第79話 「市長」との邂逅
「皆様、ようこそ『中立都市フロントラル』へ」
突然現れたスーツ姿の女性に、その場にいる誰もがポカンとなった後、
「あ、あの……あなたは?」
と、水音が恐る恐る女性に向かってそう尋ねると、
「ああ、これは失礼しました。わたくしは、このフロントラル市長、オードリー・クロフォードの秘書をしている者で、本日は皆様を市長のもとへと案内する役目を担っております」
と、「秘書」と名乗った女性は深々と丁寧なお辞儀をしながらそう答えた。
その答えに水音ら勇者達が困惑する中、
「あらあら、それはご苦労様ですね。それじゃあ、早速案内お願いするわ」
と、キャロラインが穏やかな笑みを浮かべながらそう言ったので、
「かしこまりました。それでは皆様、わたくしについて来てください」
と、秘書の女性はそう言ってその場から進み出し、それに続くように、
「じゃあみんな、行くわよ」
と、キャロラインもその場から歩き出し、水音達も彼女の後を追った。
向かった先は先程キャロラインが説明した「市役所」の中で、水音達は中の様子やそこで働く職員達の働く姿を見ながら、秘書の女性の後をついていった。
そして、暫く廊下を歩いていると、大きな扉の前で止まり、
「皆様、こちらになります」
と、秘書の女性が水音達に向かってそう言うと、すぐに扉に向き直って、
「市長、お客様をお連れしました」
と、扉をトントンと叩きながら、その向こうにいるであろう「市長」に向かってそう言った。
(こ、この扉の先に、この都市の市長が……)
と、水音が心の中でそう呟いていると、
「わかりました。どうぞ」
と、扉の向こうから女性のものと思われる声がしたので、その声を聞いた秘書の女性は、
「失礼します」
と言って、その扉を開けた。
扉の先にあったのは、如何にも「偉い人の仕事部屋」と言えるくらいの広くて立派な部屋で、その部屋の奥にある立派な机の向こうに、1人の女性の姿があった。
明らかに秘書の女性よりも年上と思われる立派なスーツを来たその女性は、水音達を見てニコリと笑うと、
「ようこそ、『中立都市フロントラル』へ。私は、このフロントラルの『市長』を務めております、オードリー・クロフォードと申します」
と、深々と頭を下げながらそう自己紹介した。
それを聞いて、
(こ、この人が、ここの市長さん……)
と、水音は緊張のあまりゴクリと唾を飲んだ。それは、このオードリーという女性が、只者ではないと感じたからだ。水音だけでない、進らクラスメイト達も、オードリーを見てタラリと汗を流した。
そんな状況の中、キャロラインは静かに前に出てオードリーの前に立つと、
「もう、ドリーちゃんったら、そんな堅苦しい挨拶なんていらないわよ! 久しぶりに会ったんだからぁ!」
と、オードリーをニックネームのような呼び方でそう呼ぶと、明らかに友達感覚でそう話し出した。
それを聞いて、
(ちょ、キャロライン様ぁ! 何をしてるんですかぁ!?)
と、水音ら勇者達はギョッと大きく目を見開いていると、オードリーはゆっくりと顔を上げて、「はぁ……」と溜め息を吐くと、
「あなたという人は相変わらずですね、キャロライン皇妃様」
と、呆れ顔でキャロラインに向かってそう言った。
その言葉を聞いて、
「ちょっとぉ、堅苦しいのはやめてって言ってるでしょ! 昔みたいに、『キャリー』って呼んでよ! 私とドリーちゃんの仲じゃない!」
「『昔みたいに』って、1度もあなたをそう呼んだ覚えはありません。というか、いつも言ってますが、私の方が年上なんですけど」
「関係ないよ! ドリーちゃんはドリーちゃんだもん!」
「……あなた、今幾つなんですか? 一応『皇妃』で、『母親』ですよね?」
と、明らかにお知り合いといった感じの2人のやり取りを見て、
ーーえ、何この状況、どゆ事!?
と、水音ら勇者達がオロオロしていると、レオナルドが静かに水音の傍に近づいて、
「僕ら皇族も『ハンター』として登録しているという話は知ってるよね?」
と、小声でそう尋ねてきたので、それを聞いた水音は「は、はい」と返事すると、
「母上とあちらにいるオードリー市長は、若い頃にハンターとしてコンビを組んで活動していたんだ」
と、レオナルドはチラリと言い合いを続けているキャロラインとオードリーを見ながらそう説明した。
その説明を聞いて、水音、進、耕、祭、絆、祈の6人は、
「「「「「「ま、マジですか」」」」」」
と、皆、口をあんぐりとさせた。




