕死状態の兵士が運ばれて来ました!!中毒者9名、低体温症18名、負傷者34名、計61名!全員瀕死状態です!!」

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