第66話 「彼」の背後にいる存在(もの)
「陛下、うるさい」
「うぎゃあああああああっ!」
と、ヴィンセントがキャロラインに頭部を鷲掴みにされている一方、水音ら6人の勇者達はというと、
「……」
「は、はは。すげぇな雪村」
「う、うん。そうだね」
「て、ていうか……ほんとに雪村君なのかなって思うんだけど……」
「そ、そうだな。実は別人なんじゃないかって思ってるのは、あたしだけかな?」
「だ、大丈夫、私も思ってるから」
と、何も言えずにいる水音を除いて、皆、口々に春風がやらかした事について戦慄していた。
ただ、そんな中、
(春風。一体君は、何処まで強くなる気なんだ? そこまで強くなって、何をしようとしているんだ?)
と、水音は強くなっている春風を思い浮かべながら、心の中で「?」を浮かべていた。
そんな事を考えていると、
「だはぁあああああ。やっと解放された」
と、漸くキャロラインの鷲掴みから解放されたヴィンセントが、「はぁ、はぁ……」と肩で息をしていた。その横では、「うふふ……」と穏やかに笑うキャロラインの姿もあった。
その後、ヴィンセントが椅子に座ると、
「ふぅ。しっかし、すげぇ奴だよなぁ『雪村春風』って奴は」
と、鏡型魔導具に映ったウィルフレッドに向かってそう言ったので、
「そうだな。ギデオンの話を聞いて、初めて会ったあの時から強くなっていると私も思ってるよ」
と、ウィルフレッドは「はは……」と苦笑いしながらそう返した。
すると、
「でもよぉ、気になんねぇか?」
と、ヴィンセントがそう尋ねてきたので、
「? 何をだ?」
と、ウィルフレッドが尋ね返すと、
「何でそいつだけ『固有職能』なんだ? 水音達は全員普通の職能なのによぉ」
と、ヴィンセントが更にそう尋ねてきたので、
「む、言われてみれば……確かに妙だな。それに彼だけは『勇者』の称号がなく、代わりに『巻き込まれた者』などという称号も持っているし……」
と、ウィルフレッドは「おや?」と首をかしげた。
そして水音も、
(あ! 確かにそういえば……!)
と、今になって思い出したかのようにはっとなった。
ヴィンセントの言葉に、ウィルフレッドは少し考え込むと、
「うーん。確か初めて会ったあの日、彼は『不具合によるものかも』と言ってたような……」
と、難しい表情でそう言った。
「は? 不具合?」
「ああ。『勇者召喚』が行われたあの日、彼は1人それに抵抗していたから、その所為で何か不具合が起きたのかもと言っていたのだ」
と、説明したウィルフレッドの言葉に、
(ああ、そう言えば春風、『カーテンを掴んだ』って言ってたな)
と、水音もその時の事を思い出した。そして、それは進達も一緒だった。
そんな水音達を他所に、
「おいおい、何だよそれ。それだけで固有職能に目覚めるって? そんな偶然みたいな事ある訳ねぇから。お前だって知ってるだろ? 『神々』から授かる戦闘系職能や生産系職能とは違って、固有職能は生まれた時から持ってるものだって。この世界で生まれた人間ならまだしも、異世界人の雪村春風がそんなもんに目覚める事ってあんのかよ。それこそ、神様の仕業っつうか、奇跡みたいなもんだ……」
と、ヴィンセントがそう言いかけたその時、
「今、なんて言いました?」
と、水音が周りに聞こえるようにそう口を開いたので、その場にいる者達は一斉に水音に視線を向けた。
「ど、どうした水音……?」
と、エレクトラが水音に向かってそう尋ねると、
「ヴィンセント陛下、今、なんて言いました!?」
と、水音はエレクトラを無視してヴィンセントに向かってそう尋ねた。
尋常ではない様子の水音に、ヴィンセントはビビりながらも、
「え、えっと……『奇跡みたいなもん』って……」
と、答えたが、
「違います、その前です!」
と、水音は更に尋常ではない様子でまたそう尋ねてきたので、
「え、えーっと……『神様の仕業』……と」
と、ヴィンセントは更にビビりながらそう答えた。
その答えを聞いて、水音は「まさか……」と考え込むかのようなポーズをとった後、ゆっくりと口を開いて、
「……確実とは言えませんが、春風に固有職能を授けた存在なら、心当たりがあります」
と、ヴィンセントに向かってそう言ったので、ヴィンセントだけでなくキャロラインら皇族達どころか進らクラスメイト達も、皆、『えぇ!?』と驚いたように水音を見た。
その後、
「……水音殿。それは、どのような存在なのだ?」
と、ウィルフレッドが水音に向かってそう尋ねると、
「僕達『勇者』と春風の故郷、『地球』の神々です」
と、水音は真っ直ぐウィルフレッドを見てそう答えた。




