第59話 水音達の「現在」
ストロザイア帝国帝都から、少し離れた位置にある森の中。
「よし、みんないくぞ! こいつが最後だ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
エレクトラの言葉に、水音、進、耕、祭、絆、祈の6人の「勇者」達はそう返事すると、それぞれの武器を手に戦闘態勢に入った。
今、エレクトラ達の目の前にいるのは、岩のようにごつごつとした表面を持つ装甲のようなものに身を包んだ、大きな蛇型の魔物だった。
「アーマースネーク」と呼ばれているその魔物を、水音ら勇者達とエレクトラ、そしてレクシーの7人が睨みつける。
ゆっくりと口を開けて、ぎらりと牙を光らせるアーマースネークに対し、水音達も負けじと武器を構える。
因みに、現在彼らが持っている武器はというと、エレクトラは大きな穂先を持つ槍で、レクシーは片手で扱うタイプの小振りの片刃剣。
そして勇者の方はというと、全員、鍛治師のブレンダが鍛えてくれた武器を握っている。
まず、「瞬剣士」である進は、レクシーと同じく小振りの片刃剣。
次に「剛弓士」である祭は、通常のものよりやや大きめの弓矢。
「滅拳士」である絆は、両腕に装着された広めの手甲を持つ籠手。
「地導師」「司祭」である耕と祈は、自身背丈程ある長めの杖で、握りの部分がハンマーのようになっている。違っているのは杖自体の色で、耕のはオレンジ、祈のは白だ。
そして、最後に水音の武器はというと、見た目は両手持ちの長剣なのだが、その刀身はかなり分厚く、斬るというより叩き潰すタイプの武器で、最早「剣」というより、「剣の形をした金棒」と呼んだ方がいいだろう。
とまぁ説明はここまでにして、お互い睨み合う両者の間に、ひゅうと風が吹き抜ける。
森の中が緊張に包まれる中、先に動いたのは……アーマースネークだった。
大きく開けて襲いかかるアーマースネーク。
迫り来る大きな口が、エレクトラを飲み込もうとするが、
「ロックウォール!」
それよりも早く、耕が土の魔術「ロックウォール」を発動。エレクトラとアーマースネークの間に、大きな岩の壁が出現し、アーマースネークの攻撃は阻まれた。
その時、
「でりゃあっ!」
「はぁっ!」
素早く近づいていた進とレクシーが、持っている剣よる連続攻撃をしかけた。
全身に2人分の斬撃を受けるアーマースネーク。
しかし、ダメージは浅いようで、相手は特に気にする様子もなく、2人に対して反撃をしようとした。
ところが……。
ーーっ!
危険を察知したのか、アーマースネークはすぐにその場から離れた。
その瞬間、先程までいた地面に、3本の矢が刺さった。
それを見て、アーマースネークはすぐさま矢が飛んできた方向を見る。
その視線の先にいるのは、大きな木の枝の上で弓を構える祭だった。
アーマースネークは彼女をきっと睨むと、すぐにその場から移動しようとしたが、
「ホーリーバインド!」
という祈の叫びと共に、周囲の地面から幾つもの白い光を放つ鎖が現れて、アーマースネークの全身巻き付いた。
ーーっ!
鎖の所為で身動きが取れないアーマースネーク。
必死になって鎖を引きちぎろうとした、まさにその時、自身の上空が暗くなったの感じて、「何だろう?」と上を見上げると、
「「「はぁあああああああっ!」」」
そこには今にも武器を振り下ろそうとしている、エレクトラ、絆、そして、水音の姿があった。
3人はアーマースネークの頭部目掛けて、持っている武器を力いっぱい振り下ろした。その際、
「グラビティ!」
と、耕がそう叫ぶ。
その瞬間、オレンジ色の光が3人の武器を包み込んだ。
その状態の武器を、3人は同時にアーマースネークの頭部に叩き込んだ。
ーーっ!
強烈な一撃を入れられたアーマースネークは、そのまま力なくその場に崩れ落ち、それと同時に、水音、絆、エレクトラもすたっと地面に着地した。
大きな音と土煙を立てて倒れ込むアーマースネークを、エレクトラは槍でつんつんとつついたが、動く気配はなく、完全に死んだのを確認すると、エレクトラは「うん」と頷いて、
「よし、これで目的は達成されたぞ!」
と、水音達に向かってそう言った。
次の瞬間、
「危ない!」
という祈の叫びの後、死んだと思われていたアーマースネークが起き上がり、水音達に襲い掛かろうとしたが、どしゅっという音と共に、アーマースネークの喉に矢が刺さった。祭の放った矢だ。
そして、再び大きな音と共に地面に倒れたアーマースネークを見て、今度こそ死んだのを確認すると、
「よし、今度こそ終わったぞ!」
と、エレクトラは水音達に向かってそう言った。
その言葉を聞いて、
「「「「「「やったー!」」」」」」
と、水音はそう叫ぶと、エレクトラとレクシーを交えて、お互いハイタッチをした。