第83話 「春風」・2
今回は、いつもより少し短めの話になります。
雪村春風。
2ヶ月前にルーセンティア王国を出て行ってからなんの音沙汰も無かったその少年と、こうしてフロントラルで無事に再会出来た事によって、水音、歩夢、美羽の3人は涙を流した。
そんな春風との感動(?)の再会からすぐに、
「おうおう、見せつけてくれるじゃあねぇか」
という声がしたので、4人が「ん?」と声がしたの方へと振り向くと、そこには明らかに良からぬオーラを纏った進達がいた。
「よぉう雪村ぁ、久しぶりだな」
「あ、暁君……」
「再会早々3人も泣かしちゃうなんてねぇ」
「の、野守君……」
「しかも、その内2人は女の子ときたもんだ」
「こ、近道君……」
「男の風上にも置けないねぇ」
「と、遠畑君……」
「へぇ、『ユメちゃん』に『美羽さん』、『水音』ねぇ」
「い、出雲さん……」
「学校の外だとそんな風に呼んでるんだなぁ」
「は、晴山さん……」
「……」
「なんか言ってください時雨さん!」
「……ふ」
「あぅ。ゆ、夕下さん……そういう意味じゃないんですが」
目の前にいる進達を見て、ダラダラと滝のように汗を流す春風。そんな春風を、
(うわぁ、すっごい戸惑ってるぅ)
と、水音は涙を流しながらも、ニヤリと笑いながら見ていると、
「え、えっとぉ、水……いや、桜庭君、まさかとは思うけど、先生も来てたりは……?」
と、春風恐る恐るそう尋ねてきたので、それに水音が答えようと口を開きかけたが、
「ここにいるのは私達だけだよ。先生は他のクラスメイト達とルーセンティア王国に残ってもらってる」
と、それより早く歩夢がそう答えたので、
「え、あ、あぁそうですか、海神さ……」
と、その答えを聞いた春風がそう返事しようとすると、
「悪いけど春風。みんなもう知ってるから」
と、水音は涙を拭いながらそう言ったので、それに春風が「え?」と反応すると、
「うん。春風君がいない間に、私達は先生やクラスのみんな、それとウィルフレッド陛下達に、あなたがどういう人間かや、あなたの身の上、そして私達との関係も、全部説明させてもらったから」
と美羽も涙を拭いながらそう説明した。
それを聞いて、
「……嘘でしょ?」
と、春風が再び滝のように汗を流していると、
「本当だよ。だからフーちゃん……もう、みんなの前で猫被らなくて良いんだからね」
と、歩夢が涙目になりながらそう言ってきたので、
「ふえ!? い、いや、別に猫なんて……」
と、春風は驚きながらもそう否定しようとしたが、ジィッと春風を見つめる水音をはじめとした周囲の人達の視線に耐えられなかったのか、
「……ああ、もう面倒だ」
と、春風はボソリとそう呟くと、「ふぅ」とひと息入れて、
「わーかったわーかったよぉ! ほら、これで良いんだろ!?」
と、先程まで丁寧な口調とは違って、かなり乱暴な口調でそう叫んだ。
そのあまりの変わりように、水音、歩夢、美羽の3人を除いた周囲の人達がキョトンとする中、
(ああ、この感じ。やっぱり春風だ)
と、水音は穏やかな笑みを浮かべながら、心の中でそう呟くと、
「はは、今ので漸く再会出来たって感じになったよ」
と、春風に向かってそう言った。その言葉を聞いて、
「喧しいわ! 目立つのが嫌だから『大人しい生徒』を演じてたのにぃ……!」
と、春風が水音に向かってそう怒鳴ると、
「でも、私はこっちのフーちゃんの方が好きだよ?」
「うん、そうね」
と、歩夢と美羽が笑顔でそう言ってきたので、
「え、それって男っぽいって事?」
と、春風は目をキラリと輝かせながらそう尋ねたが、
「「うーん……内緒!」」
と、2人にそう即答されてしまったので、
「えぇ、そんなぁ!」
と、春風はガックリと肩を落とした。
そんな春風を見て、
(あはは。良いザマだね、春風)
と、水音は意地の悪そうな笑みを浮かべた。




