第65話 衝撃的な話・4
「ウィルフレッド、詳しい話を聞かせろ」
と、ヴィンセントに真面目な表情でそう言われて、ウィルフレッドはこくりと頷くと、こちらも真面目な表情で話を始める。
「事の始まりは、断罪官の中から『裏切り者』が出てきたところだった」
「何? 裏切り者とな?」
「ああ。後で調べた事なのだが、何でも異端者の討伐中に、隊員の1人がその異端者の味方をして、所属していた小隊の隊長と隊員達をその手にかけたそうだ。あ、因みにその小隊の隊長と隊員達は全員生きてるからな」
「へぇ、そんな事が。で、それからどうなった?」
「うむ。その後、ギデオンと彼の部隊に、その裏切り者と異端者の討伐任務が与えられ、捜索の末に中立都市フロントラル付近で目的の人物達を発見し、神の名の下に討伐しようとしたところ、その場に雪村春風も居合わせていたので、彼も討伐しようとしたそうだ」
「え、おい、それ……」
と、そこまでヴィンセントが言いかけた、まさにその時、
「ちょっと待ってください」
と、それまで黙って話を聞いていた水音が口を開いたので、
「む、どうした水音?」
と、ヴィンセントがそう尋ねると、
「……それって、つまりあれですか?」
と、水音がそう答えた瞬間、雰囲気ががらりと変わったのを感じたのか、周りにいる進達はぶるっと体を震わせた。
しかし、水音はそんな進達を無視して、
「そのギデオンって人は……春風を殺そうとしたと、そう言うのですか!?」
と、ウィルフレッドに向かって怒鳴るようにそう尋ねた。その瞬間、水音の雰囲気が更に変わったのを感じたのか、ヴィンセントがすぐに立ち上がろうとしたが、
「水音君!」
と、傍にいた祈が、水音の腕にがしっとしがみついた。そんな祈に続くように、
「おい、水音!」
「駄目だよ水音君!」
「落ち着けって!」
「そうだよ!」
と、進、耕、絆、祭も、水音の体にがしっとしがみついたので、
「……ごめん、みんな。もう、大丈夫」
と、落ち着きを取り戻したのか、水音は祈達に向かって穏やかな口調でそう言った。
そんな水音達を見て、
「ふぅ。やれやれ……」
と、ヴィンセントが小さな声でそう呟くと、
「で、そっから先は?」
と、ウィルフレッドに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、ウィルフレッドは特に表情を変える事なく答える。
「当然、雪村春風……いや、春風殿と呼ばせてもらおうか。彼は生き残る為に、その裏切り者と異端者と手を組み、ギデオンと彼の部隊に戦いを挑んだのだ」
「ほー。で、その春風って奴の戦闘スタイルは? どうやってあのギデオンに勝ったっていうんだ?」
「うむ。ギデオンの報告によれば、彼は炎、水、土、風の4属性の魔術と近接戦闘術を駆使してギデオンに対抗したそうだ」
と、そう答えたウィルフレッドに、ヴィンセント目を輝かせながら、
「まじで!? すげぇなおい!」
と、感心した。
ヴィンセントだけではない、何故か皇女アデレードも、無言ではあるが目をきらきらと輝かせていた。
だが、そんなヴィンセントとアデレードとは対照的に、
「よ、よ、4属性って……」
「わ、私、2つしか使えないのに……」
と、耕と祈はショックで膝から崩れ落ちそうになっていた。
2人は魔術を扱う術師系の戦闘系職能を持っていて、耕は土属性の魔術の扱いに特化した「地導師」で、祈は水属性の魔術に加えて強力な光属性の魔術を操る「司祭」である。
つまり、耕が使える魔術は1種類だけで、祈は2種類という事になる。
それ故に、4種類の魔術を操るという春風の存在に、2人はショックを受けたのだ。
それはさておき、ヴィンセントは春風の戦闘スタイルを聞いて目を輝かせた後、
「で、で、その後そいつはどうなるんだ?」
と、表情を変える事なくそう尋ねたので、ウィルフレッドも表情を変える事なく答える。
「うむ。激しい戦いの末、彼は『化身顕現』という見た事もない魔術を使ってきたそうだ」
『化身顕現!?』
「え、何それかっこいい! それは、どんな魔術なんだ!?」
「うむ。ギデオンの報告と、こちらにいる勇者達の話を合わせた結果、どうやら『伝説上の生き物に変身する』という、春風殿のオリジナル魔術だそうだ」
『お、お、オリジナル魔術ぅ!?」
「何それかっこいい! で、『伝説上の生き物』っつたな!? どんな生き物に変身したんだ!?」
「名前は『フェニックス』といって、『不死鳥』とも呼ばれている鳥型の生き物だという」
「「な、な、何それ超かっこいい!」」
と、ヴィンセントだけでなく何故かアデレードも一緒にそう叫んだが、
「「な、な、何それ超かっこいい……」」
反対に、耕と祈はショックで顔を真っ青にした後、その場にがくりと膝から崩れ落ちた。
それに気付いて大慌てで2人を慰める水音達だが、そんな彼らを無視して、
「そ、そ、それで、その後どうなったんだ!?」
と、ヴィンセントがかなり興奮した様子でそう尋ねると、
「う、うむ。彼はその『フェニックス』に変身すると、それでギデオン……断罪官大隊長最大の奥義『聖光轟雷剣』を真っ向から打ち破り、大隊長の証である『聖剣スパークル』を、真っ二つにしたそうだ。当然、ギデオンにも相当なダメージを与えてな」
と、ウィルフレッドは若干怯えながらも真っ直ぐヴィンセントを見てそう答えたので、
「ふおおおおおおおっ! まじかぁあああああああっ!? 超かっこいいいいいいいっ!」
と、もの凄く興奮した様子でそう叫び、
「うん、凄くかっこいい……」
と、アデレードは目を更にきらきらと輝かせた。
ただ、その後、
「陛下、うるさい」
「うぎゃあああああああっ!」
どす黒いオーラを纏った笑顔のキャロラインに、ヴィンセントはがしっと頭を掴まれたが。




