第70話 見えてくる「真実」・3
お待たせしました、本日2本目の投稿です。
「もし知ってて、我々に『勇者召喚』をやらせたとしたら、神々は『この世界がどうなっても構わない』と考えているという事になる」
と、暗い表情でそう言ったウィルフレッドに、
「まじかよ……」
「そんな……」
と、ヴィンセントをはじめとした周囲の人達は、皆ショックで顔を真っ青にした。
そして、
(何だよそれ……何なんだよそれ!)
と、心の中でそう呟いた水音は、怒りで体をぶるぶると震わせながら、拳をぐっと握り締めた。当然だろう、自分達異世界の人間を巻き込んでおきながら、実は「世界などどうでもいい」と考えているかもしれないのだから。
(そんな連中の所為で、春風は大変な事に巻き込まれてしまったっていうのかよ!?)
と、ぐっと唇を噛み締め、今にも血が滲み出そうなくらい拳を握る力を強くする水音。そんな水音を、
「水音……」
「み、水音君……」
と、エレクトラと祈は心配そうな目で見つめた。
するとそこで、ヴィンセントが口を開く。
「うーん、そう考えると、次は雪村春風の行き先って事になるな」
その言葉に周囲が「え?」となると、
「お父様。それは、どういう意味ですか?」
と、アデレードが尋ねてきたので、
「いやな、話の流れ的に雪村春風はこの世界の神……って、この場合は五神な。で、その五神を信用出来ないって考えてるとなると、そいつはルーセンティアを出たら何処に向かうのかなって考えたんだけどよぉ」
と、ヴィンセントは軽いのりでそう答えたので、
(ああ、確かにそうだ)
と、水音は納得の表情を浮かべ、握っていた拳を解いた。
その時だ。
「それについては、確証はないが1つだけ心当たりがある」
と、ウィルフレッドがそう口を開いたので、
「ああ? 一体何なんだいそりゃあ?」
と、今度はヴィンセントがそう尋ねると、
「水音殿、『レナ・ヒューズ』という少女を覚えているか?」
と、ウィルフレッドは水音に向かってそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、水音は「え?」と一瞬ぽかんとなったが、すぐに首を横に振るった後、
「は、はい、覚えてます」
と答えた。
「ん? おいウィルフ、そいつって確か、雪村春風を連れ出したっていうハンターの女の子だよな?」
と、再びヴィンセントがそう尋ねると、ウィルフレッドはこくりと頷きながら答える。
「そうだ。そしてこれもギデオンの報告にあがっているのだが……彼女は『獣人』だそうだ」
その答えを聞いて、水音をはじめとした周囲の人達は、
『えぇっ!?』
と、驚きの声をあげた。
そんな状況の中、
「何だと? ウィルフ、そいつはまじな話なのか?」
と、ヴィンセントが更にウィルフレッドに向かってそう尋ねると、
「ああ。ギデオン報告によると、春風殿との戦いの最中に現れ、目の前で『変身』したそうだ。因みに、彼女は狐の獣人だという」
と、ウィルフレッドは「いや、もしかしたら同名の他人かもしれないが」と付け加えながらも真面目な表情でそう答えた。
その最中、
「な、なぁ、『獣人』って確か……」
「う、うん、蘇った『邪神ループス』の加護を受けた、『悪しき種族』の1つだよ」
と、進と耕は小声でそう話し合った。
そして、2人に続くように、
「……ああ、そうだ。確か彼女、春風を連れ出す前に、『私なら春風の望むものを用意出来る』って言ってたっけ」
と、水音もぼそりとそう呟いた。
その呟きが聞こえたのか、
「うむ、その通りだ水音殿。そして、もしも彼女が、『邪神』について何かを知ってるとしたら……?」
と、ウィルフレッドが水音に向かってそう尋ねてきたので、
「まさか……邪神に会いに行った?」
と、水音は大きく目を見開きながらそう答えた。
その答えを聞いた時、
「ちょ、ちょっと待てよ! あいつ確か、俺達と同じ日にハンターになったんだよな!?」
と、進がそう尋ねてきたので、水音はこくりと頷きながら答える。
「そうだ。そしてその日は、僕達のもとを去ってから1週間後の事だった」
そう答えた次の瞬間、
「ま、待って、水音君! それって……」
と、祈がそう口を開いたので、
「うん。確証はないけど、春風はもう既に、『邪神』と接触したって事になるね」
と、水音は再びこくりと頷きながらそう答えた。