第51話 「職人区」での新たな出会い
ギルドで「ハンター」の登録を終えた水音達。
彼らは今、帝都の中央広場にあるベンチで、先程貰った自分達の「ギルドカード」をじっと見つめていた。
(これが、僕のギルドカード。この世界での僕の『身分証』か……)
出来たばかりの自分のギルドカードを見つめて、水音が心の中でそう呟いていると、
「おーいみんなー、あまり見つめてばかりいると、悪い奴らにとられるぞー?」
と、エレクトラにそう注意されたので、ハッとなった水音達は、思わずそのギルドカードを落としそうになったが、まだ手に持っているのを確認すると、深呼吸して気持ちを落ち着かせて、それを自分達の懐にしまった。
当然、何度も確認するのを忘れずに、だ。
エレクトラはそれを見て「よしよし」と頷くと、
「さぁ、それじゃあ次に行こうか」
と言い出したので、水音達は「わかりました」と言って彼女の後をついて行った。
ストロザイア帝国の中心「帝都」には、幾つかの区画が存在する。
その中の1つ、「職人区」。
その名の通り、そこには様々な「職人」こと生産系職能の職能保持者達が暮らし、それぞれの持つ技術を駆使して、日夜いろんなものを生み出している。
そんな職人区の通りを、エレクトラを先頭に水音達が歩いていた。
何か失敗したのか、あちこちで謎の爆発が起きたり、謎の悲鳴があがるその職人区の中を、
「な、なんか、すごい所に来た気がする」
と、水音は小声でそう呟きながら、あちこちを見て歩いていた。
それから暫くすると、
「目的の場所が見えたぞ」
と、エレクトラがそう言いながら、とある方向を指差したので、水音達は「え? 何処どこ?」と一斉にその方向を向くと、そこには黙々と煙が上がる大きな煙突を持った一軒家があったので、
(あそこが、次の目的の場所か)
と、水音は再び心の中でそう呟いた。
一軒家に着くと、エレクトラは玄関ではなく、その一軒家にある別の場所に向かった。
一体何だろうと思った水音達は、頭上に「?」を浮かべながら彼女の後を追うと、着いた場所はその一軒家の裏口にあたる扉の前で、エレクトラはその扉に近づき、その彼女の姿を見て、
(え? まさか、そこが本当の玄関じゃないよね?)
と、水音がまた心の中でそう呟くと、エレクトラは深呼吸して……扉を思いっきりばぁんと蹴り開けた。
『え!? な、何!?』
突然の事にびくっとなった水音達を他所に、
「おーい、ブレンダはいるかー!?」
と、エレクトラが扉の向こうに向かってそう叫ぶと、
「うるっせぇぞ! ドア蹴破るんじゃねぇって言ってんだろうがっ!」
と、奥の方からかなり乱暴な口調の返事が聞こえた。
何となくだが少女のものと思われるその声に、水音達が「何だ何だ!?」と戸惑いの表情を浮かべていると、
「ったく! 今ひと仕事終えたばかりだってのに……」
と、奥の方から抜群のスタイルと不良のような雰囲気をした、水音達と同じ年頃の少女が現れた。
エレクトラはその姿を確認すると、
「あーん、ブレンダァ! 愛しのエレンが戻ってきたぞぉ!」
と叫びながら、目の前にいる不良っぽい雰囲気の少女に向かって飛び、がしっと抱きついた。
「あ、テメェこの馬鹿第2皇女! 来て早々抱きついてくんじゃねぇ!」
と、「ブレンダ」と呼ばれた少女は大慌てでエレクトラから離れようとしたが、
「えぇ? いいじゃないか、私とお前の仲なんだしぃ。ああ、このけしからん胸、もうたまらん! おまけに、汗の臭いもいい感じだしぃ……」
と、エレクトラはとても皇女……否、年頃の少女が絶対にしてはいけない顔で、「はぁ、はぁ……」と息を荒くしながら、更に抱き締める力を強くした。
因みによく見ると、エレクトラの口からたらりと涎が垂れていた。
目の前で起きてる出来事を見て、
『あのぉ、何なんですかこの状況?』
と、水音、進、耕、祭、絆、祈が、傍に立つレクシーに向かってそう尋ねると、
「いえもう……本当に申し訳ありません」
と、レクシーは手で顔を覆い「はぁ」と溜め息を吐きながらそう謝罪した。
そして、そんな水音達を前にしても、
「あーんブレンダァ!」
「だーかーらぁ! 離れろって言ってんだろがぁあああああっ!」
と、エレクトラと少女のじゃれ合いは続いていた。




