第122話 「戦い」の映像
そして、春風(過去)達とギデオン(過去)率いる断罪官の戦いが始まった。
開始早々、ギデオン(過去)の先制攻撃(?)によってアメリアと分断されてしまい、ギデオン(過去)はその勢いでただ1人、アメリア(過去)との戦いを始めた。そして、残された春風(過去)とエステル(過去)、ディック(過去)、ピート(過去)の4人はというと、ギデオン(過去)を除いた断罪官の隊員達(過去)と戦う事になった。
(うわ! いきなりピンチじゃないか!?)
と、最初はそう感じた水音。
しかし……。
ーー邪魔すんなぁっ!
と、そう叫んだ目の前の春風(過去)は、なんと大きな竜巻きを起こして隊員達をまとめて吹き飛ばしたのだ。
「え、何あれ!? 魔術!?」
と、それを見た祭が驚きの声をあげると、
「ああ、あれはですね、風属性の魔力を杖に集めて、それを竜巻きにしたものなんだって、ハル兄ちゃんが言ってました」
と、傍で聞いていたピートがそう説明した。
その説明を聞いて、
『そ、そうだったんだ!』
と、水音達が大きく目を見開くと……。
ーーディック君、今だ! その矢でアイツらの足元近くの地面を射抜くんだ!
と、そう叫んだ春風(過去)に……。
ーーええーい、わかったよ!
と、ディック(過去)はそう返事して、隊員達(過去)の足元の地面に矢を放った。
すると、「ドォン」という音と共に大爆発が起き、襲ってきた隊員達(過去)を吹っ飛ばした。
それを見て、
「うおーい! 今度は何だよ!?」
と、今度は鉄雄が驚きの声をあげると、
「アレは……アニキが作った特別製の矢なんです。弓もアニキが作ったやつです」
と、今度はディックが恥ずかしそうに説明したので、
『ま、マジかよ!?』
と、水音達は再び大きく目を見開いた。
その後も繰り出される竜巻きと爆発する矢で、次々と隊員達を吹っ飛ばした春風(過去)とディック(過去)だったが、相手は中々諦める様子がなかったので、2人は疲労の所為か徐々に顔色を悪くしていったので、
「な、なんか、今度こそヤバそうなんだけど!?」
と、その様子を見た耕がオロオロしながらそう言うと……。
ーーわ、私も、一緒に戦います!
ーーぼ、僕にも、何か手伝わせてください!
と、それまで2人に守られていたエステル(過去)とピート(過去)も参戦しだした。エステルは自身の固有職能が生んだスキルを駆使して2人の体力の回復と強化し、ピートは春風が用意した回復薬を用いた回復役を務めた。
そうして力を合わせて抵抗した春風(過去)達4人に対して、今度は隊員達(過去)が疲労を募らせていたので……。
ーー私が時間を稼ぐ。
と、1人の隊員が春風達のもとへと駆け出した。
ーー異端者共! 貴様らはこの断罪官副隊長、ルーク・シンクレアが成敗してやる!
と、春風(過去)達に向かってそう叫んだ隊員ーールーク(過去)は、素早くディック(過去)のもとへと近づくと、彼に向かって剣を振り下ろした。
それを見て、
「あ、あぶなーい!」
と、恵樹がそう叫ぶと……。
ーーさせるかぁ!
そこへ春風(過去)が現れて、ルーク(過去)の剣を力いっぱい弾いた。
その衝撃が強かったのか、ルーク(過去)は後ろへと吹っ飛ばされるも、どうにか地面に着地した。
そんなルーク(過去)に向かって……。
ーーこの子達に手出しはさせないぞ断罪官! それ以上近づくんじゃない!
と、そう言い放った春風(過去)。
そんな春風を見て、
「おお! 雪村の奴……!」
「かっこいいヒーローみたいなセリフを!」
「へへ。アイツ、結構熱い奴じゃねぇか!」
「うんうん! そうだねぇ!」
と、進、耕、鉄雄、恵樹がそう感動し、
「キャアアアアア! 春風ちゃん、かっこいい!」
と、キャロラインは顔を赤くしながら興奮していた。
勿論、水音達も春風の行動を感心していた。
ところが……。
ーーならば、まずは貴様からだ女顔!
と、ルーク(過去)が春風に向かってそう言い放ったので、
『……あ』
と、それを聞いた水音達は口をあんぐりとさせ……。
ーーあ? 今、なんて言った?
と、静かに言った春風を見て、
『あああああああっ!』
と、水音達は再び絶叫した。
その後……。
ーーもう勘弁ならねぇぞコラァ! あのギデオンのおっさんの前に、まずはテメェからボコボコにしてくれるわぁ!
(わぁあああああ! 春風、完全にブチ切れてるぅううううう!)
明らかにブチ切れた様子の春風(過去)を見て、水音は心の中でそう悲鳴をあげた。そんな水音を他所に……。
ーーアースハンマー! アースハンマー! アースハンマー……!
と、春風(過去)はルーク(過去)に向かって何度も土属性の攻撃魔術を放った後……。
ーーぶっ飛べぇ!
風の魔力を纏わせた杖によるフルスイングをかましてルーク(過去)をぶっ飛ばし、最後にトドメとして……。
ーーぜ〜ろ〜きょ〜り〜……ファイアボール! ファイアボール! ファイアボール……!
と、本当にゼロ距離からの炎属性の攻撃魔術を何度も放った。
あまりにも激しい攻撃を受けて……。
ーーぐあああああああっ!
と、ルーク(過去)はそう絶叫し……。
ーーふ、副隊長ぉおおおおおっ!
ーーや、やめろぉおおおおおっ!
と、隊員達(過去)も、皆一斉に悲鳴をあげた。
その光景を見て、
『う、うわぁあああ。なんて酷い事を』
と、進らクラスメイト達はそう言ってタラリと汗を流した。
そんな進達に向かって、水音は口を開く。
「……みんな」
その言葉を聞いて、進達が「ん?」と反応すると、
「春風に『女顔』は禁句ってわかった?」
と、水音がそう尋ねてきたので、クラスメイト達はお互い顔を見合わせた後、
『わかりました』
と、皆、水音に向かってそう返事した。