第63話 衝撃的な話・2
お待たせしました、本日2本目の投稿です。
「なぁにぃ!? ギデオン・シンクレアがやられただとぉおおおおおおおっ!?」
執務室に響き渡るヴィンセントの絶叫。
彼の表情は、かなりの驚きにみちていた。
ヴィンセントだけではない。キャロライン、レオナルド、アデレード、エレクトラ達皇族も、まさかの事態に驚きを隠せないでいた。
そしてそれは水音達も同様だった。
「な、なぁ水音……」
と、水音の隣に立つ進が、肘でちょんちょんとつつきながら、小さな声で声をかけてきた。
「な、何?」
と、水音がそれに返事すると、
「い……今、ウィルフレッド陛下が言ってたのって……」
と、進が恐る恐るそう尋ねてきたので、
「う、うん。『断罪官』の現・大隊長の事だよ」
と、水音はたらりと冷や汗を流しながら答えた。
水音ら勇者達は、「断罪官」という部隊自体は知っていた。当然、「最強」と云われている現・大隊長の、ギデオン・シンクレアの存在も、だ。
というのも、実は水音達がまだルーセンティア王国で暮らしていた時に、座学の授業で五神教会の幹部らからその存在を教えられていたのだ。
ただ、その頃の水音達は、「断罪官」という部隊については、「世界にあだなす『異端者』達と戦う為の部隊」と幹部らから教わっていたので、
(へぇ、そういう部隊もあるんだなぁ……)
と、水音自身は特に深く考えてはいなかった。
しかし、ストロザイア帝国で彼らの「真実」を知り、水音はショックを受けた。
確かに、断罪官が「異端者」を相手にしているのは事実だが、ルーセンティアで暮らしてた時の水音は、
(きっと、警察みたいに悪い奴らを捕まえたりしてるんだろうなぁ)
と、考えていたが、彼らがしているのは、「粛清」という名の「殺戮」と知り、それが水音のそれまでの考えを打ち砕いた。
また、彼らは「異端者」だけでなくその周囲の人間、それもちょっと関わっただけの人間さえも、老若男女問わず殺害の対象としている事を知って、それが水音に更なる衝撃を与えたのだ。
その瞬間、水音の脳裏に浮かんだのは、召喚された初日の出来事、そう、ルーセンティア王国の騎士達を相手に暴れる春風に向かって放たれた、
「そこにいる、『勇者』になれなかった不届なはみ出し者を抹殺するのだぁ!」
五神教会教主、ジェフリーの言葉だった。
あの出来事があってから、水音に……いや、もしかしたら「勇者」全員に、五神教会、もっと言えばジェフリーに対する不信感が芽生えていた。当然だろう。本来無関係な自分達を巻き込んでおいて、都合が悪くなったら「殺せ」など、絶対に許される筈がないのだ。ただ、その時はウィルフレッドら王族達が、全力で謝罪してくれたのだが。
とにかく、水音は断罪官の真実を知った瞬間にその時の事を思い出して、怒りに震えていた事があったが、進達のおかげでどうにか気持ちを落ち着かせる事が出来た。
そして現在。
ウィルフレッドの話を聞いて、
(まさか、ここで断罪官が登場するなんて……)
と、水音はごくりと唾を飲みながら、心の中でそう呟いたが、
(……って、あれ? 今の話、僕達に何の関係があるんだ?)
と、すぐにそう疑問に思った。
そしてそれは、水音だけでなく、進達、そして、皇族達も同様だったのか、
「それよりウィルフ! 『歴代最強の大隊長』の異名を持つあのギデオンがやられただと!? 一体何処のどいつなんだ!? ていうか、レオン達はともかく、何で水音達まで呼んだんだよ!?」
と、ヴィンセントは鏡型魔導具をがしっと掴みながら、そこに映ったウィルフレッドに向かってそう問い詰めた。
そんな様子のヴィンセントに向かって、
「落ち着いてくれヴィンス、順を追って説明する。それに水音殿達を呼んだのは、彼らにも関係がある話だからだ」
と、ウィルフレッドがそう言ってきたので、ヴィンセントは「な、何だよ……」とまだ落ち着かない様子でそう呟き、
(? 今の、どういう意味なんだろう?)
と、水音と進達も、頭上に「?」を浮かべながら首を傾げると、ウィルフレッドは真剣な表情で、
「ギデオンを破った者の名は雪村春風。固有職能『見習い賢者』の固有職保持者だそうだ」
と、ギデオン・シンクレアを破ったその人物の名前を言った。
その名前を聞いた瞬間、
「……何だと?」
(……え?)
ヴィンセントだけでなく、皇族達や水音、進達も目を大きく見開いた。
(……春風?)




