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第三世界  作者: EMR
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第三世界#4

 #4


 今後



「さて、赤ちゃんも落ち着いたところで今後のことを話し合おうか」

 栞那の部屋にて落ち着きを取り戻した寺内修二と赤ん坊。

「ああ、すまないな、シャワーまで借りて」

 シャワーから戻った修二に栞那は眠っている赤ん坊を抱かせる。

「うん、そのことなんだけど、さっきも言ったとおりこの先インフラは止まる可能性がある」

「管理している人も皆人格の入れ替わりがあったとすれば、いずれその供給は止まる」

 冷静に状況を判断する佐々木に栞那が付け足す。

「そう、ガスについてはウチはプロパンだからしばらく大丈夫だけど、水と電気は止まるだろう。空いてる容器と浴槽には水を溜めたけど、この状況が長引けば自分たちの飲み水すら確保できなくなる」

「長引く……元には戻れないんでしょうか?」

 ひまりは怯えるように小さく呟く。

「……どうだろう?突然起こった現象だからね、また突然元に戻るってことも0%じゃないはず。でも……」

「……可能性は低いだろうね」

 ひまりを励まそうと言葉を出した佐々木に栞那は現実的な発言をする。

「………」

 不安そうに黙ってしまうひまり。

「既に犠牲になってしまった人も少なくない。元の身体が亡くなってしまった人がどうなるのかも気になりますね」

「元に戻すことが出来るとしても、それによって更なる犠牲者が出るかもしれないと?」

「可能性は無きにしも、ってところかな?」

「……やっぱり自分の身体との合流は急いだほうがよさそうだね。雨が降ってきたし、火事が消えてくれればこの先の犠牲者は減るだろうけど……」

 佐々木と栞那は討論を続ける。

「うん、この初動を切り抜けることが出来れば生存率は上がるでしょうね。どこの誰と入替るか、完全に運次第だけど」

「……この状況で、帰ることはできるんでしょうか?」

「ひまりちゃんは福岡だったね、身体の子がこっちに向かってくる可能性もあるし、行き違いになるかもしえない。身体との合流を優先するなら情報収集が先かもしれないね」

「でも、家族との合流を優先するなら福岡へ向かうべきかもね」

 栞那と佐々木はそれぞれにひまりへ指針を示す。

「うぅ……」

 悩むひまり。

「それで、寺内、さん?は、この先何かあてはありますか?」

「いや、俺も元は福岡に居たんだが、無理に戻ろうとは思ってねえな。特に身寄りがある訳でもねぇし、身を危険にさらして長距離を移動するより安全な場所に居たいと思ってる。ちびのことは抜きにしてもな」

