第54話 「そこ」に映ったのは……
「みんなに『見せたいもの』があるんだ」
「ハンターギルド」のギルドマスター、マチルダにそう言われた水音達は今、帝城内にある謁見の間にいる。
そこには、水音達やマチルダは勿論、他にヴィンセント、キャロライン、レオナルド、アデレードと、皇族達の姿もあった。
何故こうなっているのかというと、マチルダのセリフの後、
「お、何だ何だぁ? 面白そうなものか?」
と、ヴィンセントがぬっと割って入ってきて、彼に続くように、
「あらあら、何かしらぁ? 私も知りたいわぁ」
と、キャロラインも割って入ってきたので、全員、謁見の間でマチルダの話を聞く事になったのだ。因みに、レオナルドとアデレードは、ヴィンセントに誘われてきたそうだ。
とまぁそれはさておき、謁見の間に集まったところで、
「で、『見せたいもの』って何だ?」
と、玉座に座っているヴィンセントが、まるで子供のように目をきらきらさせながらそう口を開くと、マチルダは無言で自身の懐に手を突っ込み、そこから何かを取り出した。
それは、簡単な装飾が施された、手のひらサイズの水晶玉のようで、
「あの、それは一体……?」
と、水音が恐る恐るマチルダに向かってそう尋ねると、
「ん? ああ、こいつは魔力を込める事で目の前で起きた出来事とかを『映像』として記録したり、それを見る為の魔導具さ」
と、マチルダはその水晶玉のようなものについてそう説明した。
その説明を聞いて、
(え? それって『ビデオカメラ』みたいなものなの?)
(マジか。異世界すげぇなおい)
と、水音ら勇者達は心の中でそう呟いた。
そんな水音達に構わず、
「ほうほう。で、そいつを出したって事は、『見せたいもの』ってそこに映ってるやつなのか?」
と、ヴィンセントが再びそう尋ねると、マチルダはこくりと頷いて、
「その通りです陛下。そして、これから見せるのは、今日、フロントラルのハンターギルド総本部で起きた出来事です」
と答えた。
それを聞いて皇族達が「へぇ……」と返事すると、
「あ、あの、フロントラルって、『中立都市フロントラル』の事ですよね?」
と、今度は耕が恐る恐るそう尋ねてきたので、
「ああ。昼間ギルドで説明したように、どの国にも所属しない文字通り『中立』を謳う都市でな、そこにあるハンターギルドの総本部で働いているジュリア……ライリーの姉が、『今日とても凄い事が起きた!』って言って、その出来事が記録されたこいつが送られてきたって訳さ」
と、マチルダは水晶玉を見せつけながらそう答えた。
確かに、「中立都市フロントラル」とそこにある「ハンターギルド総本部」、そして今日知り合ったライリーの姉については、昼間ギルドでハンターとしての登録の時にした質問で出てきた話だったので、
(ああ、そういえばそんな話もあったなぁ)
と、水音は懐かしいものを思い出したかのような表情になった。それと同時に、
「おお、ジュリアか! 元気にしてるかなぁ」
と、ヴィンセントとキャロラインの後に座ってるエレクトラが、懐かしいものを思い出したかのような表情になった。
そんな水音とエレクトラを他所に、
「まぁ、フロントラルから? 一体何が映ってるのかしらぁ?」
と、キャロラインが「気になります」と言わんばかりに首を傾げていると、
「では、映しますね」
と、マチルダはそう言って水晶玉に自身の魔力を込めた。
次の瞬間、水晶玉から眩い光が溢れて、それが収まると水晶玉の上に立体映像のようなものが現れた。
それを見て水音ら勇者達が「な、何だ何だ!?」と驚きの表情になっていると、
「おっと。ちょっと失礼」
と言ってその立体映像に手を触れた。
すると、小さかった立体映像が一気に大きくなり、水音達だけでなく皇族達も目を大きく見開いた。
で、肝心の映像の方はというと、映っているのは大勢の人達に見守られながら、円形の舞台のようなものの上に立つ2人の人物だった。
1人は大剣を構えた、飾り気のないシンプルな鎧を纏った長い黒髪の女性。
そして、もう1人は杖を構えた、青いローブを纏った「美少女」を思わせる整った顔付きの少女だった。
その映像を見て、
「お! こいつは総本部の中の映像か?」
と、ヴィンセントがそう尋ねてきたので、
「そうです。ここに映ってるのは、総本部の中にある『小闘技場』で、映ってるのは今日そこで起きた、『とある戦い』の記録です」
と、マチルダはヴィンセントに向かってそう説明した。
それを聞いて、皇族達が「おぉ……!」と感心している中、水音ら勇者達は、大剣を構えた女性と対峙している青いローブ姿の少女を見て、
「春風!?」
「「「「「雪村(君)!?」」」」」
と、驚きの声をあげた。
前回の話を一部修正しました。




