第178話 「邪神ループス」、消滅?
春風の活躍によってラディウス達は退いたものの、ループスは次第に弱っていった。
その体には幾つものヒビが入っていて、そこからループスの体が少しずつ崩れ出していたので、それを見た水音達がオロオロしていると、
「はは、そんな顔すんなって。こうなったのは、俺自身が決めた事の結果なんだからよ」
と、ループスは笑いながらそう言って、最後に「だから気にすんなって」と付け加えたが、
(そ、そんな、『気にすんな』って……)
と、その言葉を聞いた水音は、更に顔を真っ青にした。それは、他の人達も同様で、特に一部の女子はショックのあまり両手で顔を覆っていた。
そんな水音達を前に、
「それと、爽子殿」
と、ループスは爽子に向かって声をかけたので、
「ふあ! は、はい、何ですか!?」
と、突然の事に爽子はビクッとしながらそう返事すると、
「爽子殿が俺に放った最後のパンチ。アレ、結構効いたぞ」
と、ループスは笑顔でそう言った。それを聞いて、
「え、あ、ありがとうございます!」
と、固まった表情の爽子がそうお礼を言うと、
「あ、そろそろヤベェかな」
と、ループスがボソリとそう呟いたので、それに水音達が「え?」と反応すると、ループスの全身に出来たヒビが更に大きくなって、そこからループスの体がボロボロと大きく崩れ出した。
それを見て、
『あ、ああ!』
(ま、まずい!)
と、水音を含めた周囲の人達が驚きに満ちた声をあげると、
「あーあ。この体、カッコ良くて気に入ってたんだけどなぁ」
と、ループスは穏やかな笑みを浮かべてそう言いながら、ゆっくりと目を閉じた。
そしてその後すぐに、体が崩れるスピードが段々速くなり、その崩れた部分は光の粒子となって、周囲に溶け込むように消えていった。
それを見て、
(る、ループス様!)
と、水音をはじめとした周囲の人達が悲しみに満ちた表情を浮かべた。特に一部の女子達なんかは、大粒の涙を流しながら「もう見てられない!」と言わんばかりにソッポを向いていた。
そして、
「いや……嫌だよ……お父さぁあああああん!」
と、大粒の涙を流したレナが、ループスに縋り付きながらそう叫ぶと、
「何だいレナ?」
と、ループスは体が崩れているにも関わらず、何もなかったかのようにムクッと上半身起こしたので、
『うわぁあ!』
と、水音を含めた周囲の人達全員が、一斉に驚きの声をあげた。
その様子を見て、ループスはキョロキョロと周囲を見回すと、
「オイオイ、何だよその顔は。『力』を奪われても俺『神様』だから、そう簡単には死なねぇよ」
と、「アッハッハ……」と笑いながら言ったので、
「いや、でもループス様、体が……」
と、春風がループスの体を見ながらそう言うと、
「ああ、大丈夫大丈夫。この体は言ってみれば『魔力で作った鎧』みたいなもんだ。つまり、作り物なんだよ」
と、ループスは笑いながらそう説明した。
それを聞いて、
『は、はぁ!?』
(つ、『作り物』だって!?)
と、水音を含めた周囲の人達が、頭上に幾つもの「?」を浮かべながら再び驚きの声をあげると、
「でもって……」
と、ループスがそう言った次の瞬間、とうとう全身が崩れ終わって、その欠片全てが粒子となって消えた。
その後、水音達がループスがいた場所に視線を向けると、そこには何やら可愛らしい小さな生き物がいて、
「これが、俺の本当の姿だ」
と、その小さな生き物は水音達に向かってそう言った。
その言葉を聞いた瞬間、
(……え? る、ループス様……だよな)
水音はそこにいるのがループスだと理解したが、その「本当の姿」というのがどう見ても地球……それも水音達の祖国『日本』に存在している、
「……豆柴?」
そう、豆柴だった。
そして、目の前にいるループスらしきその小さな生き物を見てそう呟いた春風に続くように、
「豆柴……だよね?」
「ああ、豆柴……だな」
「う、うん……確かに、豆柴だね」
と、水音、進、耕も、目の前にいるループスらしき小さな生き物を見てそう言ったので、
「オイ、それはどういう意味だコラァ!」
と、目の前にいるループスらしき小さな生き物……いや、最早ループス本人なのだろう。まぁ、とにかく、豆柴姿のループスがプンスカと怒りながらそう言うと、
『か……』
(ん?)
『可愛いいいいいいいっ!』
と、歩夢、美羽を含めた女子クラスメイト全員の叫びが響き渡った。