第81話 そして、「彼」は現れた
「思い出した、春風と……」
「「「「「雪村(君)と戦ってた人だ!」」」」」
と、ヴァレリーを見てハッと思い出したかのようにそう言い放った、水音、進、耕、祭、絆、祈の6人。
そんな彼らの様子を見て、周囲の人達は目をパチクリとさせていると、
「あーそういえばヴァレちゃん、雪村春風とギルド総本部で戦ってたっけ?」
と、キャロラインは穏やかな笑みを浮かべてポンと手を叩きながら、ヴァレリーに向かってそう尋ねた。
すると、ヴァレリーはハッとなって、
「え、ちょ、ちょっと待て! 何でアンタがそれ知ってんだよ!?」
と、とても皇族相手にしてはいけない乱暴な口調でそう尋ね返すと、
「だぁって、その時の映像持ってるから」
と、キャロラインは穏やかな笑みを崩さずにそう答えた。
その答えを聞いて、「は?」と首を傾げるヴァレリーを他所に、キャロラインは「えーっと……」と言いながら懐に手を入れてゴソゴソし出し、そこからとある小さなものを取り出した。
(あ、あれは……)
と、大きく目を見開いた水音が見たのは、見覚えのあるシンプルな装飾が施された小さな水晶玉で、
「ゲッ! ソ、ソレは……!」
と驚くヴァレリーを前に、
「はい、再生!」
と、キャロラインはそう言ってその水晶玉に自身の魔力を流した。
次の瞬間、水晶玉が眩い光を放ち、それが収まると、水晶玉の上に立体映像のようなものが現れた。
それを見て、
「うわぁ! な、何だよコレ!?」
と、鉄雄が驚きに満ちた声をあげると、
「僕らの世界で言う『ビデオカメラ』の機能を持った魔導具だよ。今キャロライン様がやったように、あーして魔力を流す事で、動画を撮ったり後で見る事が出来るんだ」
と、耕が鉄雄に向かって丁寧に説明した。
するとそこで、
「へぇ、そうなんだ。で、今、映ってるコレは何なの?」
と、今度は恵樹がそう尋ねてきたので、
「……そこにいるヴァレリーさんって人と、春風が戦った時の映像だよ」
と、今度は水音が、目の前で再生されたその映像を見つめたままそう答えた。
その答えを聞いて、「え、何それ!?」と驚く恵樹を他所に、キャロラインは水晶玉に魔力を込めながら、その時の映像を流し続けた。
それから暫くして、
ーーそ、それまで! 勝者、ハル!
と、そのセリフを最後に、キャロラインは映像を止めた。
その瞬間、
「す、スッゲェエエエエエ! 雪村スッゲェエエエエエエエッ!」
「うわぁ、雪村君ってあんなに強かったんだぁ」
「……びっくり仰天」
と、映像を見終わった鉄雄、恵樹、詩織の3人は、そこに映し出されたあまりの出来事に、目をキラキラとさせていた。
そして、
「「「……」」」
それは、歩夢と美羽、更にはイヴリーヌも同様で、彼女達は何も言わなかったが、鉄雄達と同じく目をキラキラとさせていた。
そんな鉄雄達を、水音や進達は生暖かい目で見つめていると、
「な……な……何でこんな映像をアンタが持ってんだよぉ!?」
と、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしたヴァレリーが、キャロラインに向かって胸ぐらを掴む勢いで問い詰めてきたので、
「こっちで働いてるジュリアちゃんが撮ってたみたいでね、撮り終わった後に帝都のギルド支部のライリーちゃんに送ったのよぉ」
と、キャロラインは「うふふ……」と笑いながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「ジュリアアアアアアア! なんという事をぉおおおおお!」
と、ヴァレリーは頭を抱えながらそう叫び、
「ああ、そういえばこんな事もありましたねぇ」
と、フレデリックは懐かしいものを見たかのような表情でそう言い、最後に「ほほほ」と笑った。
その後、キャロラインは映像を消すと、
「それでフレディちゃん、彼は今どうしてるのかしら?」
と、フレデリックに向かってそう尋ねた。
その質問に、フレデリックは「む?」と反応した後、
「ああ、彼でしたら、今はこちらにいるヴァレリーさんのレギオン『紅蓮の猛牛』と、もう1つの大手レギオン『黄金の両手』のメンバーとして、日々活動中ですよ。確か、予定ですと今日はその『黄金の両手』の方で仕事中の筈ですが……」
と、キャロラインに向かってそう説明していた、まさにその時、トントンと扉をノックする音と共に、
「市長、連れてきました」
という声がしたので、
「どうぞ」
と、オードリーは扉の向こう側に向かってそう言った。
そして、
「失礼します」
というセリフの後に扉が開かれると、そこには3人の人物がいた。
1人はオードリーの「秘書」と名乗ってたスーツ姿の女性。
もう1人はフレデリックと同じようにロングコートをマントのように羽織った20代くらいの若い金髪の男性。
そして最後に、飾り気のないシンプルな服装をした、黒髪の美少女。
その少女を見て、水音は思わず、
「あ……」
と、小さく声をもらすと、
「こんにちはタイラーさん。そして、春風さん」
と、オードリーは穏やか笑みを浮かべながら、スーツ姿の女性を除いた2人の人物に向かってそう挨拶した。




