第119話 「始まり」の映像
遅くなりました。
「それじゃあ、いっくよー!」
と、アマテラスがそう言った次の瞬間、食堂内が真っ暗になった。
ただ暗くなったのではない。冗談抜きで「真っ暗な闇」になったのだ。
(うわ! な、何だよいきなり!?)
突然の事に水音は心の中で驚きの声をあげたが、次の瞬間、目の前はパァッと明るくなったので、
「ま、眩しい!」
と、水音は思わずそう言って両腕で顔を覆った。
その後、水音はゆっくりと両腕をどかすと、
「え? 何ここ!?」
目の前に大きな川があったので、水音は驚きのあまり周囲をキョロキョロと見回した。
よく見ると、そこは先程までいた食堂の中ではなく外のようで、目の前にある大きな川以外は、背後に森があるだけだった。勿論、水音の周りにはちゃんとレナをはじめとした春風の仲間達、歩夢や美羽をはじめとしたクラスメイト達やイヴリーヌや3人のルーセンティア王国の騎士達に、キャロラインら皇族達やレクシーの姿もあった。
そして、水音がふと上を見上げると、そこにあるのは真昼の明るい青空だったので、
「ここは……外?」
と、水音はポカンとした表情で首を傾げた。
すると、
「あ、あそこ!」
と、耕がとある方向を指差したので、水音達が「ん?」と一斉にその方向を見ると……。
ーーフンフフーン。
「あ、春風」
そこには、楽しそうに何かをしている様子の青いローブ姿の少年ーー春風の姿があった。
川の傍で楽しそうに鼻歌を歌いながら何かを作っている様子の春風。
ただ、よく見ると目の前の春風は水音達に気付いてない様子だったので、
「あの、アマテラス様、これは一体……?」
と、歩夢が恐る恐るアマテラスに尋ねると、
「これは『過去』の映像よ。勿論、目の前の春風君も過去の春風君だから、話しかけても彼にはみんなの声は聞こえてないからね」
と、アマテラスはそう説明した。
その説明を聞いて、水音が「なるほど……」と納得の表情を浮かべていると、
「……よし、出来た!」
という春風の声が聞こえたので、それに合わせて水音達が春風に視線を向けると、その春風の目の前には、
「……は」
『ハンバーガーだ!』
と、水音をはじめとしたクラスメイト達がそう言ったように、春風の目の前には出来立てと思われるハンバーガーがあった。
そして、ふとそんな春風の横を見ると、
「は、ハンバーガーが……!」
『山のように出来てる!』
と、水音をはじめとしたクラスメイト達が再びそう言ったように、春風の横には山のように積み重なったハンバーガーがあった。それを見た瞬間、
(そうか。楽しそうに何をしてるのかと思ったらハンバーガーを作ってたのか)
と、水音は納得の表情を浮かべた。
そして、
ーーじゃ、いっただっきまーす!
(……て、ああ!)
『……て、ああ!』
と、水音らクラスメイト達が涎を垂らしながら羨ましそうな表情で見つめる中、春風が出来上がったハンバーガーを食べようとしたまさにその時、背後でパキッと誰かが木の枝を踏んだかのような音がしたので、
ーーん!? 誰だ!
と、それに気付いた春風と水音達が後ろを振り向くと……。
ーーヒィッ! ご、ごめんなさい!
背後にあった大きな木の後ろから、ボロボロの服を着た酷く痩せ細った少年、
「あ、僕です」
(え、ピート君?)
そう、ピートが現れた。
それを見た瞬間、
「……あ、そうか! コレってもしかして……!?」
と、水音がハッと気付いたかのようにアマテラスを見ると、アマテラスはコクリと頷きながら、
「そうよ。さっきも言ったけど、これは『過去』の映像。そして、今みんなが見てるのは、春風君が断罪官と戦う事になったキッカケよ」
と、真面目な表情で水音達に向かってそう答えた。
その答えを聞いて、
「そ、そうだったのですね」
と、今度はイヴリーヌが納得の表情を浮かべていると、
「ね、ねぇ……」
と、祭が恐る恐る口を開いたので、
「ん? どうした、祭?」
と、それに気付いた絆が返事すると、
「な、なんか、このピート君、凄くボロボロじゃない? おまけに凄く痩せ細ってるし」
と、祭は尋ねるようにそう言ってきたので、
「そ、それは……」
と、ピートが答えようとすると、
「この時の私達は、断罪官から逃げる旅の途中だったんだ。『異端者』として認定されてから、どの町や村にも簡単に入る事が出来ず、ロクな食事も出来なかったから……」
と、それを遮るかのようにアメリアがそう説明したので、
『そ、そうだったんだ』
と、水音だけでなくクラスメイト達や王族、皇族達までもが可哀想なものを見るかのような視線をアメリア達に向けた。
そんな状況の中、
ーーお腹空いてるの? それじゃあ、一緒に食べようよ」
と、春風がハンバーガーを手にピートを食事に誘おうとしたので、
ーーあ、あの、実は僕、仲間がいまして……!
と、ピートが「仲間がいる」と言って、
ーーえ、そうなの?
と、春風が行動に移そうとした次の瞬間……。
ーーヒュッ! ドシュ!
2人の間の地面に、1本の矢が突き刺さった。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。
この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ませんでした。
本当にすみません。