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ユニーク賢者物語外伝 〜青き戦鬼の章〜  作者: ハヤテ
第6章 「友」との再会
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第82話 「春風」


 「こんにちはタイラーさん。そして、春風さん」


 「どうも」


 「よう」


 開かれた扉の先にいる若い金髪の男性と、彼と共に現れた人物を見て、オードリー、フレデリック、ヴァレリーがそう挨拶した。


 水音達がこのフロントラルに来た、1()()()()()であるその人物ーー雪村春風の姿を見て、


 (あ、あぁ春風。本当に……ここにいた)


 と、水音は泣きそうな表情になりながらも何か言おうとしたが、心の準備が出来てなかったのか、もしくはそれ以外の理由の所為なのか、何を言えば良いのかわからず、ただ呆然とするだけだった。


 そして、


 「ゆ、雪村……」


 「本当に、雪村君……だよね?」


 「……」


 それは進らクラスメイト達も同様……なのだが、


 「……え?」


 と、目の前にいる春風がそう小さく声をもらすと、それに反応したのか、


 「あ……」

 

 と、美羽が春風を見てそう声をもらすと、


 「っ」


 歩夢がその場から駆け出して、


 「フーちゃん!」


 と、そう叫んで、春風にガバッと抱き付いた。


 その勢いが強かったのか、抱き付かれた春風は後ろへと仰け反り、


 (あ、やばい! このままじゃ倒れる!)


 と、水音はそう思って動き出しそうになったが、


 「ふん!」


 と、春風はどうにか踏ん張ったので、


 (おぉ、良かった! 凄い、春風!)


 と、水音は心の中でそう呟きながらガッツポーズをとった。


 その後、


 「ゆ……ユメちゃん!? え、ユメちゃんなの!?」


 と、抱き付いてきた歩夢をニックネームらしき呼び名でそう呼んだ春風に対して、


 「う……うわぁあああああん! フーちゃんだよぉ! ホントに、フーちゃんだよぉ!」


 と、歩夢は大声で泣き叫んだ。


 更に、


 「俺の事、わかるの? 俺、結構変わってるのに?」


 と、春風が歩夢に向かってそう尋ねると、


 「わかるもん! だって、フーちゃん可愛いもん!」


 と、歩夢は泣きながらそう即答したので、それを聞いた水音は思わず「ブッ!」と吹き出した。当然、それは進達も同様だった。


 そんな感じの会話が続くと、


 「『なぁんで』?」


 というなんとも怒りに満ちた声が聞こえたので、水音は「え?」と恐る恐るその声がした方へと振り向くと、


 「て、天上…‥さん?」


 そこには、明らかに「怒り」のオーラを纏わせている美羽の姿があったので、水音だけでなく進達までもが、ダラダラと滝のように汗を流しながら、ガクガクと全身を震わせていた。


 その後、美羽は怒り顔でズンズンと音を立てながら春風に近づき、


 「今まで何してたのよ!? 2ヶ月よ! 2ヶ月も音沙汰なしで、一体何してたのよ!?」


 と、怒鳴りながら問い詰めた。


 その質問を聞いて、


 『う、うわぁ……』


 と、周囲が美羽の勢いに若干怖気付き、


 「え、えーそれはそのぉ……」


 春風がどうにかその質問に答えようとすると、


 「っ」


 と、美羽も歩夢と同じように春風の胸に飛び込んで、


 「ホントに……心配……したんだから!」


 と、震えた声でそう言ってきたので、


 「……ご、ごめん、美美羽さん」


 と、春風は美羽に向かってそう謝罪した。


 そんな様子の春風達を見て、


 「うわぁ、何あれ?」


 「どう見ても泣かしてるよね?」


 「なんてうらやま……いや、けしからん」


 と、進達がそう口々にそう言う中、


 (……ああ、そうだよな)


 と、水音は心の中でそう呟くと、


 「春風」


 と、春風名前を呼び、その場から歩き出してゆっくりと彼に近づいた。


 それを見て、


 「お、おい、水音?」


 「水音君?」


 と、進と耕が水音に声をかけたが、


 (僕が春風に向かってやるべき事、言うべき言葉なんて、最初から決まってたじゃないか)


 と、水音はそれを無視して春風に近づいた。


 その後、


 「み、水音……」


 水音は春風のすぐ傍に立つと、


 「……っ」


 ゴスッ!


 「ぐふ!」


 水音は無言で、春風の腹部に思いっきりパンチを入れた。


 それを見て、進達が「あ!」と驚く中、


 「み、水音君……一体何を……?」


 と、春風が苦しそうにそう尋ねると、


 「この、馬鹿野郎!」


 水音は震えた声で、春風に向かってそう言った。


 その言葉を聞いて、進達が再び「あ……」と声をあげていると、


 「はは……そう、だね。ごめん」


 と、春風は苦笑いしながら、水音に向かってそう謝罪した。

 

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