第85話 「レナ・ヒューズ」、現る
遅れました。
「春風から離れろぉ!」
と、怒鳴るようにそう叫びながら、水音達の前に現れた1人の少女。
突然の事に水音達は一瞬ポカンとなったが、
「れ、レナ、何でここに?」
と、キャロラインに抱き締められた状態の春風が、少女に向かってそう尋ねたので、それを聞いた水音は、
(……そうだ思い出した! 確かあの子は!)
と、目の前にいる少女が何者なのかを思い出した。
2ヶ月前、春風をルーセンティア王国から……自分達のもとから連れ出した、ハンターの少女を。
「レナ……ヒューズ」
と、水音が周りに聞こえない程の小さな声で彼女の名前を呟いていると、
「ねぇ、フーちゃん。あの子、フーちゃんを連れ出した子だよね?」
「ていうか春風君。今、あの子の事名前で呼んでなかった?」
と、歩夢と美羽が春風に向かって、黒いオーラを纏った笑みを浮かべながらそう尋ねてきたので、
「2人とも、質問したい気持ちはわかるけど、今はそれどころじゃないから」
と、水音は「不味い!」と感じて、2人に「待った」をかけた。
その後、
「あらあら、あなたがレナ・ヒューズちゃんね? いつからそこにいたのかしらぁ?」
と、キャロラインが明らかに挑発するかのように、目の前の少女、レナに向かってそう尋ねて、更にその後、
「あ、アニキ……」
(ん? 誰だ?)
と、開かれた扉から1人の少年が恐る恐る顔を出してきて、春風が何やら親そうにその少年の名前を呼ぶと、再び歩夢と美羽が黒いオーラを纏わせた笑みを浮かべながら、少年との関係について尋ねてきたので、
「ふ、2人とも! 今はそんな場合じゃ……!」
と、水音が大慌てで2人を落ち着かせようとしていると、
「離れろって言ってるんだ!」
と、レナの怒声がその場に響き渡ったので、キャロラインを除いたその場にいる者達全員がビクッとなった。
彼女の尋常じゃないその様子に、
(な、何だ? 胸が、凄く苦しい……!)
と、水音は本当に苦しそうに自身の胸に手を当てていると、
「あらぁ、そんな怖い顔したら折角の可愛い顔が台無しよぉ?」
と、キャロラインは再び挑発するかのように、レナに向かって穏やかな笑顔でそう言い、
「れ、レナ。俺は大丈夫だか……!」
と、春風レナに向かって「大丈夫」と言おうとしたが、それを遮るかのようにキャロラインは春風を強く抱き締めたので、春風は思わず「むぎゅ!」と呻くと、
「貴様ぁ!」
と、レナは怒りで顔を歪ませながらそう叫んだ。
それを見て流石に「いかん!」と判断したオードリーは、すぐにキャロラインを注意しようとしたが、それよりも早く、
「丁度良かったわぁ、あなたに聞きたい事があるの」
と、キャロラインレナに向かってそう言ったので、それを聞いたレナは「あぁ?」と首を傾げると、
「あなた、世間を騒がせてる『邪神』達の関係者なの?」
と、キャロラインは穏やかな笑顔のままレナに向かってそう尋ねた。
その瞬間、
「……あ?」
彼女の中で、「プチン」と何かが切れた音がしたのを感じたのか、
「キャロライン様! その質問は……!」
と、春風がそう口を開いたが、
「今、なんて言った?」
と、キャロラインに向かって静かにそう尋ねてきたので、
「だ、駄目だ! レナぁ!」
と、春風はレナに向かってそう叫んだが、
「あら、『邪神達の関係者なの?』って聞いただけなんだけど?」
と、キャロラインは悪びれもなくそう答えて、
「キャロライン様! それ以上は駄目ですぅううううう!」
と、水音はそう叫ぼうとしたが、未だに胸が苦しいのか、それを実際に声に出す事が出来なかった。
そして、
「おぉまぁえええええええっ!」
と、レナが怒りに満ちた表情でそう叫ぶと、彼女の体が白い光に包まれた。
その後、その白い光が消えた時、
「私のお父さんとお母さんを『邪神』と呼んだのかぁあああああああ!?」
と、そう叫ぶ異形の存在が、水音達の目の前に現れた。
それは、「人間」の形をした白い狐だった。
だが、着ている服は先程までいたレナという少女が着ていたものと同じだったので、
(……まさか……レナ・ヒューズ、なのか?)
と、水音は目の前にいるのが、狐に変身したレナという考えに至り、
『へ、変身したぁ!?』
と、進らクラスメイト達がそう驚きの声をあげた。
(ま、まさか! これが、『悪しき種族』の1つ、『獣人』だというのか!? ていうか、今、彼女はなんて言った!?)
と、目の前にいる変わり果てたレナを見て、水音が混乱する中、
「こぉろすぅううううう!」
と、怒りに満ちた形相をした彼女が、キャロラインに向かって飛びかかり、
「くぅ! レナぁ!」
と、春風は強引にキャロラインから離れて、レナの前に飛び出した。
それを見て、
(は、春風!)
と、驚いた水音は、
「春風!」
と、歩夢と美羽と共に春風に駆け寄ろうとした。
その時、
「コォラ!」
「っ」
「がはっ!」
と、レナの背後に2つの人影が現れて、彼女を思いっきり床に押さえつけた。
それを見て、「え?」と誰もが目をパチクリとさせる中、
「大丈夫、ハニー?」
と、聞き覚えのある女性の声がしたので、水音は「え?」と声がした方へと視線を向けると、
「し、師匠ぉ!?」
そこには、この世界にいるはずのない女性、元の世界「地球」で、春風と水音が「師匠」と呼ぶ女性、
(何で……何でここに……陸島……凛咲師匠がいるんだぁ!?)
陸島凛咲がいた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ませんでした。
本当にすみません。