第72話 そして、「僕ら」は決意する・2
「「中立都市フロントラルだ」」
と、そう目的地を告げたヴィンセントとウィルフレッドに、
(そこに行けば……春風に会える?)
と、水音がそう感じていると、
「あら、駄目よ」
(……え?)
そう言ったキャロラインに、水音だけでなく進達までもが彼女に視線を向けた。
その数秒後、
「あのぉ、何故そのフロントラルという都市に……?」
と、爽子がそう尋ねてきたので、
「あ、ああそれはだな、昼間の報告の後、フロントラル付近で戦ったというのと、最後に『フロントラルのハンター達に立ち塞がれた』と言っていただろう? それ故にもしかしたら春風殿は今フロントラルにいるかもしれないという考えに至ったのだよ」
「そ、そうそう。だから、そいつを確かめる為にフロントラルに向かおうって事なんだけどよぉ……」
と、ウィルフレッドとヴィンセントが少しおろおろしながらそう答えたが、
「だから、駄目よ2人とも」
と、再びキャロラインがそう言ってきたので、
「な、何故に!?」
と、ヴィンセントがそう尋ねると、
「だってぇ、あなたこの間エレンちゃんと一緒にルーセンティアに行ったばかりじゃないのぉ。おまけに皇帝としての仕事もいっぱいある訳だし」
と、キャロラインは「ずるいずるい!」と言わんばかりに頬を膨らませながらそう答えた。
その答えを聞いて、
(あ、ああそういえば……)
と、水音は納得の表情を浮かべ、
「いや、だからってよぉ……って、ちょっと待て。まさかお前……」
と、ヴィンセントが何かに気付いたかのようにそう尋ねてきた。
その質問に対して、
「そうよぉ。だから今度は、私とエレンちゃんとアーデちゃんの3人で行くわ」
と、キャロラインは満面の笑みを浮かべながらそう答えた。
そんな彼女の後ろで、
「え、待って母様。私は?」
と、「ん?」となったエレクトラがそう尋ねると、
「エレンちゃんはお留守番よ」
と、これまた満面の笑みでそう言われてしまったので、
「そんなぁ!」
と、エレクトラはショックでがっくりと肩を落とした。
水音達はそんな様子のエレクトラを見た後、すぐに彼女に近づいて、
『よしよし……』
と、優しく慰めた。
その後、
「あの、キャロライン殿。ヴィンスは何となくわかりましたが、何故私まで?」
と、今度はウィルフレッドがそう尋ねてきたので、
「あら、だってウィルフちゃんも一国の主なのよ? だったらそんなにほいほいと国を出るものじゃないわぁ」
と、キャロラインは「何を言ってるの?」と言わんばかりの表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
(あ、ああ。確かに)
と、水音が納得の表情を浮かべている間に、
「え、ではどうすれば……」
と、ウィルフレッドがそう考えだしていると、
「あ、あの!」
とそれまで黙って話を聞いていた歩夢が、美羽と一緒に「はい」と手を上げたので、
(え、海神さん? 天上さん?)
と、水音は「ん?」と首を傾げていると、
「私、フロントラルに行きます!」
「私も!」
と、2人はそうはっきりと言ったので、
(ああ、そうなるよな)
と、水音はまた納得の表情を浮かべた。
するとその時、
「でしたら、わたくしが一緒に行きましょう」
と、同じくそれまで黙って話を聞いていたもう1人の少女がそう言ったので、水音は彼女を見て、
(あ、あの子は確か、第2王女のイヴリーヌ様)
と、思い出したかのようにはっとなった。
その後、イヴリーヌが共に行く理由を話すと、
「なるほど、イヴリーヌの気持ちはよくわかった。しかし、現段階ではここで全てを決める事は出来ない。明日、他の勇者達を呼んで、彼らとよく話し合おうと思う」
と、ウィルフレッドがそう提案してきたので、イヴリーヌは「わかりました」と返事した。
さて、そんなウィルフレッド達の様子を見て、
「うふふ。これで向こうは決まりましたねぇ」
と、キャロラインは笑いながらそう言うと、水音達の方を向いて、
「それで、水音ちゃん達はどうするの?」
と、尋ねてきた。
顔は穏やかな笑みを浮かべていたが、その瞳は凄く真剣そのものだったので、水音は一瞬怯んだ後、すぐに進達を見た。
(あ……)
「「「「「……」」」」」
全員、水音を見て強い意志を秘めた笑みを浮かべていたので、
「……そうだよな」
と、水音はくすっと笑いながら、小さな声でそう呟くと、キャロラインの方を向いて、
「勿論、僕達もフロントラルに行きます!」
と、進達と同じように強い意志を秘めた笑み浮かべながら言った。
その際、
「うぅ、私はお留守番かぁ……」
「大丈夫、俺もだから……」
と、エレクトラとヴィンセントはしょんぼりしていたが、水音達はそれをスルーした。




