表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク賢者物語外伝 〜青き戦鬼の章〜  作者: ハヤテ
第1章 勇者召喚
7/186

第6話 「少年」は拒否する


 「すみません、やっぱ無理そうなので、ここを出て行く許可をください」


 『な、何ぃいいいいいいいっ!?』


 (お、遅かったぁあああああああっ!)


 春風のまさかの「拒否」に、その場にいる者達全員が驚愕した。ただし、水音だけは違う方向で。


 その「拒否」の言葉を聞いて、誰もが口をあんぐりとしていると、


 「……ちょ、ちょっと待ってくれ! 今のは一体どういう意味だ!?」


 と、ハッと我に返ったウィルフレッドが春風に向かってそう尋ねてきて、それからまた少しすると、


 「ま、待ってくれ雪村君!」


 「何、正中君?」


 「ど、どうしたんだ一体!? ここへきてどうして『無理』なんて言うんだ!? しかも『出て行く』なんて正気なのか!?」


 と、同じくハッと我に返った様子の純輝が、春風の両肩を掴んでユッサユッサと揺すりながら問い詰めてきた。


 そんな状況の中、水音は春風を見て、


 (春風、本当に一体どういうつもりなんだ!?)


 と、今にも泣きそうな表情でオロオロしていると、春風は申し訳なさそうな表情で、


 「正中君。いきなりこんな事を言って、本当に申し訳ないとは思ってるよ。だけど、俺はここにいるべきじゃないって事に気付いてしまったんだ。何故なら……」


 と言いながら、春風は水音を含む周囲の人達にも見えるように、


 「俺、『勇者』じゃないんだ」


 と、()()()()を見せた。


 そして、水音は()()を見た瞬間、


 「……え?」


 と、小さく声を漏らした。


 称号:「異世界人」「職能保持者」「巻き込まれた者」


 それは、春風自身の「称号」だった。


 その称号を見て、


 (な……何で? 何で、春風が?)


 と、水音がショックを受けていると、


 「ま、『巻き込まれた者』……だと? ど、どういう事だ!? 何故、そのような称号が!?」


 と、ウィルフレッドがショックで顔を真っ青にしていると、春風は「フ……」と小さく笑って、


 「いやぁ実はですね、先生やクラスのみんなが『勇者召喚』で出来た光に飲み込まれた時、俺教室のカーテンにしがみついて必死に抵抗してたんですよねぇ。俺が思うに、多分その時何か不具合みたいなのが起きてこの称号を手に入れたんだと思います」


 と、ふざけた感じで「アハハ」と笑いながら答えた。


 その後、春風は未だに顔を真っ青にしているクラリッサに向かって、


 「こうなってしまったのは俺に原因がある訳でして、あなたは何も悪くないんです、どうか気にしないでください」


 と言うと、最後に「すみません」と頭を下げて謝罪した。


 その後、「ふざけるなぁ!」と白と青の法衣(?)姿の男性がそう喚き、彼に続くように周囲の人達も「そうだそうだ!」「この無礼者が!」と春風に向かって怒鳴り散らして、それを見たウィルフレッドが「やめるんだ騎士達よ!」と慌てて止めに入るが、


 「申し訳ありませんが、幾ら怒鳴ろうと、俺は『勇者』じゃありませんので、『勇者』を求めているあなた方を助ける事は出来ませんし、例え『勇者』の称号を持っていたとしても、俺はここを出て行きますし、あなた方を助ける気はありません」


 と、春風は周囲を見回しながら、はっきりとそう言ったので、


 (何で……何でだよ春風ぁ!?)


 と、水音は春風を問い詰めようと近づこうとしたが、それよりも早く、


 「どうしてここまであの人達の『願い』を拒否するんだ!?」


 と、純輝が春風の肩を揺すりながらそう尋ねてきたので、水音は「うっ!」とその場に立ち止まった。


 その問いに対して、春風は真面目な表情で口を開く。


 「正中君、先生、みんな。勝手な事を言って本当にごめんなさい。だけど、俺はこの人達を信じる事が出来ません。さっきも言いましたけど、例え『勇者』の称号を持ってたとしても、この人達を救うなんて無理ですよ」


 「ど、どうしてだ? どうして!?」


 「俺さ、今日まで色んな人に……まぁ、数えるくらいしかいないけど、とにかく、色んな人達に言われてきた『言葉』があるんだ」


 「そ、その『言葉』って?」

 

 「『生きろ』『生きて幸せになってくれ』」


 (っ! そ、その言葉は……!)


 その瞬間、水音の脳裏に、とある『記憶』が浮かび上がった。


 それは、春風と「師匠」と行った、「とある異国の地」で遭遇した「とある『事件』」の記憶で、その事件の最中に、「とある人物」が()()()()に、春風に向かってそう言った言葉だった。


 水音はその時の事を思い出して、


 「……僕は」


 と、小さい声でそう呟くと、苦しそうに自身の胸を掴んだ。


 そんな水音を他所に、春風は更に話を続ける。


 「俺はこの言葉を送ってきた人達の事がとても大切で、俺はその人達に応えたいって思ってる。そして、この言葉のおかげで、俺、叶えたい『夢』が出来たんだ。でも、それは故郷である『地球』でないと叶える事が出来ないんだ。だから、その『夢』を奪ったこの人達を、俺は絶対に許せないんだ」


 と、そう言った春風に、水音は勿論、純輝や爽子、クラスメイト達、そしてウィルフレッドら王族達は何も言えないでいた。


 その後、春風は自身の肩から純輝の手を剥がすと、


 「そういう訳で申し訳ありませんが、俺はあなた方に力を貸す事は出来ませんので、ここを出て行く許可をください」


 と言って、ウィルフレッドに向かって深々と頭を下げた。


 それを見た水音は、


 「は、春風……」


 と、小さく呟きながら春風に近づこうすると、


 「ふ、ふざけるなぁあああああああっ!」


 と、1人の若い騎士(?)が、春風に向かって突撃してきた。

 


 




 

謝罪)


 大変申し訳ありません。誠に勝手ながら、「ユニーク賢者物語」本編の幾つかの話の内容に修正を加えさせてもらいました。


 特に第3章で新たに登場させた「グラシア・ブラックウェル」さんですが、少し考えた末、苗字を「ブラックウェル」から「ブルーム」へと変更しました。


 本当にすみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