第144話 「全て」を聞き終えて・2
それから水音達は話し合った末、春風との「勝負」については、
「先生やウィルフレッド陛下、そしてヴィンセント陛下とよく相談してから決めよう」
という事になった。因みに、その決定に春風本人の意志が入ってないが、それについても、
「何も言わずに去ったアイツが悪いから、アイツに拒否権はなしという事で」
と、クラスの中でそう話が決まった。
(春風、本当にご愁傷様)
さて、そんな感じで話がまとまったところで、
「はいはーい! 私からも質問!」
と、礼堂が勢い良く「はい」を手を上げてきたので、
「な、何、礼堂さん?」
と、水音がそう返事すると、
「結局のところ、雪村君って結婚してたの?」
と、礼堂はチラッとアメリア達を見ながらそう尋ねてきた。
その質問に対して、水音が「やっぱりそっちを聞くか」と小さく呟くと、
「大丈夫。『家族』と言っても春風本人は『家族みたいなもの』って言ってるだけだし、今は一緒の家で暮らしてるってだけであって、彼自身はまだ結婚してないから」
と、礼堂に向かってそう説明した。
その答えを聞いて、礼堂が「へぇ、そうなんだ」と呟くと、
『……一緒の家で?』
『暮らしてる?』
と、礼堂をはじめとした純輝らクラスメイト達からそんな声があがったので、
「そうなんだよ! 聞いてくれよみんな!」
と、何故か鉄雄がそう声をあげた。
それを聞いた純輝達が「え?」と反応すると、鉄雄は握り拳を震わせながら、
「アイツは……アイツはぁ……!」
と震えた声でそう言ったので、それに純輝達が「え? え?」と反応すると、
「アイツは、このフロントラルで……もう自分名義のマイホームを手に入れてたんだぁあああああ!」
と、鉄雄は目を閉じた状態でそう叫んだ。
数秒後、
『な、なぁんだぁってぇえええええええ!?』
と、純輝達は一斉に驚きの声をあげた。
更に、
「おっと、それだけじゃないぜ」
と、今度は進がそう口を開くと、スタスタとアメリア達の傍に寄りながら、
「そう、こちらにいるアメリアさん達と春風は、『仲間』であると同時に『家族』でもある。それ故に……」
と、純輝達に向かってそう言い、それに純輝達が、
『そ、それ故に?』
と、皆、ゴクリと唾を飲むと、進はカッと目を見開いて、叫んだ。
「アイツはなぁ! こちらのディック少年からは『アニキ』と呼ばれていてぇ……!」
『あ、アニキ!?』
「こちらのディック少年の弟ピート少年からは『ハル兄』と呼ばれていてぇ……!」
『は、ハル兄!?』
「最後、こちらの少女エステルちゃんからは、『兄さん』って呼ばれてるんだぁあああああ!」
『に、に、兄さんだとぉおおおおおおお!?』
と、純輝達はそう叫んだ後、
『あの顔でですかぁあああああ!』
と、進に向かって尋ねるようにそう叫ぶと、
「ああ、あの顔で、だ」
と、進は真剣な表情でそう答えた。
それに純輝達が「そ、そんな……!」とショックを受けていると、
「あー、みんな。それ、春風君の前で言わない方が良いよ。彼、顔の事言われるとガチでキレるから」
と、耕が「コラコラ……」と言いながら、純輝達に向かってそう注意した。
その後、
「そして最後ぃ……」
と、進が話続けようとしたので、
『ま、ま、まだあるの!?』
と、純輝達がそう反応すると、
「こちらのエステルちゃんのお姉さんであるアメリアさんに至ってはぁ、最早、『お姉さん』と『弟』のような関係を築いてたんだぁああああ!」
と、進がアメリアの隣に立ってそう言ったので、
『ま、マジでかぁあああああああ!?』
と、純輝達は更にショックを受けた。
そして最後に、
「そうさ! アイツは、雪村春風は、このフロントラルでマイホームだけでなく可愛い弟&妹と美人なお姉さんを手に入れてたんだぁあああああああ!」
と、叫びながらそう締め括ると、
『そ、そんなぁあああああああ!』
と、純輝達はそう叫びながら、全員、その場に膝から崩れ落ちた。
そんな純輝達を見て、
「う、うわぁ。みんなのリアクションが凄まじい」
「それだけショックだったんだろうなぁ」
「う、うん。僕達も未だに信じられないって思ってるからね」
と、水音達は小声でヒソヒソと話し合った。
その後すぐに、
「ちょおっとぉ。私がいるのに春風が結婚とかありえない……」
と、凛咲が頬を膨らませながらそう言おうとしたが、
「師匠、ストーップ! それ以上は言ってはいけません!」
と、水音に止まられてしまい、凛咲は「えぇ?」と文句を言いたそうな表情になった。
それからすぐに、純輝達がスッと立ち上がると、
「みんな……」
と、純輝がそう口を開いたので、それに水音達が「ん?」と反応すると、
「先生達の話し合いが終わったら……当初の予定通り、雪村君を被告に『学級裁判』を行おうと思います!」
と、純輝はクラスメイト達に向かってそう提案した。
それを聞いたクラスメイト達は、
『さんせーい!』
と、皆、純輝の提案に賛成した。
それを見て、水音は両手を合わせると、
(ごめん、春風。そして、ほんっとうに、ご愁傷様です!)
と、この場にいない春風に向かって、心の中で謝罪した。




