第129話 春風の「今後」
春風からの「お願い」によって、食堂内が和やかな空気に包まれていると、
「ふふ。春風ちゃんの気持ちはよぉくわかったわ。それで、春風ちゃんは今後どうするつもりなの?」
と、それまで黙って春風の話を聞いていたキャロラインがそう尋ねてきたので、
「え? どうする……って?」
と、その質問を聞いた春風が首を傾げていると、
「決まってるでしょ? 帝国に来るのかって事よ!」
と、キャロラインはプンスカ怒りながらそう答えた。
その答えを聞いて、
(あ! そうだよすっかり忘れてた!)
と、水音が今思い出したかのような表情になってタラリと汗を流す中、
「あ、あの、キャロライン皇妃様……」
と、アメリアが「それはどういう意味ですか?」と言わんばかりに「はい」と手を上げてきたので、
「実を言うとね……」
と、キャロラインは自分達がこのフロントラルに来た最大の目的を語った。
そう、ギデオンら断罪官との戦いの後、大怪我から回復したギデオンが春風の「討伐」を諦めていなかったので、そのギデオンから守る為に春風をストロザイア帝国で保護するという目的を、だ。
目的を聞き終えて、春風と仲間達はそれぞれ異なる反応をした。
春風は「なんてこった!」と言わんばかりに手で自身の顔を覆い、レナは怒りをあらわにして飛び出そうとしたところをヘリアテス宥められ、最後にアメリアは、自分達が春風を巻き込んだ所為でとショックで膝から崩れ落ちそうになったところをエステルに支えられていた。
そんな春風達を、水音が心配そうに見つめていると、
「という訳で、出来れば春風ちゃんにはすぐに帝国に来てもらいたいんだけどぉ」
と、キャロラインが目をウルウルとさせながらそう言ってきたので、
(春風、どうする気なんだろう?)
と、水音は春風に視線を向けると、春風は申し訳なさそうな表情で、
「お気持ちは大変嬉しいのですが、市役所でもお話ししましたように、今の俺は『紅蓮の猛牛』と『黄金の両手』、2つのレギオンに所属している身です。ですので、そのリーダーであるヴァレリーさんとタイラーさんの許可なしでは、俺にもどうする事も出来ませんし、それに……」
「それに?」
「俺自身も、ここから離れる訳にはいかない理由がありますから」
と、チラリとアメリア達を見ながら言った。
その言葉を聞いて、
(ああ、春風。君はもう既に『大切なもの』を見つけたんだね)
と、水音は一瞬泣きそうになった。
そんな水音を他所に、
「それに、明日は朝早くから『紅蓮の猛牛』の仕事もありますから……」
と、春風が申し訳なさそうな表情のままそう言うと、
「あら、そうなの? じゃあ、私も一緒に行って良いかしら!?」
と、キャロラインが笑顔でそう尋ねてきたので、それから数秒程誰もが沈黙していると、
「あのぉ、仰ってる意味がわかりませんが?」
と、春風が恐る恐るそう尋ねてきたので、
「だ、か、らぁ、私もその仕事に一緒に行くって言ったの!」
と、キャロラインは頬を膨らませながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「いや、本当に何を言ってるんですか!?」
と、春風が「ちょっと待てい!」と言わんばかりに慌てて尋ねると、キャロラインは「大丈夫よぉ」と言って露出している自身の胸の谷間に手を突っ込み、
「じゃーん! ギルドカードォ!」
と、そこから「ハンター」の証である「ギルドカード」を取り出した。
因みに、階級は最大ランクの「白金級」である。
それを見て、春風が「はぁ!?」と驚いていると、
「母上だけではないぞ」
「私達も、『ハンター』やってるの」
と、レオナルドとアデレードも、懐から自分達のギルドカードを取り出し、それを春風に見せた。
それを見て、春風は「は、はぁ!?」と更に困惑すると、
「私達だけじゃないわよぉ。ね? 水音ちゃん、進ちゃん、耕ちゃん、祭ちゃん、絆ちゃん、祈ちゃん」
と、キャロラインはチラリと水音、進、耕、祭、絆、祈の6人を見た。
その視線を受けて、
(ふふふ。ついにこの時が来たか!)
と、水音は心の中でそう呟きながらニヤリと笑うと、進達と一緒になって、
「「「「「「じゃーん! ギルドカードォ!」」」」」」
と、自分達もギルドカードを見せた。
それを見て、
「え、えぇ待って……」
「な、何ぃ!? 桜庭に近道、遠畑……!」
「出雲さん、晴山さん、時雨さん、ハンターになったのぉ!?」
と、春風だけでなく鉄雄と恵樹までもが驚きのあまり水音達に向かってそう尋ねると、
「うんうん! しかも聞いて驚いてね……」
「なんと、雪村がハンターになったその日に……」
「私達も、なりました」
と、祭、絆、祈の3人がそう答えたので、
「は、はぁ!? 何それ!? 何でそんな事になってんの!?」
と、春風は驚きに満ちた表情でそう尋ねた。
その質問に対して、
「知りたい? 僕達の事」
と、水音がニヤリとしながらそう尋ね返してきたので、
「知りたい! すっごく知りたい! ていうか、俺ばっかり話してなんかすっごく不公平なんだけど! みんなの事も聞かせてよ!」
と、春風は頬を膨らませながらそう怒鳴った。
そんな表情の春風を見て、
(あはは。春風、目をキラキラさせながら怒ってる)
と、水音は心の中でクスッと笑った。




