第75話 勇者達の不安
お待たせしました。
そして、お久しぶりです。
外伝新章の始まりです。
エルードに存在する2つの大国、「ルーセンティア王国」と「ストロザイア帝国」。
その2つの大国の丁度中間には、「中立都市フロントラル」というどの国にも所属しない大型都市がある。
そして今、大国の1つであるストロザイア帝国から、その中立都市フロントラルに向かって数台の馬車が走っていて、その中の1台に、別の世界からルーセンティア王国に召喚され、とある事情でそのルーセンティア王国からストロザイア帝国へと渡った「勇者」と呼ばれている6人の少年少女達が乗っている。
彼らの目的は、中立都市フロントラルにいるというもう1人の異世界人の少年に会う事だ。
自分達と同じ世界の、同じ国の住人で、同じ学校に通うクラスメイトの1人であるその少年は、共にルーセンティア王国に召喚された身でありながら、「勇者」の称号を持たず、それ故に自分達のもとから去った……という話だったが、つい最近になって、その少年が実はとんでもない存在だという事実を知り、その真偽を確かめる為に、彼らは帝国の皇族達と共に、少しの間世話になった帝都を出発したのだ。
最も、その少年がフロントラルにいるかはわからないが。
さて、そんなフロントラルに向かう馬車の中では、その「勇者」こと6人の少年少女達が静かに座っていた。
帝都を出発してから数日、馬車の旅という事もあって、最初は皆、表情を明るくしていたが、フロントラルに近づくにつれて、段々と静かになっていた。
全員、何処か緊張している様子で、特にその中の1人である少年、水音は不安そうな表情をしながら、もうずっと馬車についている窓の外を無言でジィッと見続けていた。
そんな様子の水音に、他の5人は何か話しかけようとしたが、自分達も不安になっているのか、誰1人水音に声を掛けようとしなかった。
その時だ。
「皆様、フロントラルが見えました」
と、馬車の外から御者がそう声をかけてきたので、水音ら6人はハッとなって、すぐに馬車の窓を開けて少しだけ顔を出し、前方を見た。
まだ距離はあるが、そこには大きな壁のようなものが見えたので、
「あの、もしかしてあそこがですか?」
と、水音が御者にそう尋ねると、
「はい、あそこが『中立都市フロントラル』です」
と、御者は前を向いたままそう答えた。
その答えを聞いて、
(あそこが、フロントラル……)
と、水音が心の中でそう呟くと、
「あそこに、いるんだよね?」
と、「勇者」の1人である少年、耕がそう口を開いたので、
「……ああ、あそこにいるんだ。雪村が」
と、もう1人の少年、進がそう返事した。
その言葉に全員が黙り込むと、
「……いるかな、雪村君」
と、今度は「勇者」の1人である少女、祭が、不安そうな表情で言ったので、
「いるさ。ていうか、いなきゃ困るっての」
と、もう1人の少女、絆が、真っ直ぐ前方を見ながらそう言った。
その言葉を聞いて、
「……そうだよね。いなきゃ僕達が困るよ」
と、水音がそう口を開くと、
「水音君」
と、残りの1人である少女、祈が、水音に声をかけてきたので、
「ん? 何、祈さん?」
と、水音が返事すると、
「雪村君に会うの、怖い?」
と、祈が心配そうな表情でそう尋ねてきたので、それに水音は「あ……」と声をもらすと、
「……そうだね。正直言うと、怖いよ。春風に会った時、どんな顔をすれば良いのか。何を言えば良いのかって」
と、自身の今の気持ちを語った。
その言葉を聞いて、進達が表情を暗くすると、
「そろそろ到着しますよ」
と、御者がそう言ったので、
「あ、はい、わかりました」
と、水音はそう言うと、進達と共に馬車の窓を閉めて、全員降りる準備に入った。
だが、
(……もうすぐ、春風に会うんだ)
水音の表情は、暗いままだったが。
どうも、ハヤテです。
長い間投稿をお休みしてましたが、今日から外伝新章の始まりとなります。
こちらも、本編に負けないくらいの面白い話を書いていきますので、皆様、何卒よろしくお願いします。




