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第三世界  作者: EMR
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第三世界#18

#18


ぺんぎんさん



「たっだいま~!」

 栞那を筆頭に米田邸に戻ってきた4人。栞那と安田の2人が家の中へと姿を消したところで寺内は佐々木を引き留める。

「佐々木……」

「ん?」

 寺内の手には拳銃が握られている。

「うっ…またそんな危ないものお手々に持って……仕舞っておきなさい」

 冗談めかして拳銃を払いのける動作をする佐々木。

「朱音ちゃんも黒田さんも居るんだから、そんな物騒な物は隠しておいてよ」

「あぁそれなんだが、これ、お前が持っててくれないか?」

「えぇっ?なんでまたそんな……」

「俺がこのまま持っててもまた変な気を起こすかも知れねえから、お前に持っててほしい」

 拳銃を差し出されてたじろぐ佐々木。

「それにこれから遠出だろ?護身用に持っていけよ」

 半ば強引に押し付けられた拳銃を手にする。

「じゃ、あとは頼んだぞ~」

 寺内はどこか無責任に、しかし何か安心したようにして栞那達の後を追うのだった。

「えぇ~?」



 オフィスビルの一画。

 落ち着いた雰囲気の一室、その広い部屋の中で独り、縁陀は紅茶を傍らに置いて仕事をしていた。

「活動量が想定以下ね、誤差の範囲だけど……お姉様の件を考えればもっと低くても良いのかな?」

 紅茶を一口飲み資料を確認する。

「code3の発声は無し……まぁ、code3が発声されれば私の権限ではどうしようもありません。私にできるのはcall endを遅らせることくらい…」

 縁陀は小さなため息をつき、資料を読み進める。

「あぁ、お姉様、二日もお帰りになられていないのですね!?寝ている時くらい私やあのポンコツを使って下されば良いのに!」

 独りきりの部屋で情熱的な言葉を紡ぐ。

「しかしこれはお姉様の判断、私程度の者が口を挟むなどあっては……あぁ!」

 艶やかな仕草で頬を赤らめる縁陀。自分の世界に入り込む彼女のもとで着信音が鳴る。

「?」

 届けられた通知を確認した瞬間に不快感を前面に出した表情になる縁陀。

「あんのボケ野郎!大人しく職務を全うすることは出来ないの!?」

 激しくテーブルを叩きつけて立ち上がる。

「もう我慢できない!さすがに専横的すぎるでしょ!次の管理役ACPはもっと合理性のあるものにしてほしいわ!」

 憤慨しつつも自身の職務に忠実な縁陀は部屋を飛び出していくのだった。



 寺内を連れ戻し、一息ついて遠出の準備を済ませた一行は自転車に荷物を積み込んでいた。

「よっし!これで終わりだね」

 栞那は前カゴに座布団を敷き詰めた犬用の座席に安田を乗せる。

「きつくないですか?首相?」

「うむ、中々に良い」

「うん、首相のお墨付きも頂いたところで、福岡経由長崎への旅に出発しますか」

「は、はい!よ、よろしくお願いします」

 佐々木の自転車の後ろに乗るひまり。

 米田邸に残る面々が見送りに集まる。

「ひまり、気を付けて行くのよ」

「は、はい、京香さんも、お元気で」

「ええ、ありがとう。また会いましょうね」

「はい、先に福岡に帰ってますね」

 優しい笑みを浮かべるひまり。

「佐々木君も、みんなを頼むわよ」

「まかせて、2人ともちゃんと届けるよ」

「それから……これだけは憶えておいて。人に与えられたものは牙ではなく知恵だということを」

「?」

 その助言を聞いた佐々木とひまりはきょとんとしている。

「うん、憶えておくよ」

 詩織は栞那の肩に触れる。

「栞那さん、要の身体をよろしくね」

「はい、必ず無事に戻ってきます。留守番の間は修二、詩織さんと朱音ちゃんはキミに託す!」

 栞那はビシッと寺内を指名する。

「お、おう。何とかする」

「ふふっ、大丈夫よ。私も中身は若いんだし、体の調子も良いわ。朱音ちゃんの心配もしないで良いわよ」

「うむ、国内情勢を安定させるまで何とか耐えてくれ」

「ふふっ、そちらは頼みますよ、総理さん」

「ああ、任せたまえ」

 前カゴにちょこんと座って凛々しく背筋を正す安田。その姿に一同は小さく笑ってしまう。

「www」

「それじゃあ、そろそろ出発しようか」

 佐々木と栞那はペダルに足を乗せる。

「うん、じゃあ」

「行ってきます」

 4人は米田家を出発した。



 街を自転車で走る。

 荒れた場所で速度を落とすと注意を促す。

「おっと、この辺は歩いたほうがよさそうだ」

 先を行く栞那は自転車を降りて障害物を避けながら押して進む。佐々木とひまりも自転車を降りて栞那に続く。

 一同が進み続けると金属がぶつかり合う音が響く。

「?」

「何だろう?工事でもしてるみたいな音だね」

 立ち止まり、栞那は建物の陰に身を隠しながら恐る恐る音のなる方を確認する。その視線の先では複数の建設機械が荒々しく道路上の障害物を道のかたわらへと押し退けていた。

「おおう?あれはもしかして、道を整理してる?」

「ふむ、復興が始まったのか?」

「え?そうなの?」

 栞那が身を乗り出して安全に通してもらえるようにアピールする。

「すみませーん!通らせてもらっても良いですかぁ?」

 大きく手を振る栞那の姿に気が付いた機械の操縦士は運転を止める。合図としてホーンを鳴らした操縦士は窓から出した手をひらひらと振る。

「どこの人達だろう?話聞いてみます?首相?」

 栞那は自転車を押して進み、その後に佐々木とひまりが続いて歩く。4人が安全にその場を通ろうと足元を注視して進んでいると、一部の操縦士が態度を急変させてエンジンを吹かしだす。

