第58話 とある「報告」を受けて
お待たせしました、新章開幕です。
ストロザイア帝国帝城。
その中にある執務室で、
「……」
今、現ストロザイア帝国皇帝ヴィンセントが、せっせと書類仕事をしていた。
「だぁーちっくしょう! 全然終わる気がしねぇ!」
と、目の前に置かれた大量の書類の山を見て、ヴィンセントが頭を抱えながらそう叫ぶと、
「ほらほら陛下。口を動かさずに手を動かしてね」
と、横で手伝ってるヴィンセントの妻である皇妃キャロラインが、穏やかな口調でヴィンセントに向かってそう言った。
そんなキャロラインの言葉に、
「わかってるけどよぉ……」
と、ヴィンセントが頬を膨らませながらそう言うと、とんとんと執務室の扉をノックする音がしたので、
「む、どちらさーん?」
と、ヴィンセントは思いっきり投げやりな感じでそう尋ねた。
すると、
「父上、レオナルドです」
と、扉の向こうからそう声がしたので、ヴィンセントは「何だ?」と思いながらも、
「おう、入ってくれ」
と言って、扉の向こうにいる(と思われる)人物に向かってそう言うと、扉がゆっくりと開かれ、
「失礼します」
と、ヴィンセントとキャロラインの息子であるレオナルドが入ってきた。
ただ、その表情はあまりにも深刻そうだったので、
「ん? どしたぁレオン?」
「まぁ、レオンちゃん。そんな顔してどうかしたのかしら?」
と、「おや?」と首を傾げたヴィンセントとキャロラインがそう尋ねると、レオナルドはかなり真剣な表情で、
「……父上。また1つ、『断罪官』によって村が滅ぼされました」
と、ヴィンセントに向かってそう報告した。
次の瞬間、ヴィンセントは「ま……」と拳を震わせた後、
「またかよ! あいつらまたやりやがったのかよ!」
と、ヴィンセントはその拳で机を思いっきり殴った。その衝撃で書類の山が崩れそうになったが、間一髪のところで崩れずにすんだ。
一方、ヴィンセントの隣キャロラインはというと、レオナルドの報告を聞いて険しい表情になった後、
「レオナルド。その報告をしたという事は、もしかして国内で起きた事ですか?」
と、レオナルドをニックネームではなく本名で呼びながらそう尋ねた。その質問に対して、
「いえ、隣国内で起きた事なのですが、帝国にかなり近い場所に位置した村ですので、こちらにも報告があがったとの事です」
と、レオナルドは真っ直ぐキャロラインを見てそう答えたので、
「……そうですか」
と、キャロラインは悲しげな表情を浮かべながらそう返事した。
その後、
「で、話はわかったが……誰の部隊なんだ?」
と、今度はヴィンセントがレオナルドにそう尋ねると、
「大隊長の、ギデオン・シンクレアの部隊です」
と、レオナルドは真剣な表情でそう答えたので、
「あいつかよ……」
と、ヴィンセントは「怒り」に満ちた表情になりながら、ぎりっと歯軋りをした。
すると、
「ヴィンスちゃん……」
と、キャロラインがヴィンセントを見つめながら、彼をニックネーム&ちゃん付けでそう呼んだので、ヴィンセントはゆっくりと深呼吸すると、
「……悪りぃなキャリー。もう大丈夫だ」
と、落ち着きのある口調で、キャロラインに向かってそう謝罪した後、
「心配しなくても、よっぽどの理由がない限り、教会の連中と敵対するつもりはねぇよ。ウィルフ達に迷惑がかかるからな」
と、「はは」と弱々しく笑いながらそう言ったので、キャロラインも「ふふ……」と弱々しく笑った。
その後、ヴィンセントはレオナルドに向かって、
「で、今回連中に滅ぼされた村で、生き残った人間っているか?」
と尋ねると、レオナルドは首を横に振りながら、
「残念ですが……」
と、「悲しみ」に満ちた表情でそう答えたので、
「まじかよ。あいつらどんだけ人をぶっ殺せば気が済むんだよ」
と、ヴィンセントは「はぁ」と溜め息を吐きながら、うんざりしたかのような口調でそう言い、そんなヴィンセントに続くように、
「仕方ないわよぉ、あの連中なら。ましてや、今回村を滅ぼしたのは、あのギデオン大隊長の部隊だからぁ」
「ええ。何せ歴代の大隊長の中でも『最強』と云われている人物ですからね。おまけに『神』に対する信仰心も高いですし……」
と、キャロラインとレオナルドもそう言ってきたので、ヴィンセントは「だよなぁ……」と呟いた後、天井を仰ぎ見ながら、
「でもよぉ、もう本当にいい加減にしてほしいぜ。帝国まで来たらどうしようホントに……」
と愚痴をこぼすと、
「あーあ。どっかにいねぇかなっていうか現れねぇかな。ギデオンの野郎を思いっきりぶっ飛ばしてくれるスゲェ奴がよぉ……」
と、そんな事を呟いたので、
「あらあら。それって水音ちゃん達の事かしらぁ?」
と、キャロラインが「うふふ」と笑いながらそう尋ねてきたので、
「お、そりゃいいな……」
と、ヴィンセントはそう言いかけたが、
「……いや、よくねぇか」
と、すぐに首を横に振るいながら言い、そんなヴィンセントを見て、
「あはは!」
と、キャロラインは腹を抱えて大笑いし、
「はぁ。やれやれですね……」
と、レオナルドは呆れ顔になった。
それから少し談笑した後、ヴィンセント達は書類仕事を再開した。その最中、
「スゲェ奴……か。ま、そんなすぐに現れる訳ねぇよな」
と、ヴィンセントは「はぁ」と溜め息を吐きながら、小さな声でそう呟いた。
しかしこの数日後、ウィルフことルーセンティア王国国王ウィルフレッドから、ある「とんでもない話」を聞かされて、
(ほ、ホントにスゲェ奴出てきたぁーっ!)
と、ヴィンセントは衝撃を受ける事になるのだが、それはまた別の話である。
どうも、ハヤテです。
という訳で、最後に投稿した日から少しの間お休みさせてもらいましたが、今日から派生作品(外伝と呼ぶべきか)新章の開始となります。




