第149話 そして、判決
さて長くなってしまったが、そんなこんなで、春風は歩夢、美羽、凛咲との出会いから、春風が凛咲の弟子になった理由を話し終えた。
全ての話を聞いて、
(あ、改めて聞くと、凄い話だな)
と、水音がそんな事を考えていると、
「雪村。お前に1つ大事な質問をして良いだろうか?」
と、爽子がそう言ってきたので、それに春風が「何ですか?」と返事すると、
「お前は、海神と天上、そして陸島さんの事、どう思っているんだ?」
と、爽子は真剣な表情でそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、水音をはじめとした周囲の人達がゴクリと唾を飲むと、
「大切です。凄く。特にユメちゃんと美羽さんは事情があったとはいえ、この世界に送り込まれたあの日、ルーセンティア王国に置いてきてしまいましたから、こうして再会した今、もう絶対に離れたくないって思ってます」
と、春風真剣な表情でそう答えた。
その瞬間、周囲から「ぬあにぃい!?」とか「きゃああ!」といった悲鳴やら歓声があがり、そんな状況の中、水音はというと、
(うわー、清々しいくらいハッキリ言うなぁ春風)
と、心の中でそう呟きながら、「はは」と苦笑いを浮かべた。
その後も爽子は春風に向かって幾つか質問したが、それら全てを、春風は真剣な表情を崩さずに答えていった。
そして、
「もの凄く大事な事なんだが、お前は本気で海神達と共にいたいのか?」
と、爽子にそう問われると、
「はい。最初は普通に『友達で入れたら良いなって思ってましたけど、一緒に過ごしていくうちに、いつの間にか『大切な存在』になってました。ですから、もう絶対に離しませんって思ってます」
と、春風は最後まで真剣な表情を崩さずにそう答えたので、その答えを聞いた爽子は「そうか……」と呟くと、
「わかった雪村。お前がそこまで気持ちが固いというなら、私が出す『判決』は1つだ」
と、更に真剣な表情を浮かべながら、春風に向かってそう言った。
その言葉を聞いて、水音をはじめとした周囲の人達がドキドキしながら春風をジィッと見つめる中、爽子は判決をくだす。
「雪村春風。これが本格的な裁判なら、間違いなくお前は『有罪』となるだろう。だが、これはあくまで『学級裁判』だから、これから言うのはちょっとした『罰』だ。で、色々と話を聞いて考えた結果、私達といる間は、お前はもう単独行動は禁止だ。今後、何か行動を起こす際は、必ず私か、クラスメイトの誰かと一緒に行動してもらうからな」
その判決を聞いて、春風は小さく「うぅ……」と唸ったが、すぐに真面目な表情になって、
「わかりました」
言いながら、ペコリと頭を下げた。
その後、
「それでは、以上をもって学級裁判はこれにて終了します」
と、爽子がそう宣言したので、
(よ、漸く終わったかぁ……)
と、水音がホッと胸を撫で下ろした、まさにその時、
「あ、そういえば! オーイ、春風ちゃーん! 大事な事言うの忘れてるわよぉ!」
と、キャロラインが何かを思い出して、春風に向かってそう叫んだので、
(え、ど、どうしたんですかキャロライン様!?)
と、水音がそう反応すると、
「あ、そうでした!」
と、春風も思い出したかのようにハッとなったので、
「ん? 春風、どうかしたの?」
と、それを聞いた水音がそう尋ねると、
「あー、実は……オードリーさんの部屋で色々と話し合ってた時に、ループス様が来たんだ」
と、春風は気まずそうにそう答えたので、それを聞いた水音をはじめとしたクラスメイト達は、
『ハァアアアアア!?』
と驚きの声をあげた。
その後、
「ちょ、ちょっと待ってよ春風! それって、マジな話なの!?」
「うん。マジで」
「い、一体何しに春風達の所に来たの!?」
と、水音が今にも春風に掴み掛かる勢いでそう尋ねると、
「それが……地球の神様と契約を結んだ俺と、親玉連中が選んだ水音達勇者に勝負を挑みに来たんだ」
と、春風は更に気まずそうな表情でそう答えた。
それを聞いて、クラスメイト達が「そ、そんな!」とショックを受けていると、
「ふ、フーちゃん。えっと、その勝負は受けたんだよね?」
と、歩夢が恐る恐るそう尋ねてきたので、
「ああ、受けたよ」
と、質問を受けた春風はそう答え、更に、
「そ、それで、いつ戦う事になったの? 場所はどこ?」
と、美羽までもがそう質問してきたので、
「あー、そのぉ。明日このフルントラルの外でやるそうです」
と、春風は「はは」と苦笑いを浮かべながら、また更に気まずそうな表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
(……そ)
『……そ』
「ん?」
『それを先に言えええええええっ!』
と、水音をはじめとしたクラスメイト全員が、春風に向かってそうツッコミを入れた。