第133話 ちょっとした「報告」・4
春風と凛咲の絶叫の後、水音達はどうにか2人を落ち着かせると、また話の続きを始めた。
「……で、その時ヴィンセント皇帝陛下って人にも俺の事話したの?」
「うん。で、その結果、ヴィンセント陛下も目をキラキラさせて、春風を帝国に迎え入れたいって言い出して……」
と、春風の質問に対してそう答えた水音。その答えを聞いて、
「オイオイ、冗談だろ?」
と、春風はガクリと肩を落とした。
そんな春風を見て、
「あらあら、そう落ち込まないで春風ちゃん。断罪官の事であなたを帝国で保護したいって話も嘘じゃないんだから」
と、キャロラインが声をかけてきたので、それに春風は「はぁ、左様ですか」と返事した。
その後、
「それで、春風の事をヴィンセント陛下に話した後、エレクトラ様の件もあって、僕は帝国に招かれる事になったんだ」
と、水音は春風にそう説明し、それに続くように、
「そんで、水音だけじゃ心配だから、俺らも一緒に帝国に行ったって訳よ」
と、進がニヤリと笑いながらそう言い、その後ろで耕、祭、絆、祈も「うんうん」と頷いた。
そんな進達を見て、
「そうだったんだ。よくウィルフレッド陛下が許してくれたね?」
と、春風がそう尋ねると、
「まぁ、桜庭君達を餌に春風君を帝国に招き入れてそのままゲットしてしまおうって企みもあったんだけどね」
と、美羽が遠い目で「はは……」と笑いながらそう言ったので、
「え、マジで?」
と、春風がドン引きしていると、
「うん。ヴィンセント皇帝陛下、フーちゃんを帝国のものにしたらきっと凄い事が起きるんじゃないかって考えててね、それを聞いてウィルフレッド陛下もスッゴイ乗り気になって、『うちにもその恩恵を受けさせろ』って言ってたよ」
と、歩夢もそう付け加えてきたので、
「え、えぇ!? じょ、冗談だろ!? 俺にそんな凄い事なんて起こせる訳ないだろ!?」
と、春風はそう抗議するが、
「オリジナル魔術作って……!」
「最強の大隊長倒した君が言っても……!」
「全然説得力ないと思う」
と、鉄雄、恵樹、詩織にそうツッコミを入れられてしまい、
「グハァ! せ、正論すぎて何も言い返せない!」
と、春風は精神にダメージを受けてしまった。
その間、
「ありがとうみんな。話を合わせてくれて」
「良いって事よ」
「うんうん。本当の理由が、『雪村君を超える為』だなんて、恥ずかしくて言えないもんね」
「「「うんうん」」」
「あはは。本当に、ありがとう」
といったやり取りが周囲に聞こえないように小声で交わされていたのだが、
「あはは、バッチリ聞こえてるんだけどなぁ」
「そうですね」
アマテラスとヘリアテスにはしっかり聞こえていた。
そんな2柱の神々を前に、
「それで、僕達6人は帝国に着いた翌日、つまり君がハンターになったその日に……」
「一緒にハンターになったんだね?」
「おうよ! そんで、エレクトラ様をリーダーに、一緒にハンターとしての仕事をしてきた最中に……」
「雪村君の話を聞いてね、帝国を出発してこのフロントラルに来たんだ」
と、水音達が春風に向かってそう言うと、
「これで、僕達の話は終わりだよ」
と、水音は最後にそう締め括った。
水音達の全ての話を聞いて、
「お、おぉ、そういう事だったんだ」
と、春風はそう呟くと、「うーん」と考え込んで、
「色々とツッコミたいんだけど……みんな、改めて、ごめんなさい」
と、春風は深々と頭を下げて謝罪した。
その謝罪を聞いて、
「ま、まぁ結構怒ってはいるけどよぉ……」
と、鉄雄は少し気まずそうな表情でそう言い、それに続くように、
「う、うん。事情が事情なだけに、僕達これ以上怒れないっていうか……いや、それでも十分怒ってるけどね」
「そうだね。ルーセンティア王国に残ってる先生や他のクラスメイト達が知ったらショック受けるかも」
と、耕や恵樹までもが困った表情でそう言った。それは、祭達も同様だった。
そんな状況の中、
「ていうか水音! 君、皇女様相手に何やってんの!?」
と、怒鳴るようにそう尋ねてきた春風に対して、
「しょ、しょうがないだろ! あの時は先生やみんなが傷付けられて、頭に来てたんだから!」
と、水音も怒鳴るようにそう答えた。
するとそこへ、
「ねぇ、水音君……」
と、アマテラスが声をかけてきた。
予告)
次かその次ぐらいで、今章は終了です。