第18話 「雪村春風」という少年
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
「私と彼……フーちゃんは、5歳の時からの幼馴染みなんです」
歩夢のその言葉を聞いて、爽子と水音をはじめとしたクラスメイト達は皆、「え、マジで!?」と言わんばかりの驚きに満ちた表情になると、
「ほほう、『幼馴染み』とな。して、『フーちゃん』というのは雪村春風のあだ名だろうか?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねてきたので、
「はい、彼の名前の中に、『風』って意味を持ってる『風』という文字が入ってて、それで……」
と、歩夢は少しだけ顔を赤くしながら答えた。
それを聞いて、
(なぁ、確か雪村の名前って……)
(『春』の『風』で、『春風』だったよね?)
(そうか、『風』を音読みにしたのか)
と、クラスメイト達がひそひそと話し合っている中、
「なるほど、『風』か、とても自由で良い名前だな。して、其方とはどのような形で出会ったのだ?」
と、再びウィルフレッドが尋ねてきたので、歩夢は「それは……」と、若干表情を暗くしながら答える。
「実は私の実家って、かなり特殊な家系でして、その、詳しくは言えないんですが、その為に私、いつも沢山の大人達に囲まれた生活を送ってて、同じ年頃の友達がいなかったんです」
「む、そうなのか。すまない、辛い話をさせてしまったな」
「いえ、その辺りはいいんです。私には優しい両親と兄、そして両親と一緒に働いている大人の方達もいますから、特に問題はありませんでした。で、そんな感じで楽しく日々を送っていた時に、フーちゃんに出会ったんです。凄く可愛かったから、最初は女の子と思っていたんですが、後で男だと聞かされた時は凄くショックを受けました」
そう話した歩夢の言葉を聞いた時、
(え、雪村、5歳の時から女の子と間違えられてたの?)
(た、確かに眼鏡を外した時の雪村君……)
(本当に『美少女』って感じだったけどさぁ……)
と、クラスメイト達は再びヒソヒソと話し合った。
そんな状況の中、歩夢は話を続ける。
「まぁ、それは置いておくとして話を戻しますけど、フーちゃんはいつも私の話を聞いてくれて、私の実家の事を知っても、『なにそれすっげぇかっこいい!』って、怖がるどころか目をキラキラと輝かせてました。そして、彼の両親はというと、お母さんの方はちょっと抜けてるところもありますけどとても優しくて、お父さんの方はちょっと重いところもありますけど、家族をとても大切にする人でした」
「ほう……って、『重い』とはどういう意味なんだ?」
「どういう意味かと言いますと、フーちゃんのお父さんはいつも言ってました」
ーー僕が願うのは妻と息子の幸せだけだ。もし2人に害を為すものが現れたら、僕は自分が出来るありとあらゆる手段を使って徹底的に潰すよ。当然、そいつの話なんて一切聞かずにね。
「……なんて事を聞いた時は、その、恥ずかしい話なのですが怖くて震えあがっちゃいました」
と、本当に恥ずかしそうに顔を赤くした歩夢の話を聞いて、
(え、待って、『重い』ってそっち? 『重い』ってそっちぃ!?)
と、話を聞いた水音だけでなくその場にいる誰もが心の中でそうツッコミを入れると、歩夢はまた表情を暗く……というより、今にも泣き出しそうな表情で話を続ける。
「ですが、今から7年前、フーちゃんが10歳の時、彼のお父さんとお母さんは、事故で亡くなってしまいました。フーちゃん1人を残して……」
「なんと!」
『え、えぇ!?』
歩夢の言葉を聞いて、ウィルフレッドやクラスメイト達はショックを受けていると、
「ええ、彼女の言ってる事は本当です。私も教師ですから、彼の事は聞いていました」
と、爽子がそう付け加えたので、その場は一気に暗い雰囲気になり、
「そうか、彼は既に『愛する者を失う悲しみ』を知っているという訳か」
と、ウィルフレッドもかなり表情暗くした。
しかし、その状況をよろしくないと思ったのか、
「あーですが、その後、フーちゃんは本来は施設で過ごす筈だったんですけど、そこへ今のお父さんが来て、彼を引き取ったんです。そして、それ以来フーちゃんは『苗字』を今のお父さんと同じものに変えて、今でも一緒に喫茶店を切り盛りしているんです」
と、少し慌てた様子でそう説明した。
すると、
「え、ちょっと待って、『苗字を変えて』って事は、それまで違う苗字だったって事?」
と、耕が「はい」と手を上げながらそう尋ねてきたので、
「あ、うん。フーちゃんの本名は「光国春風」っていうの。文字は『光』の『国』って書いて、『光国』」
と、歩夢がそう答えると、
「え、『光国』?」
と、それまで黙って話を聞いていた野守が口を開いたので、
「? 野守、どうしたんだ?」
と、隣に座っていた暁が、野守に向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「いや、何処かで聞いた事があるような……いや、ないような」
と、野守はそう答えながら、頭上に幾つもの「?」を浮かべた。
すると、
「……その最中に、私に出会ったんですよねぇ」
と、今度は美羽がそう口を開いた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流を考えていたら、その日のうちに終える事が出来ず、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。