第143話 「全て」を聞き終えて
今回は、いつもより長めの話になります。
水音達から「全ての真実」を聞かされて、純輝ら残りのクラスメイト達が「そんな……」と顔を真っ青にしている中、
「そ、それが、雪村君が僕達の元から去った理由なのか?」
と、純輝が恐る恐るそう尋ねると、
「ああ。アイツは最初から、地球を守る為にこの世界に来たんだ」
と、進がコクリと頷きながらそう答え、それに続くように、
「もっと正確に言えば、地球消滅の危機を知った地球の神々によってこの世界に送り込まれたんだよ」
と、耕も純輝達に向かってそう説明した。
その説明を聞いて、
「それじゃあ、僕達がこの世界に召喚されたのは、言ってみれば侵略戦争の延長みたいなものだというのか?」
と、純輝は震えた声で再びそう尋ねてきたので、
「そう……だね。特にこの世界の本当の神々や、今もこの世界に生き残ってるかもしれない獣人や妖精の皆さんにとっては、まさにそうなんじゃないかって思うよ」
と、水音は暗い表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
「そ、そんなの……冗談じゃないよ!」
と、純輝は怒りのままそう叫び、残りのクラスメイト達も、
「そ、そんな……」
「嘘でしょ?」
「い、嫌だよそんなの!」
と、皆、更に顔を真っ青にさせながら、震えた声でそう呟きだした。よく見ると、一部涙流している人もいたので、そんな彼らを見て、
(うん、そりゃ信じたくないよね)
と、水音は心苦しくなった。
するとその時、
「……皮肉な話だな」
と、それまで黙って話を聞いていた力石がそう口を開いたので、それを聞いた水音が、
「力石君?」
と、反応すると、
「自分達を守ってもらう為にやらせた『勇者召喚』が、自分達を滅ぼす『悪魔』をこの世界に招くキッカケになったんだ。これほど皮肉な事はないだろ」
と、力石は冷めた口調でそう言ったので、
(……ああ、確かに)
と、水音は心の中でそう呟きながら、納得の表情を浮かべた。
言われてみれば、「神」を名乗ってる連中が、ルーセンティア王国の王族達に「勇者召喚」をやらせた為に、アマテラスら「地球の神々」に気付かれて、春風がこの世界に送り込まれる事になったのだ。そう考えれば、この状況はまさに「自業自得」とも言えるのではないかと、水音はそう考えた。
ただ、それからすぐに、
(まぁ、グラシアさんの『予言』があったんだから、仕方ない事でもあるけどね)
と、水音はそう考えて、心の中で「はは」と笑った。
するとその時、
「ああ、そうだ桜庭」
と、力石にいきなり声をかけられてので、
「な、何!?」
と、水音は思わずビクッとなると、
「俺達の元を去ってから、雪村は強くなってたか?」
と、力石は鋭い視線を向けながらそう尋ねてきたので、それに水音は「え?」とポカンとなったが、
「……ああ、強くなってたよ。何せ『最強の大隊長』に勝ったんだからね」
と、ニヤリと笑いながらドヤ顔でそう答えた。勿論、
「いや、何でお前がドヤ顔になってんだよ?」
「セリフも一部強調されてるんだけど?」
と、進と耕にツッコミを入れられた。
しかし、そんな2人のツッコミを、
「ふふ、そうか……」
と、力石はスルーすると、
「よし、すぐに雪村に勝負を申し込む!」
と、不敵な笑みを浮かべながらそう言ったので、
「……え、ちょっと待って! 何言っちゃってんの!?」
と、ハッとなった水音がそう尋ねた。
その質問に力石が「む?」と反応すると、
「聞こえなかったのか? 雪村に勝負を申し込むと言ったんだ。『神』と契約して『悪魔』の力に目覚めた男なんだぞ? ならば、その力がどれ程のものか試してみたいとは思わないのか?」
と、逆に尋ね返されてしまい、それを聞いて水音は一瞬「うえ!?」と怯んだが、すぐに首をブンブン横に振るって、
「いやいやいや! 『試したい』って、今そんな事言ってる場合じゃ……!」
と、力石に抗議しようとした。
ところが、力石はズイッと水音のすぐ傍まで近づくと、
「オイオイ桜庭、何を誤魔化してるんだ?」
と、尋ねてきたので、
「な、何を……?」
と、水音は「何を言ってるんだ?」と言おうとすると、
「お前だって、元々雪村に挑むつもりで俺達の元から去った癖に」
と、力石にそう言われてしまったので、
「グッハァ! そ、それは……!」
と、水音は精神的なダメージを受けたかのようにその場に膝から崩れ落ちた。
そんな水音を見て、
「お、オイ力石! お前、こんな時に何言ってんだよ!?」
と、鉄雄が力石に向かって責めるようにそう尋ねたが、
「事実を言ったまでだが、何か?」
と、逆に尋ね返されてしまい、鉄雄は「ぐ……」と何も言えなくなった。
するとそこへ、
「待て、|煌良《あきら》」
と、クラスメイトの1人であるクールそうな印象をしたショートヘアの少女が、力石を下の名前で呼びながらポンとその肩に手を置いた。
それに力石が、
「む? 何だ|華恋《かれん》」
と、少女を下の名前(?)で呼び、
「あ、氷上さん」
と、祈がその少女を苗字でそう呼ぶと、
「雪村に挑むなら、私も一緒に行こう」
と、その少女、氷上華恋ーー以下、華恋は親指をグッと立てながらそう言ったので、少年・力石、フルネーム、力石煌良ーー以下、煌良も、親指をグッと立てて、
『ちょおっと待ってぇい!』
と、水音達がそうツッコミを入れると、
「そうだよ2人共」
と、今度は小太りの少年が、煌良と華恋に「待った」をかけてきたので、
「む、何だ大地?」
と、煌良が少年の名前を呼び、
「お、おお渡世! ソイツらを止めてくれるのか!?」
と、鉄雄が期待に満ちた眼差しを向けながら、少年を苗字(?)でそう呼ぶと、
「2人だけで狡いよ。僕も一緒に行くからね」
と、その少年・渡世大地ーー以下、大地も親指を立てながらそう言ったので、
「渡世ぇえええええ! お前もかよぉおおおおお!?」
と、鉄雄は絶望に満ちた表情でそう叫び、
「あああもう! お前ら相変わらずだな、この『戦鬪狂3人衆』が!」
と、進が怒り顔で煌良達をそう罵った。
それに対して、
「「「む!? 失敬な! 『戦闘狂』じゃない! 『武闘派』だ!」」」
と、煌良、華恋、大地の3人が、自分達の事をそう呼んだので、
「やかましい! 自分で言うな自分でぇ!」
と、進は更に怒り顔でそう怒鳴った。
その後、
「ちょ、ちょっとみんな落ち着いて……!」
と、止めに入った純輝を交えて、激しい口論を繰り広げる「勇者」ことクラスメイト達。そんな彼らを他所に、
「……」
と、水音は未だダメージから回復してなかった。
そんな彼らの姿を見て、
「「「「何、この状況?」」」」
と、アメリア、エステル、ディック、ピートの4人はタラリと汗を流して呆然とし、
「アッハッハ! ハニーのクラスメイトって、面白い子が多いわねぇ!」
と、凛咲は腹を抱えて大笑いした。