第55話 「そこ」に映ったのは……・2
「春風!?」
「「「「「雪村(君!?)」」」」」
マチルダが持ってきた魔導具に映し出された人物を見て、水音ら勇者達がそう驚きの声をあげると、
「うお! びっくりしたぁ……って、え、ちょっと待て、こいつがそうなのか!?」
と、驚いたヴィンセントが、映し出されたその人物、「青いローブ姿の少女」を見て、「ん?」と頭上に「?」を浮かべながらそう尋ねてきた。
その質問に対して、ハッと我に返った水音は答える。
「は、はい、間違いありません! 彼が『雪村春風』です!」
その答えが出た瞬間、謁見の間は沈黙に包まれたが、
「どう見ても女の子じゃねぇか!」
と、ヴィンセントがそう怒鳴ってきて、それに続くように、
「まぁ、なんて可愛らしい……」
と、映し出された「雪村春風」を見てうっとりしているキャロラインと、
「「「……」」」
ぽかんとした表情になっているレオナルドとアデレード、そしてエレクトラも「うんうん」と頷いた。
しかし、
「いいえ! 彼はご覧の通り顔付きは紛れもなく女の子ですが、れっきとした男なんです! 服装は違いますが!」
と、水音は真っ直ぐヴィンセントを見ながら否定した。最後のセリフに意味はあるのかは置いといて。
その言葉に「だ、だがよう……」とヴィンセントが引き下がらないでいると、
「うおっほん!」
と、マチルダが豪快(?)に咳き込んだので、水音ら勇者達とヴィンセントら皇族達は一斉にマチルダを見た。
「あー、申し訳ありませんが、話を進めてよろしいでしょうか?」
と、マチルダが本当に申し訳なさそうにそう言ってきたので、
「お、おう、どうぞ」
と、ヴィンセントは「OK」を出した後、
「で、この映像は一体何なんだ?」
と、目の前に映し出された映像を指差しながらそう尋ねた。
「はい。先程申し上げましたように、この映像は、今日フロントラルのハンターギルド総本部で起きた出来事を、そこで働いているライリーの姉ジュリアが記録したものです」
と、マチルダはそう答えると、水音に視線を移して、
「あんたが探しているのは、この子で間違いないかい?」
と、映像の「雪村春風」を指差しながらそう尋ねた。
水音は答える。
「はい、間違いありません。それで、これは一体どのような状況なのですか?」
と、今度は水音がマチルダに向かってそう尋ね返すと、
「まずはだな、この子の名は『ハル』。あんた達と同じ、今日『ハンター』になったばかりの子だ」
と、マチルダはそう説明した。
「え、今日ハンターになったんですか!?」
「ああ、そうだ。因みに、職能は『魔術師』だそうだ」
「ま、魔術師……ですか。それで、彼と対峙しているこちらの女性は……?」
と、水音がまたそう尋ねると、マチルダは「おっと、忘れてた」と呟いて、映像の「雪村春風」と対峙している女性に視線を向けて、
「彼女はヴァレリー・マルティネス。最高ランクである『白金級』のハンターで、フロントラルが誇る大手2大レギオンの1つ、『紅蓮の猛牛』のリーダーを務めている」
(レギオン……。それって確かハンター同士で組む『チーム』の事だったな)
と、マチルダの話に水音が心の中でそう呟くと、
「で、そんな彼女は、ハンター登録を終えたばかりのハル……いや、春風だったな。で、その春風に何故か興味を持ったみたいでな、こうして総本部の中にある『小闘技場』で、ちょっとした腕試し的な決闘をする事になったんだ」
と、マチルダはそう話を付け加えたので、
(いや何でそんな事になってるんですかぁ!?)
と、水音は心の中でつっこみを入れた。
そんな水音を他所に、
「まぁ、そうだったのぉ。それで、この映像を見せに来たという事は、あなたは既にこの後何が起きるのかも知ってるという事ね?」
と、先程までうっとりしていたキャロラインがそう尋ねてきたので、マチルダはこくりと頷きながら、
「ええ、申し訳ないと思ってますが、その通りでございます。私が口頭で説明してもいいのですが、何が起きたかにつきましては、この映像を見てほしいのです」
と言うと、手に持っている魔導具に更に魔力を込めた。
すると、それまで止まっていた2人の人物、「雪村春風(以下、春風)」と「ヴァレリー・マルティネス(以下、ヴァレリー)」が動き出して、
ーー……ちょっと質問ですが、これ、スキルや魔術の使用はありですか?
と、目の前にいるヴァレリーに向かって春風がそう尋ねると、
ーーん? ああ、構わないよ。さっきも言ったように、ドーンとかかって来な」
と、ヴァレリーは挑発するかのようにそう答えた。
その瞬間、2人の様子を見た謁見の間にいる者達全員が、ごくりと唾を飲んだ。
そして、
ーーそれでは……両者、はじめ!
と、2人の間に立つ審判(?)がそう叫ぶと、2人の「戦い」が始まった。




