第93話 向かった先は・2
「あ、兄ちゃんにハル兄ぃ、レナ姉ちゃんにマリー師匠、おかえり!」
と、扉の向こうからヒョッコリと顔を出しながらそう言ってきた幼い少年を見て、
(だ、誰だろう? もしかしなくても、あの子も春風と暮らしてるのかな?)
と、水音がそう疑問に思っていると、
「ただいま、ピート」
と、春風が笑顔でその幼い少年に向かってそう言ったので、
(あ、ああ、やっぱり!)
と、水音は更に衝撃を受けた。
その後、「お客様だ」とディックに言われて、「ピート」と呼ばれた幼い少年……以下ピートが家から出てきたが、水音ら勇者達とイヴリーヌ、そしてキャロラインら皇族達を見てそそくさとディックの後ろに隠れてしまい、そんなピートに向かって、
「大丈夫だピート。この人達は怖くないから」
と、ディックが優しくそう言うと、
「え、俺ら『怖い人』って思われてる?」
と、それを聞いていた進がショックを受けた。当然、
(ぼ、僕達、『勇者』として召喚された身なんだけど)
それは水音も同様だった。勿論、耕ら他のクラスメイト達までもショックを受けていた。
すると、
「そうだよピート。この人達は俺の故郷の人間だから」
と、ディックに続くように春風も穏やかな笑みを浮かべながら優しくそう言ってきたので、
「え、もしかしてハル兄の話に出てきた『勇者』様達なの!?」
と、ピートがそう驚きの声をあげると、
「どうもはじめまして! 『勇者』の暁鉄雄だよ!」
「同じく『勇者』の野守恵樹だよぉ。フレンドリーに『ケータ』って呼んでね」
「同じく『勇者』の、近道進! よろしくな!」
「遠畑耕だよ。同じく『勇者』ね」
「私、出雲祭! 『勇者』だよ!」
「アタシは晴山絆。同じく『勇者』な」
「わ、私、時雨祈。同じく『勇者』です」
「夕下詩織。『勇者』」
と、進ら8人の勇者達が、目をキラキラと輝かせながら、ピートに向かってそう自己紹介したので、それを見て、
(ああ、みんな『勇者様』って言われたのが嬉しかったんだなぁ)
と、水音がしみじみそう思った後、
「『勇者』の海神歩夢です」
「天上美羽。同じく『勇者』よ」
と、歩夢と美羽もそう自己紹介したので、
「同じく『勇者』の桜庭水音。よろしくね」
と、最後になってしまったが、水音もピートに向かってそう自己紹介した。
その後、ピートは水音達の自己紹介に「あ、あの……」と戸惑っていると、春風とディックに「大丈夫」と言わんばかりの表情で見つめられたので、意を決したかのようにゆっくりと深呼吸すると、
「は、はじめまして、ディック・ハワードの弟の、ピート・ハワードです。兄と共にハル兄……雪村春風さんのお世話になってます。よろしくお願いします」
と、水音達に向かってそう自己紹介した。
すると、
「あらあらぁ、これは丁寧な挨拶ねぇ!」
と、キャロラインがパァッと表情を明るくし、
「はじめまして、ストロザイア帝国皇妃のキャロラインよ。そして、息子のレオナルドに、娘のアデレード。よろしくねピートちゃん」
と、レオナルドとアデレードを巻き込む形でそう自己紹介すると、
「そして、わたくしはルーセンティア王国第2王女のイヴリーヌと申します」
と、イヴリーヌも一緒になってそう自己紹介した。
それを聞いて、ピートはハッとなると、
「ご、ごめんなさい……いえ、挨拶が遅れてしまい、申し訳ありませんでした! ピート・ハワードと申しましゅ!」
と、最後の方で舌を噛んでしまったがキャロライン達に向かって謝罪しながらそう自己紹介した。
そんなピートの様子を見て、
「な、なぁ雪村」
と、鉄雄が春風に話しかけてきたので、
「ん? 何?」
と、春風はそう返事した。その後、
「もしかして、あのピートって子も?」
と、鉄雄が小声でそう尋ねてきたので、
「うん。一緒に暮らしてるもう1人の『家族』みたいな存在……かな」
と、春風は若干気まずそうにそう答えると、
『お、お、弟第2号だとぉおおおおお!?』
と、鉄雄と他のクラスメイト達はショックで驚きに満ちた声をあげた。
それ聞いて、春風が何とも言えない表情になると、
「ゆ、雪村君!」
と、恵樹が春風の肩をガシッと掴んできた。
「な、何、野守君?」
と、肩を掴まれた春風が恐る恐る返事すると、
「ほ、他には? この子達以外に一緒に住んでる人達はいるの!?」
と、恵樹は春風の肩を掴んだままユッサユッサと揺らしてきた。
その質問を聞いて、
「そ、それは……」
と、春風が更に気まずそうな表情になっていると、
「……あの、誰か来てるんですか?」
と、家の扉の向こうから先程までのピートと同じように、1人の人物がヒョッコリと顔を出してきたので、
(え、えぇ! こ、今度は何だよぉ!?)
と、水音はもっと困惑の表情を浮かべるのだった。




