第184話 そして、新たな出発(?)へ
さて、ランクアップした春風が自身の新たなステータスやら装備やらを確認する中、
「うーん。なぁ、ウィルフ」
と、ヴィンセントがそう口を開いたので、それにウィルフレッドが、
「ん? 何だヴィンス」
と、返事すると、
「コレで一応、この戦いは終わりって事で良いんだよな?」
と、ヴィンセントが目の前の春風や水音達を見ながらそう尋ねてきたので、ウィルフレッドは「え?」と首を傾げながら、
「……ああ、そうなるな」
と、答えると、
「いよっしゃあ! それなら帝国で祝杯をあげようじゃねぇか!」
と、ヴィンセントは声高々に笑顔でそう叫んだので、
『はぁあ!?』
と、それを聞いたウィルフレッドだけでなく春風や水音達までもが驚きに満ちた声をあげた。
突然のヴィンセントの発言に、
(ヴィンセント陛下は、一体何を考えているんだ!?)
と、水音が戸惑いの表情を浮かべていると、
「ちょっと待てヴィンス。戦いが終わったお祝いをしたい気持ちはわかるが、何故それを帝国でやろうとするんだ?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねてきたので、
「いや、何故ってお前、帝国は今エレン1人で留守番している状態だからな、早く帰ってアイツにもこの話を教えたいっていう親心なんだよ」
と、ヴィンセントはそう答えた。
その答えを聞いて、
(あ、そうだよ! 今、帝国にはエレンが1人で待ってるんだった!)
と、水音はストロザイア帝国にいるであろうエレクトラの事を思い出して、隣にいた祈と顔を見合わせた。どうやら祈もその事を思い出したようで、彼女も水音と同じ表情をしていたが、
(……ん? ちょっと待てよ。でもルーセンティア王国でもマーガレット王妃様やクラリッサ姫様が留守番している状態なんじゃ?)
と、水音がそう疑問に思っていると、
「で、本心は?」
と、ウィルフレッドがジト目でヴィンセントに向かってそう尋ねたので、
「勿論、この勢いで春風を帝国に招き入れてそのままこっちのものに……」
と、ヴィンセントがそう即答しようとしたが、すぐにハッとなって、
「て、テメェ、ウィルフ! 誘導尋問とか汚ねぇぞ!」
と、ウィルフレッドに向かって文句を言ってきたので、
(いやそっちが目的かーい!)
と、水音は心の中でヴィンセントに向かってそうツッコミを入れた。
その後、
「ヴィンセント……」
と、ウィルフレッドが更にジト目で睨みながらヴィンセントを本名で呼ぶと、
「だ、だってよぉ『賢者』なんだぞ! 半人前だけど『賢者』なんだぞ! しかも、『ランクアップ』っつう訳のわからないイベント付きなんだぞ! コレはもう是非うちに来てほしいじゃねぇかよ!」
と、ヴィンセントは開き直ってプンスカとそう怒鳴った。
それを聞いて、
『え、えぇ?』
(もう、ヴィンセント陛下ったら……)
と、水音達が盛大に頬を引き攣らせていると、
「ちょっと待てこの腐れ皇帝!」
という怒鳴り声が聞こえたので、それに水音が「ん?」と反応すると、
「勝手な事抜かしてんじゃねぇぞ!」
「そうですよ! 春風君は僕達の大事なレギオンメンバーなんです!」
と、フロントラルが誇る大手2大レギオンのリーダーであるヴァレリーとタイラーが、ヴィンセントに詰め寄りながらそう言ってきたので、
「えー? 良いじゃんかよぉ。お前らなんかじゃ絶対に春風を持て余しちまうと思うから、アイツをうちにくれよぉ」
と、ヴィンセントは頬を膨らませながらそう言い返した。
当然、それを聞いた2人は、
「「断る!」」
と、返事した。
さて、水音はそんなヴィンセント達のやり取りを見ながら、
(オイオイ、一体何をやってるんだよあの人達は……)
と、呆れ顔になっていると、
「……ねぇ、水音」
と、春風が話しかけてきたので、
「……何?」
と、水音が返事すると、
「本当に、あの人がストロザイア帝国の皇帝なの?」
と、春風はチラッとヴィンセントを見ながらそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、水音は「はぁ」と溜め息を吐くと、
「信じられない気持ちはわかるけど、あの人が皇帝陛下なんだよね」
と、表情を暗くしながら、「はは」と苦笑いした。
そして、そんな水音続くように、
「「「「「は、はは……」」」」」
と、進も、耕も、祭も、絆も、祈も、皆、表情を暗くしながら苦笑いした。
次回で今章最終話です。