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記録12 肝心なこと

 12話目です。気がつけば、投稿し始めてからもう半年が経過したんですね。時の流れって早いですね。私の投稿頻度も同じくらい早ければいいのですが…。

 それはそうと、本編へどうぞ。

 任務を無事終えたユスティティアとノースは部屋に入ると、ユスティティアはベッドに倒れ込み、ノースは充電ケーブルを自分の体に接続した。

「はぁ、今日も今日とで大変だったなぁ…」

「お疲れ様です。あの戦士には逃げられてしまいましたが、死者はありませんでした」

「ノースの判断のおかげだよ。あんなの、僕に気づけなかった」

「…ありがとうございます」

 その後、しばらくの間沈黙が続いた。お互いなぜか少し気まずそうな表情をしていた。気を紛らわせようとユスティティアは自身の翼をいじり始めるが、やはりどこかぎこちない。ノースも理性で抑えるが、視線を必死に逸らしている。

「…、ノース、僕——」


「よう、随分とお疲れの様子だな」

 まただ、この戦士の気配には未だに察知することができない。気がついたらそこにいる。いや、今はそんなことより…

「君、どうやって天界に侵入した?」

 重い一言だった。

「それは答えられない。お前たちの知らない技術とだけ言っておこう」

「なら質問を変えるよ。今日、電波塔近くで何をした?」

 さらに重い一言だった。

「電波塔?そんなもの知らないぞ?俺は今日はずっと魔界で仕事を——」

 眉間にはシワが入り、ユスティティアは手のひらから炎を出す。

「君のせいで、僕の姉さんと千華が死ぬところだったんだぞ?それでもまだしらを切るつもりか?」

 漆黒の戦士は一切取り乱すことはなく、淡々と話す。

「おいおい、落ち着けよ。まぁ、俺がなんと言おうと信じないのはわかる。だが、俺は知らない。とだけ言っておく。信じるかどうかはお前たちに任せる」

「データは既にこちらの手元にあります。鎧の性質や物質はほぼ一致。魔力の周波も波の高さは不一致ですが、間隔は99,6%一致しています。ここまで一致するなら本人としか言えないでしょう」

「盲点だな。逆にそこまで調べているくせに、DNA鑑定はしてないのだな」

「DNA鑑定は今日の時点では指紋や毛の一本も手に入っていないので、鑑定はできません」

「そこだよ。そいつがどんな動きしたか知らないが、毛の一本すらないのはさすがにおかしいとは思わないのか?」

「わかりません。もし今のあなたが毛がないならそうだとしても不思議な話ではありません」

「それ、俺のこと遠回しにハゲって言ってる?

 とにかく、俺は本当に知らない」


 2人はこのまま続けてもなんの意味がないことを悟った。ユスティティアは漆黒の戦士を睨み、不服そうな顔をして炎を消した。

「…ならせめて、なぜ話せないのか理由を言ってくれないか?」

 漆黒の戦士は手を顔に当てて少し悩んだが、了承してくれた。

「確かに完全に何も話さないのは流石に信用をなくすしな。もしお前たちのその質問に答えたとして、お前たちは全て信じるのか?答えはYESかもしれないが、それはあくまで表面上だけ。俺がお前たちに俺の情報を話した時、お前たちはそれを利用する。そうだろう?それでもお前たちは違うとでも言うのか?本当に俺を裏切るつもりがないなら、言葉でなく行動で示せ。それができないなら、俺はお前たちに何も話さない」

 やはり一筋縄にはいかなそうだ。そもそも、こいつがほぼ毎日この部屋にやってくるのかはなんとなく察せるが、わかるのはそれだけ。根本的な部分が全くわからない。


 いや、そもそも色々と曖昧すぎるのもある。初めて会った時もそうだ。あそこで僕たちを始末することも可能なはずだった。それでもこいつはしなかった。そして、今回の件でも千華たちを生け取りにしようとしてた。現段階では明確な殺意というより、なんらかの方法で大量の生贄を集め特殊な儀式をしようとしているとしか推測できない。