「そうだね、寺内さん……修二は安全な場所で赤ちゃんの両親を待った方がいいかもね」

「ふっ、いきなり呼び捨てかよ」

「いや、なんか地元のヤンチャな後輩みたいな雰囲気なんだよね、キミ」

 栞那は茶化すように言う。

「お前らの倍くらい生きてるんだけどな、俺」

「寺内さん、その身体の人の情報は何か持ってないんですか?」

「ああ……」

 寺内は小さなバッグから書類を出して続ける。

「母子手帳と出生届だ」

 栞那は母子手帳の中身を確認する。

「ふむふむ。お母さんは鳥谷朱里しゅり、赤ちゃんは朱音あかねちゃんか……って、知っててちび呼ばわり?」

「ちび助はちび助だろう」

 寺内に雑に抱かれる朱音はそれでも心地よさそうに眠っている。

「かわいそう……」

 呆れる栞那。

「この連絡先の欄、固定電話の番号が書いてありますよ」

 栞那の横で母子手帳を見ていた佐々木が指差す。

「固定電話なら関係者がでる可能性があるんじゃないかな?」

「確かに、電話してみた?」

「いや……このスマホ……?ロックがかかっててな」

 寺内はスマホを取り出して見せる。

「あぁ……ん?これ指紋で解除できないの?」

 寺内の持つスマホに指紋認証がついているのに気付いた栞那はスマホの側面に指をあてるように促す。

「とりあえず指をあててみな」

「ん?ああ……?」

 慣れない手つきでスマホを扱う寺内。

「黒田さんは誰かに連絡とか出来た?」

「あぅ……私、最初に居た場所にこの子の荷物全部置いてきちゃって、スマホも何も持ってなくて……」

 ひまりは申し訳なさそうにしている。

「そうなの?番号分かるなら俺の使ってよ」

 佐々木は自分のスマホを差し出す。

「うぅ……覚えてないですぅ……」

「あちゃ~、現代っ子だねぇ」

 わざとらしく年寄りをまねた口調で言う栞那。

「ずびばぜん……」

「あはっw、責めてないよ。でも、身体の子の持ち物は確保した方がいいかもしれないよ。今の修二みたいに身体の持ち主との接点ができるからね」

「で、でも……私がいた場所……火事になっちゃいました……」

「あちゃ~」

「うーん、雨がやんだら元居た場所に行ってみようか?何か残ってるかもしれない」

 行詰るひまりに提案する佐々木。

「あ、あの……場所とかよくわからなくて…」

「黒田さんと会った場所付近のハンバーガー屋でしょ?そんな多くはないし、一緒に探すよ」

「い、いいんですか?」

「うん、福岡に帰るにしても、こっちで出来ることはしておいた方が良いだろうし、俺も特にアテがある訳じゃないから、手伝わせてよ」

「あ、ありがとうございます」

 協力を申し出る佐々木に表情が和らぐひまり。

「まあ、二人とも落ち着きたまえ」

 窓の外の様子を窺う栞那。

「予報だともうしばらく雨は続くようだ。降りやむころには外も暗くなるだろう?今日はもうおとなしくしておいて明日から動きだそうじゃないか」

「それは、確かに暗くなってからの行動は危険だけど……ここに泊ってもいいってことですか?」

「もちろんさ、栞那お姉さんが行き場のないキミ達を追い出す訳ないだろう?」

「か、栞那お姉ちゃん…!」

「ひまりちゃんも、平気?」

「え、あ、はい!ありがとうございます」

「修二もそれでいいね?」

「あ、姐御…!」

 佐々木をまねる修二。

「ある意味キミが一番心配だよ……」

 そんな話をしている時、寺内のスマホから呼び出し音が鳴る。

「!?……?」

 慌てる寺内。

「電話、出た方が良いと思うよ」

 電話に出るよう促す栞那。

「あ、ああ……」

 寺内が恐る恐る電話に出ると女性の声がした。

『……!もしもし!?朱里か!?…朱里!俺だ、浩人、声、違うけどさ、浩人だよ……朱里?そっちは大丈夫か?』

 電話の声に聞き耳を立てる佐々木と栞那は出生届に鳥谷浩人の名前を見つける。

「旦那さんですね」

 寺内は軽くうなずく。

「あー、すまないが、俺はお前の嫁じゃない」

『!?……やっぱり、そちらも入替ってますか?』

「ああ、気が付いたらこの身体だった」

『そうですよね……あの、朱音は?一緒に赤ん坊がいませんでしたか?』

「心配するな、無事だ、寝てるよ」

 心配する電話の主に穏やかに伝える。

『ああ……ありがとうございます』

「気にするな、成り行きだ」

『はい、ありがとう……あの!出来ればそちらと合流したいのですが、今は家ですか?』

