第61話 帝国での日々
「ハンター」としてギルドに登録した翌日から、水音ら6人の「勇者」達の、ストロザイア帝国での本格的な生活が始まった。
まずは帝城で兵士達と混じって戦闘訓練。こちらはルーセンティア王国の時と大体同じで、基礎体力をつける訓練から、武器の扱い方についての訓練を、騎士や兵士達から教わっていた。当然、エレクトラやレクシーも一緒にである。
次に座学……といってもこちらは教えてくれる人がいないので、戦闘訓練が終わった後、帝城内にある「資料室」で、みんなで勉強している。帝城の資料室に置かれている資料は、ルーセンティア王国王城内資料室以上に種類も豊富且つ内容もかなり詳しく載っていたので、かなり勉強が捗った。
そして一方、「ハンター」としての生活はというと、水音達6人は登録したばかりの新人である為、まずは1番低いランクの仕事を請け負う事になった。
薬草の採取から、帝都の住人達のちょっとしたお手伝いなど、水音達はそれらの仕事に手を抜く事なく、一生懸命励んでいった。詳しい内容については、1つ1つ語ると長くなってしまうので、いつか別の形で語るとしよう。
そして数日後。
帝国での生活と、ハンターとしての仕事にある程度慣れてきた時、
「よし、みんな! ここからは私とレクシーと行動を共にしてもらうぞ!」
と、エレクトラにそう言われたので、水音達は彼女をリーダー、レクシーをサブリーダーとして、以降は行動を共にするようになった。因みに、レクシーは帝国の近衛騎士ではあるが、エレクトラ側近の騎士でもある為、共にハンター登録していたそうだ。
そんな彼女達が請け負う仕事はというと、主に帝都周辺の魔物の討伐で、近いところから、少し遠く離れたところまで、様々な場所に赴いては、そこに巣食う魔物を倒すのが仕事内容だそうだ。
そして、水音達はエレクトラと共に、本格的な魔物との戦闘に入った。
最初は戦う事に躊躇ったり、倒したとしても戦闘に慣れてない所為か、気分を悪くしてその場で吐いたり、酷い時にはその時の恐怖によるものか、その日は眠れない事もあった。
しかし、だからといって水音達は、そこで立ち止まったり、逃げ出そうなんて考えたりしなかった。
何故なら、
『どうしても、負けたくない奴がいるんだ!』
と、水音達がそう理由を話したように、彼らの脳裏には、常に1人の少年が浮かんでいたのだ。
そう、エルードに召喚された日に自分達のもとを去り、映像越しだが自分達に圧倒的な強さを見せつけた、もう1人のクラスメイトの少年。「彼に負けたくない」という確かな想いが、水音達を突き動かしていたのだ。勿論、「この世界を救う」という「勇者」としての使命も忘れてはいない。
そして、その想いを抱いたまま、1ヶ月と少しの時が流れた頃には、水音達は凶悪な魔物に打ち勝つ程強くなっていたのだ。それに加えて、水音達自身もお互い打ち解け合うようになり、今ではお互い苗字ではなく名前で呼び合うようにもなっていた。
そして現在。
「よし! 報酬も貰った事だし、今日はこれで帰るぞ!」
『はい!』
と、アーマースネークを倒した報酬を受け取った後、水音達はギルドを出て帝城に帰る事にした。かなり遅い時刻なのか、空はもう暗くなっていた。
いつもなら、その後は帝城に戻ってみんなで夕食をとった後、明日に備えて眠りにつくのだが、帝城前に1人の人物がいたので、
「ん? あれは……」
と、エレクトラがその人物に気付くと、
「あら。お帰り、エレンちゃん。そしてレクシーちゃんに水音ちゃん達」
と、その人物がそう挨拶したので、
「た、ただいま戻りました母様!」
『ただいま戻りましたキャロライン様』
エレクトラだけでなく水音達も、その人物ーー皇妃キャロラインに向かってそう挨拶を返した。それを聞いて、キャロラインは「ふふ」と小さく笑った。
その後、
「母様、一体ここで何をしてるのですか?」
と、エレクトラがキャロラインに向かってそう尋ねると、
「エレクトラ。そして『勇者』の皆さん。帰ってきたばかりで申し訳ないけど、一緒に来てほしいの」
と答えたので、エレクトラだけでなく水音達も「え?」と首を傾げていると、
「あなた達に、『大切な話』があるそうなの」
と、キャロラインは更に真面目な表情でそう言った。