 だからこそ、油断はできない。

「…やっぱり、君とは分かり合えないようだね…」

「…そうか。やはりそうなのか。…まぁいい。今日はこの辺で帰らせてもらおう。だが、俺はお前のことは信用はしたいとは思ってる。…じゃあな」


 そうしてそいつは闇の中に消えていった。

「…一体何がしたいのでしょうか?」

「さあ、僕にもわからない…。でも、やばいことだけはわかる」

 あたりの空気は冷たかったが、次の瞬間、熱く感じるようになった。

「…ノース、ちょっといいかな?」

 ノースは落ち着いた態度でユスティティアを見るが、時折視線を外していた。

 ユスティティアは何かを言おうとしたが、やはり話せなかった。いや、話せるわけもない。この一言はかなり危険だった。言えば、ノースは幸せになるかもしれないが、同時に多くのものを失うことになる。本来なら、天秤は見るまでもない結果になるだろうが、ユスティティアにはそんな単純なものではなかった。ユスティティアの天秤はほぼ平行だった。

「…、ごめん。やっぱり、なんでもない」

 ユスティティアが急に立ち上がるので、ノースは驚き、後ろに下がった。ちょうど後ろにあった棚にノースの腰がぶつかり、反射的に前へ出てしまう。ユスティティアはふらつくノースの腕を掴むが、右足をノースに踏まれ、腕を掴んだままベッドに倒れてしまう。


「ねぇ、ユスティ。この前の武器のこt——」

 千華がそうして2人の部屋に入ると、ノースがユスティティアを押し倒したようにしか見えなかったため、千華は無言で両手杖を構えた。

「ち、違うんだ!千華!待って!ストップ!ステイ!」

 その後、エレンディルまで来てなんとか騒ぎは収まった。部屋は荒れてはいたものの、壁や床に傷はなかったのが幸いだった。

「千華、いい加減人の話を最後まで聞け。あんたが短気になってどうするんだ」

「ごめんって。いやでも、あれは誰でも勘違いするでしょ?」

「にしてもだ」

 その後、千華の要件を聞いたが、前回ユスティティアが青桜に修理させた武器を回収し忘れていたので、千華が届けに来てくれたらしい。武器は完全に修復されて、新品のような光沢をしていた。

 そして散らかされた部屋もノースのおかげであっという間に片付いた。

「今日はもう寝よう。なんか、やけに疲れた」

「そうですか。なら、最後に二つほど聞いても良いでしょうか?」

「いいけど、どした?」

「漆黒の戦士のこと、報告しなくてもよろしいのですか?」

 確かにその通りだ。普通に考えてみても、敵が平気な顔して堂々とこの世界に、それも自分の部屋にまで来て話す始末だ。ならやることは一つだろう。

「…でも、それはいけない気がする…」

 しかし、この男は違った。この男はどこか心の奥底で、いや、体がそれを拒否していた。拒絶反応というと語弊があるかもしれないが、そのような感じだ。

「…何か理由があるのですか?」

「いや、ない。ないのだけど…、…ただ、そんな気がするだけ…」

「…『勘』ということですね」

 確かにこれはただの『勘』だ。特に根拠があるわけでもないし、都合が悪いわけでもない。文字通り根も葉もない理由だ。だが、ユスティティアは過去にそれは何度かあった。彼の『勘』はよく的中した。些細なことから大きなことまで、いろいろと当たることが多かった。だからこそ、自分の中では蔑ろにできなかったのだろう。

 ノースは反論しようとしたが、ユスティティアの意思を尊重するためにあえて言わなかった。

「…わかりました。ですが、決して警戒を怠らないでください」

「うん…、わかってる。…それで、もう一つは?」

 ノースはもう一つのことを話そうとしたが、やはりこちらも言えなかった。喉が詰まるような感覚だった。そして、吐き出さずに飲み込んでしまった。

「…いえ、やはりなんでもありません。すみません…」

「いや、いいよ。とりあえず、今日はもう寝ようか」

 そうして2人は熱い体のまま寝床についた。

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