第56話 「そこ」に映ったのは……・3
今回は、いつもより長めの話であると同時に、後書きに「おまけ」を書きました。
ーー……まだ、やりますか?
ーーいや、やめておくよ。
ーーそ、それまで! 勝者、ハル!
審判(?)の男性がそう叫んだ瞬間、周囲から歓声があがったところで、映像はマチルダによってストップされた。
『……』
映像に出て来た「雪村春風」と「ヴァレリー・マルティネス」の戦い。
それが、春風の勝利に終わり、それを見た水音ら勇者達だけでなくヴィンセントら皇族達は、あまりの事に口を開けてぽかんとした。
それから少しすると、
「すっげぇ。何あいつ、めっちゃ強いじゃん」
と、ヴィンセントがたらりと汗を流しながらそう口を開いた。
そして、そんなヴィンセントに続くように、
「そうねぇ。可愛いだけじゃなく、凄く強い子なのねぇ」
「ですね。『魔術師』なのにあれだけの接近戦をこなすとは、相当な戦闘センスの持ち主でしょうね」
「それだけじゃない。おまけに時々、風魔術の『ウインドニードル』で攻撃するだけじゃなく『アクセラレート』で自身の素早さを強化してました」
「……」
と、キャロライン、レオナルド、アデレードがそれぞれの感想を言い、エレクトラは未だぽかんとした表情になっていた。
一方、勇者達の方でも、
「ま、マジかよ……」
「ゆ、雪村君って、あんなに強かったんだ」
「し、信じられないんだけど」
「ああ、教室での雪村とはえらい違いだな」
「う、うん。雪村君、凄く静かな人だったよね」
と、進、耕、祭、絆、祈は、映像越しとはいえ目の前で激しい戦いを繰り広げた春風を見て、普段自分達が知ってる春風との違いにショックを受けていた。
そして、水音はというと、それまでヴィンセント達と同じようにぽかんとしていたが、
「……」
と、真っ直ぐ映像の春風を見つめて、ぐっと唇を噛み締め、左右の握り拳を震わせていた。
その後、
「なぁ、水音」
と、ヴィンセントが水音に話しかけた。
「……何ですか?」
「お前、いつかあいつに挑むつもりなんだよな?」
「……はい」
「勝てそうか?」
と、ヴィンセントがそう尋ねてきた瞬間、謁見の間は一気に緊張に包まれた。
進達だけでなくキャロライン達からも視線を向けられる中、
「……正直言いますと、全然勝てる気がしません」
と、水音は本当に正直にそう答えたので、進達とキャロライン達は心配そうな表情になった。
そんな彼らを無視して、
「……ああ、俺もそう思うよ。だから、強くなりたいんだろ?」
と、ヴィンセントが更にそう尋ねてきたので、
「はい!」
と、水音は真っ直ぐヴィンセントを見て、はっきりとそう答えた。
その答えを聞いて、
「はは! そうだよな!? その為にここに来たんだもんなぁ!?」
と、ヴィンセントは笑いながらそう言った。
その後、
「なぁ、マチルダよぉ」
と、ヴィンセントは視線を水音からマチルダに移して、
「映像はこれだけか?」
と、尋ねると、
「いいえ。まだ続きがあります」
と、マチルダはそう言って、ストップした映像の続きを見せた。
春風とヴァレリーの戦いのあと、
ーーいやぁ、中々素晴らしいものを見させてもらいましたよ。
と、いきなり現れた、マチルダと同じようにロングコートをマント代わりにしたスーツ姿の初老の男性が現れたので、
「げ、あいつは!」
と、ヴィンセントが驚きに満ちた声をあげたので、
「? ヴィンセント陛下のお知り合いですか?」
と、水音がそう尋ねると、
「ああ、こいつはフレデリック・ブライアント。ハンターギルド総本部の総本部長だ」
と、ヴィンセントは映像に出てきた初老の男性について、何処か忌々しそうな表情でそう説明すると、
「でもって、すっげぇ腹黒野郎だ」
と、最後にそう付け加えたので、水音ら勇者達は「えぇ?」と一歩引いた。
その後、映像に出てきたフレデリックという男性が、
ーーふむ、中々良い杖ですね。長さと重さもかなり手頃のようで、打撃武器としても使えるでしょう。
と、春風が武器として使った杖をそう褒めた後、
ーーですが、この仕掛けは、ちょっとえげつないんじゃないですか?
と、杖に仕込んだ鎌の刃を展開したので、
「げ! あいつあんなの仕込んでたのかよ」
「あらあらぁ……」
『うわぁ……』
と、ヴィンセントとキャロラインは若干呆れ顔になり、水音達はドン引きしたかのような表情になった。
更にその後、フレデリックによってその場が解散した後、
ーーうわ! れ、レナァ!?
と、小闘技場に残された春風が、観客の1人である白髪の少女に抱きつかれてしまったので、
「おっ!」
「あらあらぁっ!」
と、ヴィンセントとキャロラインは驚きの声をあげて、
「な!? あ、あの子は!」
と、水音もその少女を見て驚いた。
そんな水音に、
「む! 水音、こいつを知ってるのか!?」
と、ヴィンセントがまたそう尋ねてきたので、
「は、はい! 僕達がこの世界に召喚された日に春風を連れ出した、『レナ・ヒューズ』っていうハンターの女の子です!」
と、水音はまた真っ直ぐヴィンセントを見てそう答えた。
その答えにヴィンセントが「そうか」と返事した後、みんなで映像の続きを見た。
ーーよかった。春風が無事で本当によかった。
ーー……ごめん、レナ。心配かけて。
と言い合う春風と「レナ・ヒューズ」という少女を見て、
(……あれ? なんか、仲がいい?)
と、水音は首を傾げた。
更に、
ーーじゃ、行こっか春風……。
ーーあ、ちょっと待ってレナ。
ーーどうしたの?
ーー忘れたかな? 今の俺は……。
ーーあ! ごめんね。じゃあ行こっか、ハル!
そう言い合った後、2人は小闘技場を出て行ったところで、
「とまぁ、映像はここまでです」
と、マチルダはそう言って映像を切った。
それから少しの間、謁見の間が沈黙に包まれていると、
「……ヴィンセント陛下」
と、水音が口を開いた。
「……なんだい水音」
と、ヴィンセントがそう返事すると、
「ちょっと、叫んでもいいですか?」
と、水音は顔を下に向けた状態でそう尋ねてきたので、
「おう、いいぞ」
と、ヴィンセントがそう許可を出すと、水音はすぐに天井に向かって、
「何やってんだ、馬鹿春風ぁあああああああっ!」
と、怒りに満ちた叫びをあげた。
おまけ)
「ひえ! ごめんなさい!」
「ど、どうしたのハル!?」
「ご、ごめん、レナ。なんか今、すんごい怒鳴られたような気がして……」
「そ、そうなんだ」
以上、「おまけ」でした。
そして、次回で今章が終わりの予定です。