 突然一台の重機が4人の行く手を阻むと中からバットを持った男が出てきて重機のフレームをガンガン叩いて注目を集める。

「おうコラてめぇ!何時ぞやのタックル小僧じゃねぇか!!」

「うげっ!?」

「あ、アウトローですぅッ!」

 建設機械を動かしていたのは以前佐々木とひまりを追いかけ回した悪漢達だった。

「おう兄弟!この野郎はあの時の!」

 4人は悪漢達に囲まれてしまう。

「こ、こいつ等!」

「な、なんなのこれ?どうして囲まれちゃうの!?」

 急に声を荒らげる男たちに焦る栞那。複数の重機と見知らぬ相手まで加わって威圧される4人は肩を寄せ合うようにして固まってしまう。

「この間は彼女に良いとこ見せつけてさぞかし気分が良かっただろうなぁ!?」

 バットを持った男はバットを振り回して佐々木に詰め寄る。

「あれ?これってなんかヤバい?」

「ヤバいっす……」

 佐々木は辺りを見渡し活路を見出そうとするが、通路は塞がれ足場が悪く突破は難しい。

 危うい事態に寺内から押し付けられた拳銃に手を伸ばす佐々木。

「ちょいちょーい、ストップー!」

 小柄な少女が悪漢達に割って入る。

「お前達さぁ、喧嘩は控えろって言われてるだろー?」

 どこかやる気の無い少女は煩わしそうに悪漢達をなだめる。

「そうは言ってもよぉペンネちゃん!そこのニガー!どえらいタックルを何度も何度もよぉ!」

「…あぁん?」

 ペンネと呼ばれた少女はバットを持った男の発言を受けて怒りをあらわにする。

「お前さぁ、私にも喧嘩売ってんのかぁ?」

「あッ、いや、別にそういう訳じゃ……」

 悪漢達はじりじりと後ずさる。

「ただ、なめられる訳にはいかねえと言うか、やられた分ケジメつけてやらねぇといけねえっていうか…」

 バットを持った男はどうにか食い下がろうとする。

「もういいからさぁ、ケジメはコッチでつけといてやるからさっさと作業に戻りな」

 少女の身体で睨みを利かすペンネに当初の勢いを失った悪漢達は口をへの字にして持ち場へと戻っていった。

「はぁ、メンドくさぁ」

 作業が再開されたことを確認したペンネは一言ぼやいた後、佐々木達に指示を出す。 

「あんた達、悪いんだけどちょっと付いて来てくれるかぁ?」

 手に持っている金属製の棒をカツンと地面に叩いて威圧する。

「あいつ等に言った手前ちょいと付き合ってもらうよ」

 そう言うと無防備にも背中を見せたペンネは一行を誘導して歩き出す。佐々木と栞那は頷き合いその後に続いていく。

 少し歩いたところで足を止めて振り返り、自転車に乗った安田を見るペンネ。

「それにしても大人しい犬だなぁ」

「?」

「あんな人数に囲まれてぇ、一度も吠えずに大人しく座っていられるなんて、大した奴だよなぁ」

「いやいや、単にビビッて動けなかっただけでしょ」

「失礼な、荒事となれば飛び出してお前達を逃がすことくらいは考えておったぞ」

 茶々を入れる栞那に自分の考えをぶつける安田。

「なッ!お前!?」

 ペンネは凛々しく言い放つ安田に驚く。

「お前、見かけによらず勇敢なんだなぁ」

「ふむ、勇敢という言葉は少し違うな。私は只、大人として、国政を担う者としての責任を持っているだけだよ」

「ふ~ん、なんかよく分かんねぇけどあんたは真面目な大人なんだなぁ」

「うむ、昨今の状況、人間の本性が見えやすい。しかしあの悪漢達のようなものばかりでないのも事実。キミにも助けられたな。ありがとう」

「まだ助けたって訳じゃねぇだろ、こっちにも色々とあるからなぁ。あの馬鹿共の意見も無下には出来ねぇし、とりあえずボスの所までは来てもらうぞぉ」

 そう言ってまた歩き出す。

「首相と初対面でびっくりしないなんて…」

「面白くないね」

 ペンネに聞こえないようにひそひそと話す佐々木と栞那。

「あぁ、そうだ」

 再び振り返ったペンネにびくりと肩を震わせる。

「私はペンネ。ペンネ・サンダース。よろしく、一応なぁ」

 ペンネは面倒くさそうに簡単な自己紹介をした。



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