第92話 向かった先は
ーー接触したというか……今、一緒に住んでます。
春風のその言葉の後、水音達は馬車に乗って、とある場所へと向かっていた。
因みに、水音達はストロザイア帝国の馬車で、春風はレナや歩夢達と共にルーセンティア王国の馬車に乗っている。
帝国の馬車の中で、
(あれは、一体どういう意味なんだろう?)
と、水音は春風のあの時の言葉について考えている中、
「へぇ、あいつ仕事中はそんな感じなんだぁ」
「う……は、はいっす……」
「ねぇねぇ。雪村君、他にはどんな仕事してたの?」
「そ、それは……」
と、進達が春風と暮らしている少年、ディックに様々な質問をしていた。といっても、あまり深くというか詳しい内容は春風に口止めされているそうなので、今尋ねているのは、春風がこのフロントラルでどのような仕事をしてきたかになっている。進達に質問責めにされて、ディックがしどろもどろになっていると、
「み、みんな、もうそれくらいにしたらどうかな? 彼も困っているみたいだし……」
と、水音が「見ていられない」と言わんばかりにそう口を開くと、全員ハッとなって、
『ご、ごめん』
と、ディックに向かってそう謝罪したが、既にディックはゲッソリして今にも魂が口から出てきそうな状態だった。
それから少しすると、目的の場所着いたのか、馬車がピタッと止まったので、水音達は馬車から降りる事にした。
外に出ると、そこは住宅街のようで、周りには如何にも住人達の為に造られたかのような様々な家が建っていたので、水音達は「おぉ!」と感心していると、
「おーい、みんなー。こっちだよこっち」
と、先に降りていた春風がそう呼んできたので、水音達はすぐに彼の傍へと駆け寄った。
そして、
「はい、ここが目的地」
と、そう言った春風が指差した先には、かなり立派な造りをした大きな家があったので、
「うわぁ! でっけぇ家!」
と、進が驚きの声をあげて、
「ねぇ雪村君! もしかしてここが!?」
と、耕が大きく目を見開きながら尋ねると、
「ああ、俺達が今暮らしてる家だよ」
と、春風はニコッと笑いながら答えた。
その後、
「それで、一応聞くけど、家主は誰かしら?」
と、その家を見たキャロラインがそう尋ねてきたので、
「あ、一応……俺です」
と、春風は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら答えた。
その答えを聞いて、
(……ま!)
『ま、ま、マイホームだとぉおおおおおっ!?』
と、水音をはじめとしたクラスメイト達は驚きの声をあげた。
まさかの、春風の「持ち家です」発言に、
(そ、そんな、まさかマイホームまで手に入れていたなんて! も、もしかして、このままこの世界に永住するつもりなんじゃ!?)
と、水音が不安に満ちた表情になっていると、
「……あれ、ちょっと待って春風。今、『俺達』って言ってたよね? もしかして……」
と、何かに気付いたかのようにチラリとレナ見ながら、春風に向かってそう尋ねると、
「あー、うん。レナも……一緒です」
と、春風もチラリとレナを見ながら、気まずそうにそう答えたので、
(そ、そんなぁ! まさかの同棲だとぉ!?)
と、水音はショックでその場に倒れそうになった。
その時だ。
「フーちゃん」
「春風君」
歩夢と美羽が春風の肩をガシッと掴んで、
「「空いてる部屋……ある?」」
と、何やら低い声でそう尋ねてきた。
その質問に対して、春風はダラダラと滝のように汗を流しながら、
「あー、うん。あるけど……」
と、気まずそうに答えると、
「「お願い! 一緒に住まわせて!」」
と、歩夢と美羽が同時にそうお願いしてきたので、
(オイイイイイ! 2人共何いってんのぉおおおおお!?)
と、水音は大きく目を見開いた。
すると、
「ちょおっとぉおおおおおっ! 勝手な事言わないでよぉ! ていうか、アンタ達春風に近過ぎ! 本人も困ってるみたいだから離れなさいよぉ!」
と、レナがそう怒鳴りながら、歩夢と美羽を春風から引き剥がそうとしたが、
「「絶対に嫌!」」
と、2人はそう拒否しながら、春風にガシッとしがみついたので、
「こぉらぁあああああっ! 離れろって言ってるでしょおおおおおっ!」
と、レナは怒りで顔を歪ませながら、2人を強引に引き剥がそうとすると、
「あー! ずるい! 私も混ぜてよぉ!」
と、凛咲までもが参戦してきたので、
(うわぁ、師匠。相変わらず春風ラブなんだなぁ)
と、水音は遠い目をしながらドン引きした。
その際、水音の傍では、
「ねぇ、みんな。これ、どう思う?」
「当然、罪状に追加な」
「あはは、学級裁判が楽しみだねぇ」
と、進達が何やら不吉(?)な事を話し合ってるのが聞こえたので、
(ああ、春風。ご愁傷様)
と、水音は心の中で合掌した。
すると……。
ーーガチャリ。
(ん? 何だ?)
春風が「家主」をしているという家の扉が開き、
「あ、兄ちゃんにハル兄ぃ、レナ姉ちゃんにマリー師匠、おかえり!」
と、1人の幼い少年が顔を出してきた。




