第91話 皇妃と皇子からの質問
その後、春風は水音達に、自身とレナの関係を必死になって説明した。
「……という訳で、俺と彼女とは『仲間』である事以外は何もないから」
と、最後にそう締め括った春風だったが、その説明に納得出来てないのか、進らクラスメイト達はジトーッと疑いの眼差しを春風に向けていた。しかし、
(ま、君ならそうじゃないかとは思ってたけどね)
と、ただ1人、水音だけは納得の表情を浮かべていた。
そう、水音は知っている。故郷「地球」で、師匠こと凛咲と春風の3人で世界中を飛び回ってた時、春風は数多くの女性や少女達から好意を向けられていたが、春風はそれら全てやんわりと拒否し、あくまでも「友人」として彼女達から距離をとっていた。
どうしてそこまで彼女達から距離をとっているのか気になった水音は、ある時春風にその理由を尋ねると、
「俺にはさ、どうしても裏切りたくない人達がいるんだ」
と、春風は水音にそう答えた。
そして現在、その時の事を思い出した水音は、
「……ま、その辺りのガードは固い君の事だから、そこは信じるよ」
と、春風に向かってそう言い、それを聞いた春風はホッと胸を撫で下ろした。
しかし、次の水音の言葉に、春風はショックを受ける。
「でもね春風。無事、先生や他のクラスメイト達と合流したら……君、『学級裁判』にかけられる事になったから」
「ええぇ!? な、何で!?」
ショックでそう問い詰めてくる春風に対して、水音は黙ってとある方向を指差し、それを見た春風は「ん?」とその方向を見ると、
「「いやん」」
「……あぁ、そういう事ね」
そこには恥ずかしそうに顔を真っ赤にした歩夢と美羽がいたので、春風は頬を引き攣らせながら納得の表情を浮かべた。
すると、
「ちょっと良いかしら」
と、キャロラインがそう口を開いたので、春風は「ん?」とキャロラインに視線を向けると、
「春風ちゃん、さっきの説明の中に、レナちゃんとは『1週間ほど別行動していた』って言ってたわよねぇ。ルーセンティア王国を出た後、一体何処で何をしてたの?」
と、キャロラインは真面目な表情でそう尋ねてきた。
それに春風が「う……」と答え難そうにしていると、
「レオンちゃん、お願い」
と、キャロラインはレオナルドにそう言い、
「わかりました」
と、レオナルドはそれに従って、1歩前に出た。
「春風君」
「は、はい」
「単刀直入に聞くけど……君は『勇者召喚』に巻き込まれてこの世界に来たんじゃないよね?」
と、春風に向かってそう尋ねたレオナルド。そんな彼を見て、
(れ、レオナルド様、ここでその質問をしますか)
水音はゴクリと唾を飲んでいると、
「……仰ってる意味がわかりませんが」
と、春風は目を細くしながらそう言った。
しかし、そんな彼を前にしても、レオナルドは話を続ける。
「君がギデオン・シンクレアを破ったという話を聞いた後、僕達は君がどういう存在なのかを話し合った。そして、その話し合いの結果……君は『勇者召喚』に巻き込まれてこの世界に来たのではなく、異世界『地球』の神々によってこの世界に送り込まれた人間なのではないかという疑念が浮かび上がったんだ」
「……面白い話ですね。ですが、仮にその話が事実だとして、地球の神々は一体何の目的でそのような事をしたのでしょうか?」
と、レオナルドの話を聞いて、今度は春風がレオナルドに向かってそう尋ねると、
「目的は1つ。違法な勇者召喚によって『とんでもない事態』に陥ったこの世界と地球……2つの世界を救う為だ」
と、レオナルドはそう答え、それを聞いたイヴリーヌと2人の騎士、そして鉄雄、恵樹、詩織は「えぇ!?」とショックを受けたが、レオナルドはそんな彼女達に構わず、
「そして君は、その目的の為にルーセンティア王国を発ち、とある存在と接触した」
と、話を続けると、チラリとレナを見ながら、最後に「違うかな?」と締め括った。
その視線を受けて、レナはレオナルドを警戒していると、春風は「ふぅ」とひと息入れて、
「……申し訳ありませんが、今この場で全てを話す事は出来ません。ですが1つ言えるとすれば……ええ、確かに接触はしました」
と、レオナルドに向かってそう言い、その言葉を聞いて、
(は、春風……やっぱり君は!)
と、水音はタラリと汗を流した。当然、水音達だけでなく、鉄雄、恵樹、詩織を除いたクラスメイト達も同じ反応をしていた。
そんな中、
「まぁ、接触というよりも……」
と、春風はそう言いかけると、申し訳なさそうな表情でチラッとレナを見て、
「……良いよ、春風」
と、レナがコクリと頷きながらそう言うと、春風は「わかった」と返事して、
「接触というか……今、一緒に住んでます」
と、目の前のレオナルドに向かって「はは……」と笑いながら言い、その言葉を聞いて、
『……え?』
と、水音らクラスメイト達と、イヴリーヌと騎士2人、そして皇族達は一斉に首を傾げた。