 その質問を聞いて栞那が口を挟む。

「修二!スピーカーにして」

「はぁ?スピーカー?」

「ここからは皆で話そうよ」

「ん?ああ、任せる」

 寺内はスマホを栞那に預ける。

「それでは改めて」

 栞那はスピーカー設定したスマホをちゃぶ台に置く。

「えっと浩人さん?今二人と一緒に居る栞那です。今は私が借りてるアパートに朱音ちゃん含めて5人でいます」

『あ、はい、どうもお世話になります』

「熊本市○○に居るんですけど、今から来られます?」

『あ、すみません、実は自分鹿児島にいまして……今すぐの合流はできないので、自分の家に居てもらえればと思ってまして……』

「あぁ、なるほど」

 察したようにつぶやく佐々木。

「?」

『家は自由に使って頂いて構いませんので、しばらくウチを拠点にしてもらえませんか?できるだけ急いで戻りますので…』

「ウチっつっても場所がわからねぇぞ」

『えっ?』

「あぁ、大丈夫、そこは地元民に任せなさい。母子手帳の住所なら大体わかるので探してみます」

『助かります。それでは、今後連絡が取れなくなったとしても、近日中に必ず戻りますのでよろしくお願いします』

「はい、そちらもお気を付けて」

 通話を終了させる栞那。

「さて、やるべきことが出来てきたね」

「すまないな、こっちのことまで手伝ってもらって」

「いいって、旅は道連れ世は情けってね」

「栞那さん、俺も手伝いますよ」

 栞那は姿勢を正す。

「うーん、そうだね……少し整理しよう。まずアブ君とひまりちゃん」

「ひゃい」

 突然名前を出されて慌てて返事をするひまり。

「二人は街でひまりちゃんが最初に居たハンバーガー屋さんを探す」

 佐々木は落ち着いた返事をする。

「はい」

「見つけたとしても火事になった建物に入るのは危険だからね、安全第一で身体の子の持ち物は諦めることになるかもしれない」

「はい」

「それで、ついでで良いんだけどさ、街に居るかもしれない私の身体も気にかけてくれると助かるんだけど、いいかな?」

「いいっすよ、写真とかあります?」

「うん、後でアルバムから出しとくよ……それから、修二」

「うっす」

「キミは朱音ちゃんとお留守番しててくれるかい?」

「?……俺は鳥谷家に行くんじゃないのか?」

「いや、旦那さんは鹿児島だからね、今すぐ鳥谷家に行く必要はないだろう?この住所は少し遠いからさ、熱中症で倒れかけてたキミを連れて行くのは危ないかもしれない。私が一度自転車で行って確認してくるよ」

「確認?」

「火事になってたりしたら行くだけ無駄になるかもしれないだろう?その場合は旦那さんとの合流方法を変えなきゃだし、無事ならとりあえずオムツとか粉ミルクを持ってくるだけでいい。だからキミはゆっくり回復してな、身体は産後一カ月のママなんだから」

「なるほど、了解した。だが一ついいか?」

「ん?」

「俺に旦那はいねぇ、あれを俺の旦那みたいに言うのはやめてくれ」

「ああ、確かに……この中の誰の旦那でもないや」

「あ、あの……朱音ちゃんのパパさんなので、パパさんと呼ぶのはどうでしょう?」

 提案するひまり。

「ふふっ、そうだね、それでいいかい修二?」

「よかねぇよ!普通に名前で呼べよ!」

「ひぇっ!」

「こら修二、ひまりちゃんが怯えちゃうだろう?」

「いや、的外れなんだよな」

「す、すみません……」

「いいじゃないか、十人十色、色々な考えがあっても」

「は、はぃ」

「ところでさ、朱音ちゃんの人格は朱音ちゃんのものなのかな?」

「!?」

 佐々木の不意な疑問に動揺する一同。

「どうだろうね、ただの可愛い赤ん坊だけど…」

「見た感じは普通の赤ちゃんだけど、両親は二人とも人格の入れ替わりが起きてるでしょ。どんな規則で入れ替わりが起きているのかわからないけど、朱音ちゃんも誰かと入替ってる可能性がある」

「規則か……今は情報が足りないね、規則性があるのか、完全なランダムなのか、元に戻れるのか、このままなのか。その情報も集めなきゃだけど、もし朱音ちゃんの人格が別の人の身体に移っていたら……」

「心配ですね……」

「ああ……」

「…………」

 佐々木と栞那を議論を黙って聞いている寺内だった。

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